26.デート(中編)。ゲーセンで勝負②
「次はこのエアホッケーのゲームよ!」
二番目の勝負の場として連れてこられたのは、エアホッケーのゲーム個体だった。
一応エアホッケーのルールを簡単には説明しておくと、円盤を打ち合い、弾きあったりして相手のゴールに入れるとポイントになるというものだ。
「エアホッケーか。得意な方だし、また勝ちたいところだな」
「ふん、調子に乗ってられるのも今のうちよ!」
さっきの勝負のときより、葵の闘志を強く感じる。これは得意だからといって、油断している場合ではなさそうだ。
「マレットは一つだけね」
「おーけー!」
マレットとは、パックを打つためのもの。他のスポーツでいうラケットのようなものだ。一つってことは、片手だけでやるみたいだな。
「それじゃあ、始めるわよ!」
「おう、かかってこい!」
お金をいれて、ゲームが始まる。まずは葵サイドにパックが配られたようだ。
「全力でいくわ……せいっ!!」
ダンッガゴン!!!
「…………………は?」
……葵の打ったパックは、一瞬で俺のゴールへと入っていった。
「はあああああ!?」
なんだよ今の! 速すぎて最早一瞬しか見えなかったぞ!
「あははー! やったやったー!」
「ありえねぇ……」
反応すらできないってなんだよ……。毎回思うが、葵の身体能力は女性のもつものではない。本当に人間なのだろうか。実はゴリ……
「殺すわよ?」
「何も言ってないでしょ!?」
マレットを投げようと構える葵。どうして俺の心の声はこうも簡単に読まれてしまうのか。
「とにかく、再開するぞ」
「いいわ、さっさときなさい!」
さて、俺も取り返さなきゃな。
「上手く壁を使って……ここだ!!!」
ダンダンッ!!!
俺の打ったパックは、壁にぶつかり、バウンドして葵のゴールに向かう。
「甘いわ!」
カンッ!
「何だと!?」
しかしそれを、葵に防がれてしまう。
「くそっ!!」
俺の攻めは失敗し、しばらくラリーが続く。そして……。
「はぁっ!!」
ガゴン!!!
「あ、しまったぁ!!」
「やったー! また入ったー!」
ついに、葵に追加点を許してしまう。
「ふふーん♪ あんた得意って言ってた割には大したことないわねー? ハンデとしてマレット二つ使ってもいいのよ?」
「ちっ、馬鹿にしやがって……! ハンデなんかいるかよ、勝負はここからだろ!」
「(あ、真剣な顔……。かっこいいかも……)」
「ん? 何ボーッとしてるんだ?」
「ぼ、ボーッとなんかしてないわよ! それより制限時間もあるのに早く攻撃しなくていいのかしら?」
「おっとそうだったな。じゃあいくぞ!」
ゲームが再開かれると、そこからは、両者一歩も譲らない熱い勝負となった。
――――――――――
残り時間もあとわずかとなった。
今のところのスコアは、俺が5点、葵が6点。なんとかくらいついて一点差にはおさえているものの、決め手がない状態だ。
「はっ!!」
「ふっ!!」
あと一点、せめて引き分けにできれば……! なんとかこのラリーを制してそれを実現させたいところ。
「あ、しまった!!」
ここで、葵がミス。パックはゆっくりとしたスピードでこちら側に進んでくる。これは……チャンスだ!!
「いけぇぇぇ!!!」
ダンッ!!!!
俺の渾身の一撃は物凄いスピードと共に一直線に進んでいき……
ガゴンッ!!!
なんと、葵のゴールへと吸い込まれていった。
「よし入ったぞ……ってあれ?」
ゴールに入れたのに、スコアは変わらず5対6。まさか……!
「タイムアップね。ふう、危なかったわ」
「そんな…………!」
確かに、制限時間は0を示していた。こんなことって……。
「というわけで、この勝負は私の勝ちね!」
「ちくしょー、自信あっただけに悔しいな……!」
調子が悪かったわけでもなく、単純に実力で葵に負かされてしまったので、余計に悔しかった。
「やっぱり勝負ってものは、勝つとより楽しくなるわね♪」
「ご機嫌になりやがって……。まぁでも最後のゲームで勝てばいいんだ、次は負けないぞ!」
「望むところよ!」
負けたことで、俄然やる気がでてきた!何がなんでもこの勝負は勝ってやる!
「(やっぱり、零人といると楽しいな)」
ふと葵を見ると、またニヤニヤしていた。
「おい、一回勝ったからって顔が緩みすぎだぞ。次は絶対負けないからな」
「そ、そんなんじゃないわよ! 私だって負けないわ!」
「お、おう」
なんだ、こいつもちゃんとやる気じゃないか。これは、最後のゲームが楽しみだな。
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