18.警泥終了後② 新たな始まり
最近寒いです。
字の間違いなどございましたらご指摘ください。
警泥が終わり、帰路についていた俺。一緒にいるのは妹である美奈と、お隣さんであり、クラスメートでもある園神の二人である。
一応今回の警泥は園神との仲を深めるものだったし、園神に感想でも聞いてみるか。
「なぁ園神。今回の警泥、楽しかったか?」
「急にどうしたのかしら?」
園神が不思議そうにこちらを向く。まぁ普通は遊んだ感想なんて聞くことは少ないと思うし、疑問に思うかもしれないな。
実際毎回そんなことしても相当神経質な人だと思われるだろう。
そして俺はどう答えるか困っていた。どうしたって聞かれてもうまく説明できる気がしないし、まず普段こんなこと聞かない。
「いや、今日初めて皆と遊んでみただろ? だからその、俺たちと一緒にいて楽しかったか、ていう……」
うーん……。案の定曖昧な感じになってしまった。言葉選びって難しいな。園神は呆れたような表情になる。
「はぁ……。イマイチ何を言いたいのかよく分からないわ」
「う……」
くそ、俺の語彙力と表現力の無さを恨むぞ……!
「けれど……」
「ん?」
突然、園神がそれまで歩いていた足を止める。それに合わせ、俺と美奈も止まる。そして口を開いて言った。
「そうね。あなた達は個性的な人が多くて、それでいて皆暖かくて。そんな人達とこうやって遊べて楽しかったし、何より今までで一番満たされた時間だったと思うわ」
園神はこう言って、裏表のない、すっきりとした微笑みを浮かべた。
「……!」
それは、まるで天使の様だった。オタク達がよくいう軽々しい意味の天使とはまるで違う。もっと神々しく、失明しそうなほどの光を放っているような美しさを誇っていた。
そんな園神の別次元の美しさに俺は思わず見惚れてしまい、釘付けになったように園神からしばらく目が離せなかった。
「……兄ぃ?」
「…………はっ!」
だが美奈の一言で、まるで天界から下界に引き戻されるように意識が戻る。
「兄ぃ、ずっと夏音姉ぇを見つめてた……。えっち」
「なっ! 違うぞ美奈!」
違わないが、兄としての尊厳を保つため一応否定しておく。
「はぁ。折角言葉足らずな質問の意図を汲み取って答えて上げたのに。無視した挙げ句、人の身体を舐めまわすように見るなんて。美奈ちゃんはとんだ変態の兄を持ったものね」
「痛い痛い心が! そんな変質者みたいな見方してねーよ!? 盛りすぎだろ!」
「……うん」
「美奈も肯定しちゃうのかよ!」
どうやら俺は妹公認の変態兄貴だったようだ。……死にたくなってきたな。
俺が生きる希望を失いかけていると、いつの間にか家の前に着いたことに気づく。
ああ。早く帰ってこの傷を癒そう……。
「ではさようなら。美奈ちゃんとそのド変態兄貴さん」
「お前やっぱ悪魔だ!」
どうやらこの傷を癒すには相当な時間が要されることになりそうだった。
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Another point of view 園神夏音ver
今日の警泥は、私にとって新鮮なものでもあった。
まぁ高校生にもなって警泥なんて、誰でも新鮮かもしれない。
でも、今回はそういう意味の新鮮ではなかった。
こうやって、仲間として誰かと遊ぶことが、私にとっては新鮮だったのだ。
高崎くん達は皆、揃いも揃って暖かい人達ばかりだった。
こんな私のために遊びを考え、一緒に遊んでくれる。
それに私は嬉しさと言うより戸惑いを感じていた。
まだそんなに実感したわけではないが、今までそんな暖かさに触れたことなどなかったからだ。
そして、私の隣人である高崎零人くん。彼は特に親切であった。
無愛想に接していたであろうにも関わらず私に話しかけ続けてくれ、更には友達まで紹介してくれる始末。
本当の優しさなのか、それとも偽善なのかはわからないが、こんなに人のために何かをする人を私は初めてみた。
私は無意識に、今まで人に見せたことのなかった素の自分を、彼に見せてしまっていた。
素の自分は、自分で思うほど卑屈で、毒舌だと思う。しかし彼は、それをまるで当然のように受け入れ、決して私から遠ざかるようなことはなかったのだ。
彼、そして彼の周囲の人々は、得体のしれない謎の包容力のようなものに溢れていた。
そして私はこの一週間、そんな人達と接し、新しい体験を何度もしていくうちに一瞬思ってしまった。
この人達となら、うまくやっていけるかもしれない。そして、心置きなく自分の望みを探すことができるかもしれない、と。
そんな事、私が思ってはいけないのに。私は、人に近づくべきではないのに。
――――――――だって、私の近くにいたら、皆傷ついてしまうから。
次回はエピローグとなりますが、もちろん終わりじゃありません。章分けすると第一章終了って感じです。




