第1話 再びの始まり
オサムは買い物に出かけるため服を着ようとしたが腕がシャツの袖を通らない。
「え?」と自分の体を見てみた。すると鍛え上げられた肉体になっていた。
「なんだこれ?」
一晩でとんでもなく筋肉量が増えている。
「まいっか、考えても仕方ねーし、服でも買いに行こう」と外に出た。
バイクも持ち上げられる程の力が有った。
「便利だ、けど服が居る」
オサムは買い物に出かけた。
1年程海外で暮らし、最終的にはアメリカで働こうと考えていたため、
まずはオーストラリア行きの航空チケットを予約していた。
部屋は今月いっぱいで引き払い、家具や電化製品は友人に譲ることにしていた。
残高400万円と少し口座に残っていたが、カード決済するために100万だけ使って旅行の準備をしている。
部屋も片付き、明日は南行きの飛行機で出発するだけとなった。
飛行機の窓から外を眺めてると、突然エンジンから煙が出て火を吹いた
「うわ!」驚くと他の客も見ていたのか気がついたのか
「エンジンから火が出てるぞ!」
「右も左もだ!!」
「太平洋の真上だぞ?」
「きゃああああああああ!」
等々阿鼻叫喚の嵐が機内に吹き荒れた
『あーあ、俺の人生これで終わりか、思ってたより短かかったな』
オサムは慌てず騒がず窓の外で火を噴くエンジンを見ていた
飛行機は操縦不能になったのか真っ逆さまに海へと突っ込んだ。
「秋葉オサムよ、目覚めよ」
その声でオサムは目を覚ました。
キョロキョロと見回すと、クリスタルで出来たかのような神殿だった。
『病院じゃねーな、絶対。とりあえず聞いてみるか』
オサムは近くの祭壇の向こう側に居る美しい女性に話しかけた。
「ここはどこでしょうか?」
守護者は
「グランパープル聖国、お前は長い時間この世界に居た。」
その答えにオサムは疑問を持ったが
「バチカンじゃねーな、グランパープル?なぜ言葉が通じる?」
オサムはそう言いながら脳をフル回転させて状況把握に努めた。
一番簡単な答えは「天国」とか言う場所だ。
しかし「長い時間この世界に居た」と言ったな。
ということは空間の歪みに迷い込んで時空連続体を超えた?
『SFの読み過ぎだな、ファンタジーか。まあいい』オサムは考えた。
まだ材料が少なすぎる。結論は持ち越そう。
「その言葉が嘘ではないと言う証明はできますか?」
オサムは守護者に訊ねた。
「証明は出来ぬ、お前は自らこの世界の記憶を消して去った」
守護者はそう言うが
「何故俺がそんなことをする必要が?何か有ったことだけは理解しています」
オサムは自分の体の異変のことを言っていた。
「お前は神々の一人となったが、永遠の命を嘆いて死を選んだ、そしてこの世界を去った」
守護者は事実を述べたがオサムは疑問が解消されない限りはあらゆる可能性を探る。
「俺が神に?永遠の命を捨てて去った?考えにくいことですね」
古来より人は永遠の命を得るためには何でもしてきた、その権利を得て捨てるわけがない。
「自ら消した記憶はこの世界に居ればいつか戻る、それまで世界を回れ」
「お前以外にもこの世界に迷い込んだ者が居た。今は朽ちていようが」
『この口調からすると、自分以外にも誰かが居る。そういうことだな?朽ちているということは死んでるか』
オサムは納得が行かなかったが、騙されるのもいいか。と考えた。
「では世界を回りましょう。歩いてですか?荷物を失くしたみたいでどうすることも出来ませんが。」
オサムが辺りや自分を見て気がついた。服がボロボロになっている、焦げた後もある。
「荷物は預かっておる」
守護者が言うと、妙に儀式張った男が一人オサムのリュックを持ってきた。
「あとはお前がこの世界を去る前に持っていたものだ」
と言うと、何やら真っ黒な甲冑と3本の剣を持ってきた。1本は柄まで入れると2メートルを軽く超える。
オサムは「コスプレか?」と思ったが、どうやら違うようだ。
鎧も剣もかなり重い。鉄でできていてもこんなに重いはずがない。
しかし、オサムは持ち上げることが出来た。
ベルトに通された4つの小型のポーチを開けると金貨や銀貨が入っていた。
大きめのウエストバッグにも何やらいろんなものが入っていた。
金貨を取り出してみたがいくらでも出てくる。物理的に不可能な量だ。
「その中には金貨が1億枚、銀貨や青銅貨などが30億枚入っている」
守護者がオサムに伝えた。
『まぁ嘘だな、しかし1000枚は入ってるな、どういう仕組みかわからないが』
オサムは金貨を元に戻して、床に置いた。
「そしてそれをお前は付けておかねばならない」
そう言われた瞬間に左腕に腕輪を付けられた。真っ黒な腕輪だ。
「何をするんですか!」外そうとしたが外れない。
他にも首に架けられていたペンダントを外され、その腕輪にはめ込まれた。
「これも肌身離さず付けておけ、グランパープル聖国の守護者の印だ。魔法印も体に刻んだが」
ペンダントを渡されたので首にかけた。
「ハイドステータスの腕輪とエンフォーセ、この世界で生きるために必要なもの」
「服と甲冑も付けてみよ。剣とベルトも忘れるな」
そう言って勝手にオサムを着替えさせた。しかし、あつらえたかのようにしっくり来る。
オサムは、こうなったら抵抗しても無駄だな。と考えて好きなようにさせた。
「そして、このリーファの笛を渡しておく」
守護者が不思議な形の笛をオサムに直接渡した。
「外に出て使ってみよ」と言われたので首にかけて鎧と胸の間に下げた。
兜を付けて、言われたとおりにやってみた。
何が起きるのかわからないが、世界を回ろうとしてた矢先の事だ、別にかまわない。
オサムは外に出てその笛を吹いてみた。
すると空からペガサスが降りてきた。
いや、ペガサスではない、角がある。しかも全身が青くぼんやり光っている。
「リーファ?そんな幻獣居たか?」オサムがつぶやくと「乗れ」と言われた気がした。
「お前、言葉が分かるのか?」オサムがリーファに話しかけるとリーファは頷いた。
「分かった、乗るよ」オサムはリーファに乗った。
ゆっくりと舞い上がり空を飛んだ。
「おぉぅ、こりゃすげぇ、しかしどこに連れて行く気だ?」
オサムの言葉に返答はなかった。
暫く飛ぶと大きな陸地が見えた。
下を見ると中世の城が見えた。
「ヨーロッパか、人の姿も見えるな。あそこに下ろしてくれるか?」
オサムがリーファに言ったが無視された。
そしてどんどん飛ぶと幾つもの城の上を飛び、小さな城の外に降りた。
「ここに入れってことか?」しかしリーファは動かない。
オサムはリーファから降りて、門の方に歩いていくとリーファは飛び去った。
「え!?あれ?どういうこと?」
オサムは置いてけぼりを食らった。
仕方がないのでオサムが門の前まで歩くと、上から
「何者だ!冒険者だな?ん?冒険者ではないな?」と言われたので
「えーと、俺は秋葉オサムといいます。グランパープルという国からペガサスみたいなリーファと言う馬に乗って来ました」
オサムの脳はフル回転中だった。何もわからない。
グランパープルで渡されたペンダントも見せてみた。
すると城兵の態度が変わった。
「グランパープル聖国から?リーファ?使者か?」そう言われたが、そもそもがわからない。
オサムはハッタリを使うことにした。
「そうです、城主に会うために来ました。極秘で用があります。急用なので遣わされました」
「少し待っていて下さい」と中世の甲冑姿の男が姿を消し、門が開き始めた。
「ありがとうございます。それで、城は」と正面と見ると小高い丘に城が建っていた。
「では、このまま歩いて行きますので、ご苦労様です」オサムはまっすぐ歩き出した。
『完全に中世だな、十字軍くらいの時代か?町並みや人も、セットじゃないよな』
実際に空を飛んできたのであるから、タイムスリップじゃない、異世界だとオサムは考え出していた。




