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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第一章.二つの始まり
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12.警泥。皆で遊ぼう (中編)




 警泥が開始される。俺は作戦通り、武志と一緒に学校の裏側を走っていた。


「零人、何か作戦は思いついたの?」


「いや、まだだけど。一応今から考えとくか」


 元々、二人で行動する理由は作戦を練り、実行するためだ。だがその作戦が無いんじゃ意味がない。


「うーん……。そうだな、こんなのはどうだ?」


「おー! もう思いついたのかー!」


 武志が目を光らせる。俺の作戦に期待してくれているのだろう。その期待に答えて、俺が考えた素晴らしいプランを話そうじゃないか。


「まず、鬼が来たら武志が全裸になるんだ」


「ちょっとまって!? なんで急に露出狂みたいなことしなきゃならないんだよ!?」


「そうすれば警察役の女子は近寄ってこないだろ?」


「かわりに本物の警察に捕まるわ!!」


 実行した(あかつき)には、武志は一瞬で囚人と化してしまうに違いない。


 仕方ないな。武志を本物の檻に入れないためにも、別の作戦を考えるか。


「やれやれ。なら、これだったらどうだ?」


「……今度はどんなの?」


「誰かが捕まった時の対処法だ」


「おー! うまく助けられれば、こっちが有利になるからね!」


「まず、俺達が檻である昇降口前へ向かう」


「ふむふむ」


「んで、見張りがいるだろうから、武志がその見張りの前に行って敵を引き付ける」


「それって僕が囮になるってことか」


「そして、武志が捕まったのを確認してから、俺が檻の中の仲間を助ける」


「それ僕と捕まった仲間が入れ替わっただけじゃない!? 単に僕だけが捕まるじゃないか!!」


「そして俺達は制限時間まで逃げ切るって訳だ」


「僕は助けてくれないのかよ!?」


 ご立腹な様子でわめく。うーむ、何がそんなに不服なんだ。


「第一、何で僕が捕まるのを黙って見てるのさ……。僕が捕まるのを確認なんかしなくても、僕が引き付けてる時にお前が助けに行けば、全員生還できるかもしれないじゃないか」


「何言ってるんだ? 仲間を確実に救うのが目的なんだぞ?」


「僕も仲間ですけど!?」


 悲痛な顔で訴える武志。そっか、そう言えばそうだったな。


「なら、この作戦で武志が捕まったら俺も捕まろう」


「何でだよ!? さては僕のせいで負けたみたいにする気だな! しかも全然捕まる意味ないし!」


「ああ。すでに二人捕まっていたら、お前のせいでチームは敗北だ」


「僕責任重大ですね!!」


「だから捕まったら一生許さないぞ?」


「すました顔で怖い事言うなよ!? てかこの作戦本当にやるのかよ! だったらお前が囮をやればいいだろ!?」


「いや、無理だ」


「何でだよ」


「実はな……。今ちょっとした病を患っているんだ」


「は、病? どんな?」


「中二病という重い病気だ」


「それ心の病だろ!? 運動に支障はないじゃないか! そもそも患ってないだろ!!」


「……間違った。手足口病だ」


「幼稚園児か!!」


「(くそ、騙されなかったか。馬鹿のくせに)いや、また間違った。本当は軽いケガを負っているんだ」


「何か最初の方妙な声が聞こえたけど……。ケガ? 何だよそれ? 最近太ももつったとかか?」


「今朝、タンスに足の小指をぶつけたんだ」


「いやそれぐらいがんばれよ!!」


「間違った。実は最近、足がむくんできたんだ」


「女子かよ!? てかそれなら普通に走れるだろ!! むしろ走った方がいいまであるわ!」


「また間違った。実は昨日、両足のアキレス腱が断裂したんだ」


「急に重すぎるだろ!! どうやって今まで動いてたんだよ!」


「気合いで」


「凄いってレベルじゃないぞ!?」


「冗談だ」


「まあそうだろうね……。ツッコミ疲れた……」


「本当は片足だけだ」


「そこかよ!? もう警泥なんてやめちまえ!」


 くそ、言い訳は通らなかったか。頭の堅いやつめ。


「お前も文句の多いやつだな……」


「そりゃ文句だって言うよ! そもそも何で、僕が被害を被る前提なのさ」


「なら、その作戦はやめてこっちはどうだ? お前が被害を受けることもないと思うが」


「へー? どんなの?」


「この作戦は――――」



―――――――――――――――――



 一方警察側。(葵視点だよ)



「それじゃ、誰か一分数えてくれない?」


「はい! 葵ちゃん、僕がやるよー! 葵ちゃん達は作戦とか立てといてね!」


「おっけー、ありがと!」


 私のお願いを聞いてくれた桃に感謝し、私は駿樹と夏音と作戦をたてることにする。


「それじゃ、二人とも何かない?」


「俺は見張り役をやろう……」


 駿樹が見張り役を買って出た。何でかは知らないけど、妙にやる気に満ちてるのよね、コイツ。


「安心しろ、役目はしっかり果たすつもりだ……」


「分かったわ。任せるわね!」


「ああ。この勝負、必ず勝とうな……! 追いかける役目は任せたぞ!」


「り、了解よ。それにしても、いつもより無駄に熱いわね……。まあ、やる気があるのは良いことだわ」


 普段は比較的おとなしい駿樹から、並々ならぬ闘志を感じる。理由は聞いてはいけない気がした。きっとどうでもいいことでしょうし。


「じゃあ、残った私と夏音と桃が追いかける役ね! 夏音は走るの得意?」


「一般的な女子高生の平均と比べれば、速い方だと思うわ」


 へー、やっぱり夏音ってなんでもできるのね。ちょっと憧れちゃう。


「私も走りには自信があるわ! ちなみ100m走の自己ベストって何秒くらいなの?」


「あまり覚えていないけれど……。11秒台だったのは確かね」


「めちゃめちゃ速いじゃない!?」


「そうなの?」


 確か男子でも11秒台は速い方だったはず。この子、一体どんな体の構成をしてるのかしら?


「流石に私はそこまではいかないかもしれないわね。でも、足を引っ張るつもりもないわ。よろしくね!」


「ええ。ところで、作戦の方はどうなのかしら?」


「あ、そうだったわ」


 そう言えば作戦会議だったわね。夏音の身体能力に驚きすぎて、作戦のことを忘れかけてたわ。


「葵さん、泥棒側の人の身体能力はどんな感じなの?」


「そうね。武志と零人は足が速いから、見つけたら出来るだけ粘って、仲間の警察を見つけたら挟み撃ちか何かで捕まえましょう。特に武志はあんなバカだけど、足は学年トップクラスに速いわ。捕まえるのは苦労するでしょうね」


「ふむ。残りの二人は?」


「スズは運動神経はいいけど、正直、足は比較的速くないわ。でも、美奈ちゃんは昔かけっこしたとき、普通に速かったわよ。今はどうかわからないけど、油断は出来ないわね」


「そう。分かったわ」


 夏音は顎に手を当てて何か思考する仕草をする。少し時間をおいて、顔を上げた。


「では、二手に分かれて校舎の周囲を監視しましょう。私はこの昇降口から見て左側を見て回るから、葵さん達は右側をお願い。それなら敵を発見したとき、こちらが速さで劣っていても、挟み撃ちしやすいわ。意外と敷地が広い上に、サッカーゴールや車などの障害物も多いから、その点は気をつけましょう」


「おお、完璧な作戦ね……。さすがだわ」


「ごじゅきゅー、ろくじゅう! 一分たったよ!」


 そうこうしているうちに、桃が一分を数え終わっていた。


「それじゃあいきましょう、桃!」


「うん、分かったよ!」


「反対側は任せてちょうだい」


「俺はしっかり見張っているから、頑張ってくれよ……」


 それぞれの役割を全うするため、私たちは動き出す。さーて、勝利のために頑張るわよ!



  ―――――――――――――――



 零人&武志サイド


「この作戦は、俺達が見つかった時の対処法だ」


「お、待ってました!」


「といっても、作戦って程のものじゃない。1つは敵が来たらできるだけ二人で逃げて、ピンチになったときだけお互い離れて逃げるってだけだ」


「どうして?」


「敵が限りなく近くにいた場合、もしくは二人以上の複数人の場合を考えろ。固まってたら挟み撃ちとかされて、俺達両方捕まる可能性がある。そうなりゃ本末転倒だ。だからそうなりそうな時だけはなるべく早めにバラける。敵が一人の時とかだったら、今まで通り二人で固まって逃げて、作戦を実行しやすくするんだ」


「なるほど。基本は、作戦を思い付いたときの行動力を確保するために二人で固まって逃げる。ピンチの時は、二人まとめて捕まらないようにバラけるってことでいいね?」


「そうだ。協力して勝つぞ」


「オーケイ!」


 作戦がある程度まとまったところで、改めて周囲を警戒してみる。すると、何やらほんの少し足音が聞こえた。……まさか。


 辺りをキョロキョロと見回すと……何者かがこちらにせまってきていた。


「見つかってしまったわね。でも、逃がさないわ!」


「やばい、園神だ! 逃げるぞ!」


「え? うわあ本当だ!?」


 しまった、話をしていて今まで気づかなかった! しかも結構近くまで来ている!


「まずいな……! 園神のやつ、滅茶苦茶速いぞ!」


「全然逃げ切れない! 僕、足には自信があったんだけどな!」


 このままじゃ武志はともかく俺は追い付かれるかもな……!


 よし、まだ差がある内に、隠れよう! ちょうどよく曲がった先にいいかくれ場所があるのを知っているしな!


 それに、引っ越してきたばかりの園神は、まだこの辺りの地理を詳しく把握していないはず。ましてや隠れやすいスポットなど分かるはずがないだろう。


 武志と離れることとなるが、非常事態なので仕方ない。作戦通りバラけよう。


 俺は武志と分かれて、物陰に隠れる。どうだろう、うまく隠れることはできたと思うが……。


「見つけたわ」


「うわ、マジかよ!」


 あれ、呆気なく見つかってしまったぞ!? どうしてだ!?


 当然、俺はそこからどうすることもできず。


「高崎くん、逮捕よ」


「くそ、捕まったか……!」


 開始から7分経らずで捕まってしまった。


「しかし、どうやって俺が隠れている場所を見つけたんだ? 結構うまく隠れたと思ったんだけどな……」


「私も最初は気づかなかったわ」


「え、じゃあ何で見つけられたんだ?」


「神田くんが教えてくれたの。この方向を指さしながら「そっちに零人が隠れてるよー!」って」


「…………」


 あの野郎……! 自分が確実に助かるために、俺を切りやがったな……!


「園神、武志はどっちの方向に行ったんだ? 少し野暮用があるんだ」


「高崎くん、貴方は捕まったの。復讐をするなら後にしてちょうだい」


 くそおおお! この燃え上がる友へ思い(殺意)どうしてくれようか………!


 あの野郎、覚えておけよ……! 檻から出たらただでは済まさないからな!


 こうして俺は友への怨念を募らせながら、園神に連れられて檻である昇降口前に収監されるのであった。



ボケがしつこいかも?恋愛はこれからですね。今から案を温めておいてます。


まだまだ未熟な上、感想、アドバイス等よろしくおねがいします。

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