第25話 世界見物
流刑の島に行った時にクイードは異変を感じた。永年流刑の島である。
刑務官を置かずに開発させていたのだが、一種の王国化のような体制が作られていた。
実力者とその側近が他の流刑者に命令を下し、かなりの開発が進んでいた。
女性が居ないため人口は新規流刑者によって増えるだけだが、城塞都市が出来上がり住み良い土地に仕上がっていた。
早速オサムに報告したが、オサムは
「放っておけ」と言っただけだった。
「船を作ろうとしているなら別だが自分達で生活しているのなら構わん」という事だ。
オサムにとっては犯罪者のために銀貨1枚ですら本当は使いたくない。
最初こそある程度の用意はしたが、その後は放置していた。
上手くやって行けているのなら手も口も出さない。それがオサムの方針だ。
しかし、その話で思い出したことが有る。例の他の大陸のことだった。
オサムは思い立ったらすぐに行動する。
早速装備を整え、まずは南の大陸に飛んだ。
今回は1つ前の黒騎士装備と全く同じだが
色は白をベースに所々に金を取り入れた白い騎士装備にした。
暫く上空から眺めて人の住んでいそうな場所を探した後、北に降りた。
最速で周りたかったため今回はナイトメア、スレイプニル、ヒポグリフを試してみた。
ナイトメアは力強いが戦場向きである。
スレイプニルは飛ぶように走る。しかしヒポグリフは空も飛べ、ナイトメア以上の強さがある。
結局オサムはヒポグリフを使うことにした。
どこかに国らしきものは無いかと低空で見回っていくとジャングルの中に巨大な石造りの建築物があった。
「これは見逃してたな」と暫く旋回しその後建物の上に舞い降りて周りを見渡した。
その時、周囲から数百人の人々が現れ一斉に建物の上に居るオサムにひれ伏した。
金で全身を装飾した王か神官らしき者が居たのでオサムはその人物に近寄った。
「北より参ったが、この大陸にある国はここだけか?」と訊くと
「神の御使いよ、他に8つの国があります、我が国はそれらを束ねるミオの国です」
ひれ伏したままその男が答えた。
『神の御使い?俺が神聖視されているな、都合がいいっちゃあいいか』オサムは考えて
「ではすべての国に伝えよ、この土地の果てまで我が領土である、と」そう言うと
「元よりそうです。700年の歳月を超えてよくぞ来て下さいました。」
その男はまたオサムの聞き覚えのある”700年”という言葉を使った。
「そうか、無事国は繁栄しているようだな、また来る。その時まで国を頼んだぞ」
オサムはハッタリを使い、服従させてから空高く飛んでいった。
『多分また俺が700年過去に行くんだな?他の大陸も調べておこう』
とグレートドラゴンに乗り換えて次の大陸に行った。
そこは赤茶けた大地が中央にあり、木々が生い茂るのは海沿いだけだ。
オサムはヒポグリフに乗り換え海沿いを低空でゆっくりと飛んだ。
ここには貧相な集落が点在するだけだ。人口もさっきの大陸より少ないかもしれない。
一応各集落を歩いたが、いきなり槍が飛んできた。
オサムは避けることもなく鎧で弾き返したり、飛んで来る槍を手で受け止めたりしていると、長老らしき者が近寄ってきた。
「お前は何者だ?」と尋ねてくるので
「神々の守護者と呼ばれている」とオサムは答えた。
その人物はいきなり短剣を取り出し、甲冑のつなぎ目、関節部分を刺してきた。
ヒュージワイバーンの革で補強してあるためその程度は痛くも痒くもない
「失礼しました。700年前から伝わる聖なるナイフを受け付けない、伝説の神の化身ですな」と言ってひれ伏した。
それを見て回りの者もひれ伏した。しかしここでもまた”700年”という言葉が出た。
「他に民は?」オサムが尋ねると
「多く居ます。昔とは比較にならぬほど。私がその長となっております」と言われたので。
オサムは
「では来たことを伝えておいてくれ、また来る、と」
「それで、この土地は全て私が貰い受けるが良いな?」と言うと
「もちろんでございます、貴方様の土地です」長老が答えたので
「では頼んだ。他にも行く所があるのでな」オサムは飛び、そのまま次の大陸を目指した。」
『多分あの2つの大陸にはこの先何かしらで時間を越えて行くことになるのだろうな』
オサムは考えながら暫く飛び最後の大陸の最南端辺りに着いた。
この大陸は中央近くに山脈が続いている。さながら南米大陸である。
グレートドラゴンでは大きすぎるため、ヒポグリフの上昇限度で見下ろしていた。
「ここはかなり人が多そうだな。」しかし剣は使いたくない。
オサムは木を斬り倒し、丈夫で長い棍棒のようなものを短剣で作った。
「まずはゆっくり見ていくか」と集落を見つけて近づいていった。
途端に数十人の簡素な鎧を着た兵士らしき者達が出てきて防御柵越しに矢を放ってきた。
オサムは気にせず、棍にエンチャンテッドストーンの魔法を掛けて防御柵を叩き崩した。
数十メルトの防御柵が吹き飛んだ。そのまま集落へ入り。
「長は居るか?」と聞いて集落のすぐ内側に立って待っていた。
「屈強そうな男が出てきて、我が城に何か用か?」と威嚇してきた。
オサムは
「そうだ、用がある。お前はこの辺りで何番目に強い?」オサムが尋ねると
その男は
「数百人の兵が居る、この辺りでは俺に敵う者は居らん」睨みながら言ってきた。
オサムは
「そうか、では俺と戦え。何人が相手でも構わん」と棍を向けた。
男の合図で200人ほどの兵が出てきた。石斧を持つ者が多い。
エンチャンテッドストーンで強化した棍を使い、ものの5分で全員を蹴散らした。
しかし大した怪我人は出していない。
「そら、お前の番だ」とオサムは言いゆっくり歩いていった。
男は「何が目的だ?近くの国に雇われたか?」と訊いてきたが
「お前に全ての近隣の国を取ってもらう。お前の力を知りたいだけだ」と答えた。
「それだけか?お前は何者だ?」と言われて
「神々の守護者」と答えた。
「なるほど、では俺は選ばれたのか?」とまた訊ねてきた
「そうだな、で名は?」オサムが訊くと
「ヤモマニだ」と答えた。
「では戦闘の準備をせよ、近隣の国を平らげる。ただし、兵士は見せるだけだ、戦うな」
オサム一人で戦うつもりだった。
早速ヤモマニは準備を整え、周囲に点在する数百人単位の集落にオサムを連れて行った。
そしてオサムは何も言わずに出来るだけ力を入れずに各集落をヤモマニの支配下に入れていった。
「これでお前はこの周辺全ての王だ。他にも国があるなら平定しておくように」
オサムはそう言ってヒポグリフで北へ向かった。
しかしロムドール大陸を離れて1ヶ月が経とうとしていた。
一旦城に戻り、執務室で今回のすべての事柄をまとめ上げた。
そして1ヶ月後にまた最後の大陸に行った。
大陸中央には砂漠地帯が横たわり、徒歩なら山を越えて西側の海沿いを迂回するしか無い。
砂漠の北側に出ると、かなりの規模の王国があった。
周辺をまとめ上げ、グレーシア帝国程度の領土を持つようだ。
此処は後回しにしようとオサムは更に北に向かった。
小都市がかなり多くあり、1つの都市が1つの国家のようである。
オサムはその一つ一つを武力で制圧していった。しかし死者は出していない。
とうとう北の果てまで辿り着いたため、中央にあった王国へ向かった。
『これはある程度叩いとかないとダメかなぁ』と考えて、1番大きな都市の門を殴り壊した。
そしてそのまま少し歩いて待っていると、兵が集まってきた。
オサムはその全員を棍によるウィンドショックで吹き飛ばした。
そのまま1番大きな建物に歩いていくと、また兵士が集まってきたが同じように撃退した。
手も足も出ないとわかったのだろう。王らしき者が100人程度の兵を連れて王宮の庭に出てきた。
「敵意はないが、実力を見せに来た」オサムが言うと
「私はこの国の王だ。兵の死者は出ておらぬようだが、何をしにきた?」と言われた。
「東の大陸より、我が帝国の力を示しに。」と言うと
「この土地以外に陸地があるというのか!?」王は驚いたようだった。
「ここ以外にあと3つ、同じような陸地がある、私はその3つの帝王だ」
オサムは続けて
「この土地も貰い受けたい。支配はそなたに任せる」と言った。
そして
「この国の南と北全ては私のものとなった。あとはそなたの国だけだ」
「戦うか?そなたが望むならそれでも良いが」
とオサムが言うと
「全兵士を集めろ、此奴を殺せ!」と命令を下した。
オサムは城壁まで下がり、広い庭を前に暫く待っていた。
5千人程がオサムの前に集まった。
『殺したくないが』と考えたが、背中の剣を抜き
「セイバースラッシュ!」一瞬で全員が倒れた。
オサムはもう一度王に詰め寄った。
「まだ兵を死なせるか?私は神の使者と呼ばれているが、それでも歯向かうか?」
王を脅した。
「わかった、歯向かわぬ。この国を差し出そう。」王は肩を落としてそう言ったので。
「国を貰おうとは考えていない。お前は王のままで良い。我が帝国の家臣となれ」
オサムは真意を伝えた。
「それならばあなたの帝国の家臣となりましょう。戦えば国が滅びる」
オサムはその言葉を聞くと
「そうか、では引き続きこの国を支配せよ、ただし私の命令は聞け、それだけで良い」
そう言い残してオサムは敢えてグレートドラゴンを呼び出し飛んで帰っていった。
帰った時にビーツに「誰でも使えるが刃こぼれもせず錆びずなんでも切れる短剣を頼む。デザインは」
そう言って思い出しながらサラサラと書き「これで頼む」と言って城へ帰っていった。
『あの短剣は恐らく俺が渡すのだろう』とオサムは考え、常に携帯しようと考えた。
これでロムドール大陸以外の大陸は全て制覇したことになる。
オサムはその後も定期的に各大陸を回り、支配を確実なものに変えていった。




