第2話 伯爵
一応門の中には入れた。
「となるとあの城は王様が住んでる城か。小さい国だな。まずは服屋と宿屋を探すか」
カシャカシャと歩いていると服屋を見つけた。
「こんにちは、どなたか居ませんか?」オサムが呼ぶと奥から男が出てきた。
「えー、いらっしゃいませ。ウチは服屋ですが?」
店主らしき男が言うと
「そうそう、服がほしいんだ。鎧しか持って無くて」
オサムが兜を取って
「サイズとか適当でいいんだけどすぐに着れる服あるかな?」店主に言うと
店主は
「ありますが、着てみますか?」とだけ言った。
「少し体が大きいので、できれは3L位がいいんだけど」
オサムがそう言うと、店主は首を傾げて「3Lですか?わかりませんが持ってきます」
そう言って奥から持ってきた。
オサムが
「悪いけどこの鎧を脱ぐの手伝ってくれるかな?どう脱げば良いのかわかんなくて」
そう言って悪戦苦闘していた。
店主が鎧の両脇の固定ベルトを外すとそのまま脱げた。
あとは腕や腰、両足だがそれは自分で外せた。
「色々持ってきましたんで、着てみて下さい」と薦められるままに5着買った。
「えーと、いくらになるかな?」オサムが値段を尋ねると
「銀貨3枚と青銅貨50枚になります」店主が言うので、オサムはポーチから銀貨と青銅貨をカウンターに置いた。
「あと、宿屋って何処かありますか?」
オサムは尋ねたが、店主は青銅貨を見て「どこの国から来ました?こんな精巧なコインは見たことが有りませんが」
そう言われてオサムは
「グランパープルからです。」と答えた。
それを聞いて店主は納得したようで
「そうでしたか。えーと宿屋はですね、この道を城に向かって行った左側にあります。道路を挟んで武器屋と鍛冶屋があるのでわかると思いますよ。」
そう言われてオサムは鎧の中にウエストポーチと武器以外を詰めて店を出ていった。
宿屋に到着すると
「1ヶ月ほど泊まりたいんだけど、部屋開いてるかな?」と訊いて
「2階の一番奥が空いてるよ、1ヶ月で青銅貨90枚だけどいいかい?」と言われ、青銅貨を払った。
オサムは部屋に着くと鎧架けが有ったのでそこに掛けた。
ボロボロになってしまった服はポケットの物を全部バッグに移してゴミ箱に放り込んだ。
幸い近くに食堂が有ったので1週間程度、慣れるまで殆ど宿屋から出なかった。
用心のために巨大な剣でドアが開かないようにし、短剣を付けたまま寝た。
リュックに入れていたものはウエストバッグに入ったのでリュックも捨てた。
買った服も何もかも入る。どうやら底無しのバッグのようだ。
金貨や黄銅貨も使わないようなのでポーチごと入れた。銀貨と青銅貨だけで十分とわかった。
一度、どのくらい入ってるのか確かめようとしたが永遠に出てくるので全部戻して銀貨と青銅貨のポーチもバッグに入れた。
これで荷物になるようなものはない。
どうやらオサムはこの世界ではかなりの金持ちのようだ。
金貨1億枚と銀貨などが30億枚というのも本当かもしれない。
何兆円になるのか見当もつかなかった。
オサムは、街を歩くためには巨大な剣はともかく腰の剣も少し大げさな気がしたので目の前の武器屋に入った。
そこには色んな剣や斧、メイスなどが飾られていた。
ゲーム好きのオサムには素晴らしいとしか言いようのない店で、じっと見ていると店主が怪訝な目でオサムを見ていた。
「あんちゃん、あんた冒険者じゃないだろ?扱えるのはレイピアかサーベルくらいだよ」
店主にそう言われて
「え?わかるの?」じゃあ、と言って腰の剣を見せた「これは扱えるんだけど、どうかな?」
すると店主は
「へ?!なんじゃこりゃあ!」と驚いた。
「あんちゃんこれを扱えるのか?」と訊いてきたので
オサムは不思議に思いながらも
「うん、そうだね、あ、そうだ、ちょっとまってて」と言って部屋に戻った。
オサムは鎧を着込み、兜だけは手で持ってウエストバッグを付け、巨大な剣と腰の剣、短剣全てを装備して店に戻った。
店に入り
「これが俺の装備なんだけど、特にこの大きな剣」
と軽々引き抜き店主に見せた。それに短剣も。
店主は
「あんちゃん一体何者だ?その短剣も含めて扱える人間は世界中どこ探しても居ないぞ」
そう言われたが実際扱えるのである。
「じゃあ俺はなんでも扱えるってことかな?そこの後ろに飾ってある刀が欲しいんだけど」
オサムは丁度いいサイズの刀を指差した。
店主はその刀を手に取り「ちょっと裏まで来てくれるか、とオサムを店の裏に連れて行った。
そこはかなり広い部屋になっており、天井も高い。
「じゃあこの刀でその立ててある丸太を斬れるかやってくれ」店主にそう言われて刀を渡された。
「丸太なんて斬れるかな?まぁいいや、やってみるよ」と言って何故か居合の構えをとった。
オサムは意識していなかったが渡された瞬間にベルトに差し、精神を集中した。
それは一瞬だった。
オサムは軽く抜いただけだったが、丸太が斜めにずれて落ちた。
「あ、斬れたね、これって扱えるってことかな?」店主に言うと
「扱えるなんてもんじゃねぇよ、達人だよあんた」と言い返された。
「んー、なんだかわからないけどグランパープルで色々有ってね」そう言いかけた時に
店主が遮るように
「あんちゃんならウチの店にあるもの全部扱えるな、好きなの選んでくれや、この部屋には魔剣の類もかなり置いてある」
そう言われてズラッと剣が並んだ場所に連れて行かれた。
「好きなのを。表に飾ってある物だと多分壊れちまう」店主は言った。
「じゃあこの刀と、軽くて丈夫なの選んでくれるかな?何か良い物」
オサムには多すぎてわからなかった。
「そうだな、ウチで一番上等なのはこっちの刀だな、あとはこの剣、軽いがよく切れる、どちらも魔剣だがな」
店主にそう言われたので「じゃ、その2本貰うよ、いくらになるかな?」オサムが言うと
「おいおい、この2本だと銀貨3000枚になっちまうぞ?金貨なら100枚だ」
オサムは「あ、金貨でもいいのか」とウエストバッグからポーチを出して金貨100枚カウンターに置いた。
ついでに短剣と腰に付けていた剣も放り込んだ。
「え?それはマジックバッグ?」店主は言ったがオサムにはなんのことかわからなかった。
「これでいいかな?代金」オサムは何の気無しに言ったが店主は驚いていた。
「この金貨は?精巧すぎる、けど偽物じゃないな」そう言われたので
オサムは
「グランパープルで俺のだと言われて渡されたんだけど、偽物じゃないよ、俺調べたから」
「じゃあ、この2本持って帰るね」と兜を付けて店を出た時に行列に出くわした。
これでは宿屋に行けない、通り過ぎるまで待つことにした。
「これは王様の行列だな」刀と剣を片手ずつに持ってぼーっと待っていると
突然「止まれ!」と行列が止まった。
どうやら王様がオサムのことを見ているようだった。
「おい、そこのお前、何故そんな剣を持っている?」と王様らしき人に直接訊かれた。
「えーと、今買ったばかりなんですが、その」とオサムが言おうとした時に店主が飛び出してきて
「伯爵様、この人はこの2本どちらも扱えますんで買っていただきました」店主が説明してくれた。
「ありがとう、俺わかんなくて、伯爵様?」
「兜を取れ」と言われたのでベルトに両手の刀を差して兜を取った。
「まだ若いな、どこから来た?」と訊かれて
「グランパープルと言う国からです。連れてこられました」と答えた。
「ほう。城まで付いてこい」と言われ、宿屋に荷物もないし、と付いていくことにした。
歩いている途中で両腰の刀と剣もバッグの中に突っ込んだ。
城に着くとオサムは3人の騎士と一緒に伯爵の執務室に入れられた。
強そうな男性騎士と女性騎士だった。
背中の巨大な剣と兜を取って椅子に座らされた。
「お前は何者だ?グランパープルから来たと言っていたが」
そう言われてので
「あ、そうそう、守護者の印とか言うものを持っています」首から下げたペンダントを出して
「これです」と伯爵の机に置いた。
伯爵はそれを手に取りじっと眺めた。
「ふむ、間違いないな。何故こんな辺境に来た?しかも先程の剣は騎士レベル95の剣だ、
それにその巨大な剣、扱えるものはこの国どころか世界を探しても居らん。
店主はお前が扱えると言っていたが、この目で見なければ納得できんな」
「それはまた後にするとして、冒険者にしては装備が立派すぎる。グランパープルは騎士を持たぬ国、
お前は連れてこられたと言ったが、意味がわからぬ。」
そう言われた時に
「伯爵様、グランパープル聖国の守護者様よりこれが届きました。」
黒い礼服の恐らく執事か誰かだろう、伯爵に封書を手渡した。
伯爵は封書を開け読んでいた。
「お前の名はなんという?」と聞かれたので「秋葉オサムです」と答えると
「間違いないようだな、この城の騎士として身分を与えるようにと書いてある。」
「えぇ!?騎士として推薦ですか?どういうことでしょうか?」オサムが訊くと
「こちらが聞きたいわ、ともあれ守護者様からの指示なら従うしかないが」
「よし、庭に出るぞ、クリューズ、レンデルフ、ロレーヌ一緒に来い」と伯爵が立ち上がった。




