第31話 輪廻~終りと始まり~
オサムは起きた。黒騎士装備に着替えた。
もう一度グランパープルに言ってやるべきことがある。
剣も全て最強の黒騎士装備で乗り込んだ。
「守護者は居るかぁ!」と抜剣したまま肩に担いで祭壇まで登った。
「俺は神に裏切られた、この国が神の国ってんならぶっ壊す!」
そう叫んで柱を斬ろうとした、しかし跳ね返された。
「Godsよ、この国は時が止まっておる、傷も付けられぬぞ?」
守護者は平然と言った。
「それが気に食わねぇ!」と叫んで守護者に大剣を振り下ろしたが跳ね返された。
「我が身も時が止まっておる、斬れぬ」
守護者は平然と答えた。
「あぁ、そうかよ、てめーらは人の人生で遊んでやがるんだな?」
「気に入らねぇ!全部ぶっ壊してやる!」
オサムは外に出てリーファを呼んだ
「すまぬが、我が城へ」
何故かオサムの怒りは静まっていた。
城に着くとスウェンに「関係する奴ら全て集めろ」と言って中庭で待っていた。
「どうなさいました?星帝様」
クイードたちの子孫やスウェンを筆頭に子供、孫が集まってきた。
「突然だが、俺は旅に出る。俺無しでもやっていけるな?」
オサムがそう言うとスウェンは
「ご安心下さい父上、全て父上の道を踏み外さずやり遂げてみせます」
そう言うので
「そうか、たのむぞ、スウェン。皆も手伝ってやってくれ」と言って、城の倉庫に向かった。
倉庫で1億枚の金貨、30億枚の銀貨と青銅貨、黄銅貨を4つの無限マジックバッグに入れ東へ向かった。
「ロウは居るか?」とグリフォンで降り立ってすぐに訊いた。
ロウの代わりに大公となった息子ロウ・ファンが出てきた。
「星帝様、どうかなされましたか?」と訊かれ
「すまぬが当面の間世話になる。」そう言って自分のために作られた日本式の屋敷に向かった。
数日後
「星帝様の世話をするものを集めてまいりました。側女も3名美しい者を」とロウの息子が庭にずらりと並べた。
オサムは「俺一人に世話係はこんなには要らぬだろう」と、その中から10人選んだ。
「他は要らぬ、ロウの屋敷に戻してくれ」
「あと、側女か?その3名の実家に銀貨1万枚ずつ届けてくれ。少し待て。」
とバッグから3万枚の銀貨を出して「これを。」ロウの息子に渡した。
3人の娘はそれを見ていて驚いていた。
そして皇帝不在だが手入れの行き届いた屋敷でくつろいだ。
オサムは3人に「自由にしていいぞ、暫くの間で良い、俺といてくれ」
とだけ言うと扉を開け放ったままベッドに寝た。
3人の娘はどうしていいかわからず眠るオサムの傍に居た。
2時間程するとオサムは起き上がり「何か食いに行くぞ」と3人を連れて城下に降りた。
「美味い店を知ってるか?」と訊くと
「行ったことはありませんが、この先の店が評判が良いらしいです」
と一人の娘が言った。
どうやら高級過ぎて庶民には無理な店のようだ。
「じゃあそこにしよう、案内してくれ」オサムが言うとその店まですぐに着いた。
「食いたいものを注文しておけ、俺の酒もな」と言ってオサムは席を外した。
帰ってきた時には酒とちょっとした肴が置いてあった。
「料理はまだか、では少し待つとしよう、膝を借りるぞ?」と言って左横の娘の膝に頭を預けた。
しかしその膝はカタカタと揺れていた「リムルやロレーヌと違う」
「緊張してるか、そうかもしれんな」といったあと
オサムは出された料理を片っ端から貪った。
「どうした?お前達も食え、美味いぞ?」と言ったが遠慮なのか緊張なのか殆ど食べない。
オサムは3人の娘を屋敷に連れて戻り
「当面自由にしておけ」と外に出てグリフォンを呼んだ。
『星帝?グランチューナー?Gods?しらねーよ!』半ば自暴自棄になっていた。
「壊すか?全部・・・ぶっ壊してみるか」オサムは決めた。
「神々の一人だってんなら俺を止めてみやがれ!」
最初に壊したのはこの世界に来て初めて見たピラミッドダンジョンだった。
剣にホワイトダスト、フレイムキャノンとストームグラスト、アースシャフトを込めて一振りすると
ダンジョンは崩れ落ち、大きな穴が開いた。
オサムはフレイムナパームで岩を溶かしそのダンジョンを”無かったこと”にした。
同じように全てのダンジョンをそうするのに半年も掛からなかった。
そして大陸からモンスターは消えた。
しかし、オサムは自分からリムルやロレーヌ、クイード達を奪った神々を赦すつもりはなかった。
「俺はテメーらの盤上の駒だろうがな、好き勝手やらせてもらうぜ」
そう言ってグレートドラゴンで東の大陸に向かっている時
「テメーはなんだ、空に立ちやがって、神か?」と言って
相手が
「いかにも私は・・」という途中で切り捨てた。
「知るかよ、帰れ」と言って東の大陸に降り立った。
「よく発展してるな、この大陸にはダンジョンは無かったし・・・」
オサムは荒れ地に降りて少し考えていた。
「不老不死を望むやつは馬鹿だ。失うだけじゃねーか」
「俺を死なせろ!神々よ!見てるだけか!」
オサムは”死”だけを欲していた。不可能なことであろうとも。
「この世界を壊すぞ・・・」
本気ではなかったがオサムにはその力はある。
オサムは一度帝都の屋敷に戻り古い甲冑を取り出して着替えた。
そして誰にも知られないように荒れ地に行きナパームウォールを使い業火の道を作りその中を歩いた。
甲冑が溶け、異様な姿になっていた。
『スウェンなら俺を殺せるかもしれない』オサムはそう考え、帝都の外に降りた。
その手に持つのはスウェンも知らないはずの古い剣だ。
オサムは城塞の分厚い鉄の扉を簡単に切り裂き、中へ入った。
全身に炎を纏い街の中を城まで歩いて行く。
その時スウェンが現れた。
「何だお前は、悪魔か?」
しかしオサムは答えない。剣の一振りで広い道がかなり崩れた。
「何をする!」とスウェンは凄まじい攻撃をくわえてきた。
オサムは避けずそれらを全てその身で受け止めた。
「なんだと?」全力を込めた攻撃だったはずだ、スウェンは一撃でグレートドラゴンも倒せる。
その攻撃が全く通用しない。
オサムは立っているだけだった。目の前のスウェンが剣を振るとオサムが巨大な火柱に包まれた。
ぼやっとした空間に包まれてオサムは闇の中に居るようだった。初めての感覚だ。
遠くに火を噴く山があり、暗闇を真っ赤な溶岩が照らしている。
「地獄か?煉獄か?魔界か?なんでも良い。神の仕業か、下らん。」
オサムは歩き出した。
「デーモン・・・?」オサムの目の前に異形の生き物が並んでいた、いや、囲まれていた。
オサムはそれらを切り払った。
「弱い」一言呟いた。
次は巨大なグレートデーモンが数匹現れた。それも一撃で切った。
「何がしたいんだ?ここは何処だ?」
オサムは歩き続けた。
向かってくるもの全て切った。
「虚しい・・・」オサムはそこで何十万ものモンスターを斬っていった。
幾つかの見える城へ行くとサタン、ルシフェル、ベルゼブブが居た。
最強の魔族である。地上のダンジョンでは見たことがない。
オサムは「どうでもいい」と言いながらそれらと戦った。
数分もせず片付けた。
オサムは傷も受けたが、すぐに治癒した。
「死ねねぇよ」
剣を片手に近くの岩に座った。
モンスター達がまた現れたので立ち上がったが、敵意は無いようだ。
オサムは魔界を征服したようだった。
「今度は魔界の王かよ・・・興味がねぇよ・・・」
ルシファーを倒した時にマジックアイテムらしきものを手に入れたので使ってみることにした。
溶けた甲冑や剣も置き、城にローブが有ったためそれを着た。
マジックアイテムを使うとロムドール大陸に出た。
オサムの後ろには暗黒の穴が開いていた。
そこからぞろぞろと大量にモンスターが出てくる。数万ものモンスターだ。
「これは?」とローブを見たオサムは「俺がカオスキーパーだったのか?」
そう考えていると黒騎士が戦っていた。
ダークドラゴンも数十匹出てきた。
オサムは傍観していた。
そうしてる内に黒騎士、以前のオサムが自分を切ってきた。
血が流れ、オサムは暗闇へと引き戻された。
気がつくとオサムの斬られた後は治っており、魔界に倒れていた。
オサムはローブを着替え、またアイテムを使った。
空間に穴が空きロムドール大陸の何処かが見えていた。
オサムはその穴から出た。
モンスターがまた大量に暗闇の穴から現れた。
そしてまた黒騎士が現れ、モンスターを全て片付けた後
「いい加減にやめろ!」とオサムを剣で貫き、暗闇の穴へ押し戻した。
オサムは起き上がり、気がついた。
過去を見ることが出来る。またリムルやロレーヌ、クイード達に会える。
オサムはアイテムを使い続け、リムルを探した。
しかしローブを切られて顔を見せる訳にはいかない。
カオスキーパーは敵だったためだ。
誰にも見られないようにダンジョンの中で試したこともあった。
記憶では最初に見つけたグリーシアのダンジョンだ。
しかし昔のオサムが向かってきたためすぐに閉じた。
オサムは持ってきた短剣のスキル”シャドウ”を使うことにした。
これなら物理攻撃も魔法も効かない、実体のない影だからだ。
オサムは色々と見て回った。
オサムが居た。
クイーズも居た。
タキトスやハンビィ、クラウド達も。
懐かしい顔ぶれ。自分が彼らの敵であろうとモンスターは簡単に片付けるだろう。
その点に関しては憂慮していなかった。
時間と場所は大体でしか決められないようだ。
もう一度だけでいい、リムルやロレーヌの顔が見たい。
そう思って何度も何度も探した。
窓は不安定で、空中に開くこともある。
一度に見られる場所も1箇所だった。
違う場所を見ようとしたりモンスターが全滅してしまうと窓が閉じてしまう。
結局オサムはリムルやロレーヌを見つけることが出来なかった。
クイード達やオサム自身が窓を閉じてしまうのだ。
100回以上使っただろうか、
その内オサムは諦めた。
記憶を辿っても、カオスキーパーがリムルやロレーヌと会ったことはない。
クイード達の姿を見られただけでも十分だった。
だが、あの時代の世界を乱してしまう。あの幸せだった時を。
オサムは二度とそのアイテムを使わなかった。
また鎧を着て剣を背中に装備した。
「神々の一人か、では全能なんだな?」オサムは誰かに言うように話した。
魔界の出口をアークデーモンに教えさせた。このレベルのモンスターは知能が高い。
牙をカチカチ鳴らすだけなので言葉なのかどうかはわからないが、オサムは外へ出た。
オサムは甲冑を脱ぎ、剣だけを持ってグレイス帝都の屋敷へ帰った。
暫くの間その屋敷で過ごしていると、スウェンが来た。
「父上、城に攻め込もうとする者が居たのですが、突然消えました。」
「このことに何か心当たりは無いでしょうか?」
そう訊かれたが
「被害はないのか?皆無事か?」と訊き返し「ほぼ被害はありません」とスウェンは答えた。
「ならばよいではないか、夢のようなものだろう?」
オサムはそう言ってベッドに寝転んだ。
「俺はもう隠居している。世界は任せたぞ、スウェン」
オサムは寝てしまった。
自分自身にすら何も出来ないオサムはこの世界の記憶を消し去ることにした。
”忘却の香”というマジックアイテムだ。
オサムはまた誰もいない山の中で”忘却の香”を吸いながら記憶が消えていくのを感じていた。
殆どの出来事を忘れた時に自ら首を落とした。
これでこの世界のことを忘れて向こうの世界で秋葉オサムとして暮らせる。
オサムは起きた。いつものように。
「ん、なんか変な夢だったような。まぁいいや。」
オサムはプロジェクトが終了したため無職になっていた。
ほとんど外に出ず、遊びといえばオンラインゲーム。
たまにレンタルDVDを借りに行ったりマンガを買うくらいで
給料のほとんどは余っていた。
残業や休日出勤を繰り返してほとんど休んでいなかったので使う暇が無かったし
ファッションや外食にも興味がない。
食事会ではその容姿のため女性に興味は持たれるが、話題が偏っているので当然彼女が出来たためしもない。
まだ若いし貯金もかなりあるので1年程海外を回ろうと考えていた。
『バックパッカーで世界を回るのが良いなフランスならモテたりして?』とか考えていた。




