レズパコお馬さんごっこ
高校の帰り。
いつもどおり隣のユウちゃんのうちに遊びに行った。
ユウちゃんの家は、父子家庭でお父さんの帰りが遅い。
縁あって、お父さんが帰るまで、わたしがユウちゃんと一緒に遊ぶのが日課になっている。
「マコちゃん、お馬さんごっこしよー」
ユウちゃんが、わたしに飛びついてきた。
「お馬さんごっこ? なんだろ、馬跳びのことかな?」
「ううん、お馬さんごっこだよ」
お馬さんごっこなんて、もっと小さい子の遊びじゃないだろうか。
いくら低学年だからって、小学校で流行っているとも思えないけど。
「お馬さんごっこかあ。わたしあんまり力ないから、ユウちゃんが乗ったら潰れちゃうかも」
「乗らないよー?」
「乗らないの?」
お馬さんごっこって言ったら、大人が四つん這いになって子供が上に乗る、あの遊びじゃないのかな。
ユウちゃんに聞いてみると、やはり四つん這いになれという。
やっぱり格好は同じなんだ。一緒に走るのかな?
どんな遊びなのか、気になりつつも、ユウちゃんの言うとおりにした。
後ろでユウちゃんの動く気配がする。
なんだ、やっぱり乗るんじゃないの。
わたしは、ユウちゃんの重さに耐えるべく、お腹に力を入れて、その瞬間を待った。
「いくよー」
「はーい。どうぞー」
ユウちゃんの手が腰に着いた。……ユウちゃん痩せてるから大丈夫だよね。
ぱん
お尻を叩かれた。
え、どういうこと? 走れっていう合図かな。
反応に困っていると、また
ぱん
叩かれた。
「……ユウちゃん?」
ぱん
尋ねた瞬間、また叩かれた。
ぱん、ぱん、ぱん
何度も続いた。
さすがにわけが分からなくなって後ろを振り向くと、そこには自分の腰をわたしに打ち付ける、ユウちゃんの姿があった。
えっ、なに?
「ちょ、ちょっと? ユウちゃん、なにしてるの?」
「お馬さん、ん、ごっこ、だよーっ!」
一生懸命に腰をぶつけながら、ユウちゃんが答えてくれた。
いや、そうじゃなくて。
……お馬さんごっこ?
この体勢って……もしかして、交尾……?
ぱん、ぱん、ぱん
わたしが考えている間も、その行為は続いた。
「ゆ、ユウちゃん、わたしの思ってた、お馬さんごっこと、ちょーっと、違うかなーって」
「そうなの?」
やっと止めてくれた。
わたしはユウちゃんに、わたしの思っていたお馬さんごっこというモノが、どんなものであるかを説明した。
「うん。じゃあやってみるー」
やるんだ。意外にも乗り気だね、ユウちゃん。
わたしは……やれるか? やれるのか、わたし。
ふたたび四つん這いになって待機。
「いいよー。乗ってみて」
「よいしょ」
腰にユウちゃんの体重がかかる。
うん。いけそう。
そう思ったわたしが甘かった。
腰から背中へと、ユウちゃんが移動するにつれて、わたしの背中がエビ反り状態になっていく。
「お、おもっ……。ごめっ、ユウちゃん、ギブ、ギブ!」
これ以上はやばい。腰やっちゃう。
自らの肉体の限界を悟ったわたしは、ユウちゃんに白旗をふったのだった。
「マコちゃん、大丈夫?」
ユウちゃんに心配されてしまった。
幸い、大事には至らなかった。
「うん、大丈夫だよ。わたしが自分の身体を過信しすぎただけだから……」
「かしん?」
きょとんと首をかしげるユウちゃん。かわいい。
「ねー、マコちゃん、またお馬さんごっこしていい?」
お馬さんごっこ(ユウちゃんバージョン)か。
「うーん、いいけど……。あの遊び、どこで覚えてきたの?」
「テレビでね、お馬さんがやってたの」
動物番組かあー。そうね、やるよね、交尾。
「そっかー、テレビかあ。……お父さんとやったことある?」
「うん。でも、お父さんはだめなんだって。好きな人としなさいって。だからマコちゃんとするのー」
説明を逃げたな、あのお父さんめ……。
ユウちゃんは父子家庭だから、お父さんがしっかりしてくれないといけないのに。
ぱん、ぱん、ぱん
楽しいのかなあ。これ。
ぱん、ぱん、ぱん
いつまでやるんだろう。
ぱん、ぱん、ぱん
「はっ、はっ、あっ……」
ユウちゃん?
まさか……。
「はあ、はあ……」
腰が止まった。と思ったら、息を荒くしたユウちゃんが、わたしにのしかかってきた。
ユウちゃんの身体は、いつもより熱いみたいだった。
「ゆ、ユウちゃん? どうしたの……?」
「んー、疲れちゃったー」
あー、そうだよねー。お姉さんわかってた。わかってたよー。
「そっかあ。じゃあ、お馬さんごっこは終わりにしよっか。次は、なにして遊ぶ?」
「ううん、まだだよ。こんどはマコちゃんがするの」
「えっ」
衝撃の発言とともに、ユウちゃんは四つん這いの体勢をとった。
わたしが……、ユウちゃんに……あれを、しろと、おっしゃいましたか。
「えー、っと。わたしはちょっと、やめておこうかなあ」
「だめ。マコちゃんの番!」
「うーん……。ほら、ユウちゃん小さいから、わたしがする方だと、ちょーっと、やりにくいかなって」
「……マコちゃん、ユウのこと、好きじゃないの……?」
うつむいて、今にも泣き出しそうだ。
えーっ、それはずるいよ!?
そういえば「好きな人と」っていう設定ありましたね!
それもこれも、お父さんの発言のせいじゃないか! ぐぬぬ……。
「そ、そんなことないよ。わたしユウちゃん大好きだよ。うん。や、やろうか……」
「きてー。はやくはやく!」
そ、そんなに急かさないでよ。
覚悟を決めて、わたしはユウちゃんの後ろにしゃがみ込む。
膝立ちになっても、高さがあわない。
仕方がないので、ユウちゃんの上に覆いかぶさるようにして、床に手をついた。
あー、うん。
……すごく、犯罪っぽいです。
「マコちゃん、はやくー」
「う、うん……」
ええい、やったれー。
ぽふ
ユウちゃんの腰、というかおしりに、わたしの腰をあてる。
体重差があるので、加減しないとユウちゃんが転んでしまいそうだ。
「マコちゃん、もっと強くして」
「こ、このくらい?」
ぽん
「もっとー」
ぱん
「うん。それでいいよー。もっとしてー」
ぱん、ぱん、ぱん
わたしは、ユウちゃんの言うままに腰をひたすら振った。
ぱん、ぱん、ぱん
結構、疲れるな、これ。
ぱん、ぱん、ぱん
「ふっ、ふっ、ふっ」
息が漏れてきた。
しかし、動きを弱めると、ユウちゃんからダメ出しをされるので、気が抜けない。
一分くらい続けただろうか。
身体があつい。汗もでてきた。
もう、何をしているのか、自分でもわけがわからなくなっていた。
ぱん、ぱん、ぱん
「ふっ、ふっ、んっ……」
なんか、変なところに当たって……。
このまま続けると、ちょっとやばいかも……。
「ただいまー」
ガチャッ、と部屋のドアを開けて、ユウちゃんのお父さんが入ってきた。
ちゃんと鍵掛けてたはずなのに、……夢中になって気づかなかった!?
「お前ら……なにしてるんだ……?」
わたしたちの姿を見て、お父さんのネクタイを緩める手が止まった。
ぽたり。
わたしの顔から、汗がしたたり落ちた。
「お馬さんごっこ!」
ユウちゃんの元気な声だけが、静かな部屋に響いた。
レズパコがもっと増えますように
↓つづき書きました
レズパコ2 なまけものさんごっこ
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