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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第一章.二つの始まり
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1.入学式の朝。 いつもどおりのバカな日常



 春の入学式の日の朝。今日から俺は高校三年生になる。


 かといって、三年目ともなれば今までとさほど心境が変わるわけでもない。


 いつも通り起床してリビングに向かう。そこには三人分の朝食がテーブルの上に置いてあり、キッチンには俺の母である美香子(みかこ)がいた。


「おはよう。母さん」


 とりあえず挨拶をすると、母さんはこっちを振り向いた。


「おはよう零人! 今、朝ごはん用意できたんだけど、まだ美奈が起きてきてないのよ。悪いけど起こしてきてくれる?」


 全く、手間のかかる奴だ。俺はわかった、と答え妹の部屋へ向かう。


 俺の妹の名前は高崎美奈(たかさきみな)。勉強はそこそこで運動神経はとてもよく、見た目が可愛いのもあるからか、中学校では友達も多かったらしい。


 美奈の部屋の扉を数回ノックする。が、返事はない。


 妹の部屋に勝手にあがりこむのも些かどうかとおもったが、こうなれば仕方がない、入るとするか。


「入るぞー」


 扉を開けると案の定妹は、ベッドの上で寝ていた。長い髪は乱れ、パジャマがはだけて、きめ細やかな白い首筋が露になっている。美人なのもあり、その姿はとても艶やかだ。思わず目線がいってしまう。


 はっ……いけない。俺は決してシスコンではないのだ! 早く起こさなければ。


「おーい、起きろー。わが妹よー」


「んぅ……」


 眠そうに目を擦りながらむくりと起きあがる。


「あれ……。何でこの世に兄ぃがいるの……?」 


「妹よ、それだと兄ちゃんがもうこの世にいないみたいじゃないか」


「……いなくてもよかったのに」


「冗談だよね!? 兄ちゃん物凄く傷ついたよ!?」


 傷ついて本当にいなくなってしまいそうだ。俺が死んでしまう夢でも見ていたのだろうか?


「まあいいや、とにかく朝飯だ。早く着替えてこいよー」


「は~い……」


「今日から高校生だろ。朝くらいしっかり起きろよ」


「そいえばそうだった……」


「忘れてたのかよ」


 俺は妹の頭を心配しながら朝食へと向かった。



―――――――――――――――――


 朝食を食べ終え、あらかた登校の準備を済ませたところで、


 ピンポーン!ピンポピンポピポピポピポピポピポピポピポ……


 インターホンが鳴る。どうやら悪友二人がきたようだ。


 何で出もせずに分かるかって? 二人とは何年も一緒に遊んできた仲だ。そんなの、分かって当然に決まってるじゃないか……。


 俺は玄関の扉を開け、その先にいる友に熱く叫ぶ。


「お前らピンポンピンポンうるせぇんだよ!?」


 こんな朝から幼稚で地味に迷惑なイタズラをする奴をこの二人以外に俺は知らない。


 見ると、二人の友人の内の一人である武志がインターホンの前でニヤニヤしていた。実行犯はこいつのようだ。


「よう! 迎えにきてやったぜ!」


「俺のツッコミ無視すんなよ!?」


 迷惑をかけたにも関わらず何事もなかったかのこどく接してくるこのミラクルバカの名前は神田武志(かんだたけし)。特徴はバカ以外見当たらない。


「まあ、落ち着け零人……。いつものことじゃないか」


「いやそうなんだけどさ……」


 俺を(なだ)めるこいつの名前は木村駿樹(きむらしゅんき)。クールな性格に見えて、こいつもバカだ。考えてもみてほしい。実行犯ではないとはいえ、あのふざけたピンポン連打を止めずにいたのだ。良識のある人間はこんな事に協力はしない。


 しかし、なんやかんや言っても俺達はいつもこの三人でつるんでいる。


「はあ……もういいや。早く登校しよーぜー」


 バカバカしくなり、俺は登校し始める。二人もそれに続く。


「そいえば、クラス替えどうなったんだろうな」


 少し歩いた頃、武志が思い出したように言った。そういえばどうなったんだろう。こいつらとは一緒になれたんだろうか。


――――――――――――――――――


 学校に着く。昇降口の前では、見知った顔がそれぞれ一喜一憂していた。早速クラス分けの表を見てみる。


「俺の名前は……あった、1組だ!」


「僕も1組だ!」


「俺もだ」


「マジか……! 皆同じクラスかよ!」


 武志が驚いたように言う。


「すげーな。こんな事あるもんだな」


「奇跡だな」


 俺達は小学校時からの付き合いで、それでいてなぜかクラスは全部一緒だった。


「とにかく、よろしくな!」


 武志が笑顔でいう。こういう素直なところが、こいつの魅力なのかもしれない。


「ちっ、またこいつらバカと一緒かよ」


「なんだと! お前だってバカじゃないか!」


「同感だ。武志はともかく俺までバカ扱いは納得できん……」


 照れ隠しのように軽口を言ったつもりが、二人の反感を買ってしまったようだ。というか俺までもがバカだと? それは聞き捨てならないな。


「上等だ、なら勝負をしようじゃないか。ルールは簡単、原子番号1から順に答えていって一番最初に答えられなくなったやつが一番バカってところでどうだ?」


 俺の提案に二人とも異論はないようで、首を縦にふる。


「でもいいのか? 僕は自分のどころか家の番号だって言えるぜ?」


「「は?」」


 突然、武志が摩訶不思議なことを喋り出す。何を言ってるんだこいつは?


「それどころか、お前らの携帯の番号だって覚えてるんだ!」

 

「「いや電話番号じゃねーよ!!」」


 やっと理解した俺と駿樹が同時につっこむ。原子番号と電話番号を間違えるとは、なんてバカなやつなんだ。しかしこれで一番のバカは武志で決まりだろう。


「相変わらずうるさいやつらねー」


 くだらないやり取りをしていると、辟易したような声が。


 声の方を見ると、俺たちの背後に呆れたようにこちらを見る少女がいた。その少女を見た武志の顔がひきつる。


「げ、葵!」


「あんた今「げ、」って言った? 言ったわよね……?」


 そういうと、彼女は瞬く間に武志を地面に倒し、うつ伏せの武志の足をつかんで技をかける。


「ぎゃああああ! 脊髄がぁ! 僕の中枢神経がぁ!」


 余計な事を言った武志の身体が、葵のプロレス技(?)によって平仮名の「つ」のように曲がっていた。


 この凶b……じゃなくて行動的な女の子は遠山葵(とおやまあおい)。綺麗なロングヘアで見た目だけは美人の俺たちの幼馴染みだ。……そろそろ本気でヤバそうだ。武志の背中がミシミシいっている。


「おい葵、そろそろやめてやれ。ところで、葵は何組なんだ?」


 武志が開放される。ダメージを負った武志はなんとかよろよろと立ち上がった。


「1組。残念ながらあんた達と一緒よ」


 約一名、悲痛な表情を浮かべていた男がいた。とはいえ、


「俺は別に残念じゃないけど。むしろ良かったまであるな。とにかくよろしくな」


 素直に思った事を言う。クラスに知り合いが多いのは良いことだからな。


「そ、そう? よろしく……」


 そう言った葵の頬は、ほんの少しだけ赤かった。何か怒らせるようなことを言っただろうか?


「じ、じゃあね。私先にいくから」


 葵が昇降口に入っていく。どうやら怒ってはいなかったようだ。


「俺達も行こう……」


「おっと。そうだな」


「うぅ。まだ背中痛い……」


 俺は名簿番号を再確認するためクラス表をチラ見する。すると、表の最後の方に見覚えのない名前があった。


「転校生か……?」


 ただ知らない人の可能性もあるが。


「おーい! 何してるのー? 早く行こうぜー」


 いろいろ考えていると、武志に呼びかけられる。そうだ。行かなければ。


 まぁ、今考えていても仕方がないしな。転校生かどうかはそのうちわかるだろう。


 こうして俺たちは教室に向かうのであった。




なんとまだメインヒロインが登場しないという。

恐らく次の回では登場するかと思われます。安心してください。(はいています。古いですね。分かってます。)


感想等ありましたら、ぜひお願いします。

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