27.デート(中編)。ゲーセンで勝負③
「最後はこれよ!」
「えーと、クイズゲームか」
三つめ、つまり最後のゲーム対決に選ばれたのはクイズゲーム。早押しではなく、制限時間内に答える形式だ。クイズゲームだが、シングルプレイだけでなくマルチプレイも可能。難易度も簡単なものから難しいものまであり、個人にあった設定ができる。さらにジャンルの種類も豊富なため、とても人気のゲームだ。
「って、お前これは卑怯じゃないか!?」
慌てて抗議する。なぜなら葵と俺とでは成績に差があるからだ。もちろん葵の方がダントツ良い。つまり、単純な頭の良さはあっち側の方が上というわけだった。
「ん~、なんのことかしら~?」
知らん顔をする葵。
「とぼけるな、明らかにお前に有利すぎるだろうが!」
「あら、それはあんたが私より馬鹿なのを認めるってことかしらー?(ニヤニヤ)」
「くっ……!」
葵の言葉にたじろいてしまう。煽ってきていることは明白だが、馬鹿と言われてただ黙っているのも、プライドが簡単に許してくれないのだ。
「まぁそれなら仕方ないわねー。頭を使わない別のゲームにするとしましょうか~」
つかつかと場を離れようと歩く葵。
「……待てよ」
「ん?」
葵を引き留める。のせられているようだが仕方がない。ここまで馬鹿にされたんだ、このゲームで勝って見せようじゃないか!
「勝負だ! このクイズゲームでな!」
「へぇ~。あんた、意外と度胸あるじゃない」
背を向けていた葵が、くるりとこっちをむく。
「当然だ。どんな勝負でも勝ってやる」
「いいのよ、無理しなくても。そこまで負けたいのならやってあげるけど、結果は見えているわ。止めておきなさい?」
「へっ、そんな言われて逃げれるかよ! それともなんだ、葵がやりたくないとか? 馬鹿に負けるのが怖いのか~」
逆に煽り返してみる。
「……言うじゃない。いいわ、このゲームで圧倒的な差をつけてやるわ!」
こうして、結局クイズゲームで勝負することになった。案外葵もチョロいのかもしれない。人のことは言えないが。
―――――――――――
マルチプレイ、難易度を高校生レベル、ジャンルをランダムに設定してゲームを始める。すると、ゲーム画面が動き出した。
『ゲーム説明! このモードでは、クイズの正解数を競い、その正解数が多い方が勝ちとなります! 正解数が両方とも同数の場合は、引き分けとなります!』
ゲーム個体から、ボイス付きの説明が流れる。なるほど、延長戦などはないってことか。
『クイズは全部で5問あります! それではさっそく第1問、ジャンルは現代文です!』
「よーし、なんでもきなさい!」
さっそく1問目が始まる。葵も気合い十分のようだ。
『「山月記」「光と風と夢」などの作者として知られる、昭和時代前期の文豪の名前を、フルネームで答えなさい』
画面に問題文と五十音表が表れる。漢字ではなくひらがなで答えるようだ。
さて、問題の方だが、まったく分からないぞ……?
「これは楽勝ね!」
隣では余裕を見せている葵。もう既に解答し終わっているようだ。そんなに簡単な問題なのか……? まだ制限時間が残っているので、真剣に考えてみることにする。
「うーん……」
「あら、こんな簡単な問題も分からないのかしら~?」
「そ、そんなわけないだろ? こんなの簡単さ」
「まぁ、そうよね~」
葵はこちらが悩んでいるのに気づくと、すぐに煽ってくる。くそ、なめやがって……。
簡単ってことは習ったことがあるのか? 確かに『山月記』の方は見覚えがあるが……。思い出せ、その作者を!!
『制限時間あと5秒です!』
「な、やばい!」
頭を悩ませている内に、制限時間がせまってきてしまったようだ。結局思い出せなかったので、適当にタッチパネルを連打した。
『終了です! では、二人の解答を表示します!』
画面に、お互いの解答が表示される。
葵「なかじまあつし」 俺「へねたこせりはぬ」
『正解は「なかじまあつし」です!』
葵の解答の方にはマル、俺の解答の方には当然バツのマークがついた。
「あんた絶対ふざけてるわよねえ!?」
「ちがう、分かんないから適当にやっただけだって!」
ふざけたと疑われ、葵に怒られてしまった。次はちゃんと正解してやる!
『では、次の問題! 第2問、ジャンルは日本史です!』
「よしっ!」
「うわ、最悪ね……!」
得意な日本史がきたので、思わずガッツポーズをする。しかも葵は学校の授業で日本史をとっていない。これはチャンスだ!
『9世紀頃に活躍した三筆は、空海、嵯峨天皇とあともう一人います。その人物の名前をフルネームで答えなさい』
なるほど、だいぶ前に習った範囲だな。だが、俺はこれを覚えている!
余裕なので隣を見ると、葵が全く分からないといった苦しい表情をしていた。そりゃあ、習っていないからな。いくら頭が良くても、やってもいないことを最初から知っているわけではないのだ。
『終了です! では、二人の解答を表示します!』
1問目同様、両方の答えが表示される。
葵「はげ」 俺「たちばなのはやなり」
『正解は「たちばなのはやなり」です!』
今度は葵の解答にバツが付き、俺の解答にマルがついた。ってそれよりも!!
「お前の方がふざけてんだろ!?」
「いやー、私もわかんなすぎて適当に書いちゃって……!」
「はげ」がフルネームなんて、人生の罰ゲームだ。それが後世に伝わった日には、あまりの恥ずかしさに成仏なんてできないだろう。
まぁとにかく、これで1対1だ。この調子でなんとか食らいついていくぞ!
―――――――――――
その後もゲームは続き、4問目まで終わった。今のところの成績は、どちらも3対3。
3、4問目は俺でもギリギリ分かるような問題がでてきたので、なんとか両者正解に持ち越している。
「やるわね。でもここまでよ! 次の問題で決着つけるわ!」
「そうだな、絶対解いてやるぜ!」
お互い最後の問題ということで、今まで以上に気合いが入っていた。
『それでは最終問題! 第5問、ジャンルは数学です!』
数学か。どんな問題が来るのか予想できないな。
『公式「nCr」において、「C」はある英単語を意味しています。その英単語のスペルを答えなさい』
画面にアルファベットの表が表示される。英単語か、スペルミスは許されないな。
さて、肝心の問題の答えが分からないぞ……。しかしここで諦めては負けてしまう。何か考えるんだ!
まず問題についてだが、確かこれは確率の公式だったはず。そういえば『選ぶ』が問題文にあったらこの公式を使うという記憶はあるぞ……。
だとしたら、『選ぶ』の意味をもつ英単語……『Choose』が正解か!
「ふっふっふ……!」
我ながら素晴らしい推理だ。思わず笑みがこぼれる。
「何よ、いきなり笑って気味悪いわね。言っておくけど私この問題ならもう分かったわよ」
「そうか、なら引き分けだな」
「お、あんたも自信ありそうね。勝負は次に持ち越しかしら」
「まぁね。今日ほど自分が天才だと思った日はないよ……」
葵も分かったなら引き分けか。まぁ負けるよりはましだろう。次の勝負で決着つけてやるとするか。
『終了です! では、二人の解答を表示します!』
今までと同様、俺たちの解答が表示される。
葵「Combination」 俺「Choose」
『正解は「Combination」です!』
…………は?
葵の解答の方にはマルがつき、俺の解答には当然バツがつく。
「あんた、あんだけイキって自分のこと『天才』とか言っといて外すとか、ダサすぎでしょ……」
「うるさいわ!! 俺の推理は完璧なはずだったのに……」
「推理で解いといてよくあんなに自信満々でいられたわね……。やっぱあんた馬鹿だわ」
「くそ、何も言えねぇぇぇぇ!!」
こうして、クイズゲームは葵の勝ちとなった。つまり3本勝負の方も、葵に軍配があがったのだった。
閲覧ありがとうございます。試験勉強しながらですが、できるだけ投稿したいと思っています。
それと、明日から19時投稿になります。(※次回の投稿は今日の19時でした。夜中に投稿したので曖昧ですみません)
よかったら、感想の方を書いていただければ嬉しいです。




