第21話 西方国家の戦乱
城に帰り着くとすぐにオサムはグリオン王の所へ飛び、ライツェン南の領地交換を申し出た。
グリオン王は必要なだけの領土をグレイスに割譲することに同意した。
オサムは謝意を示し、早速レギオーラとグリオン、ライツェンの新領地の整備を行いだした。
城塞都市と道路網を中心に工事を進めた。
古い砦や森林だった場所に最新の大きな城塞都市を3箇所作ることとし、ライツェンまで舗装路をつなぐ。
オサムの築く城塞都市は帝都に倣い、広大な敷地を持つ城と計画的に作られた街となるはずだ。
城壁も城門も頑丈に作られ、100万人は住める都市が作られるだろう。
これにはクイード達の領地も含まれたが、献上という形でオサムの持つ領地となった。
「これで実質的にライツェンとの往来は安全だな。」オサムは少し考え
各国に点在するグレイスに関わる領土を出来るだけまとめようと地図を見た。
「ムルトワとレーラリア、デレル、ウィンディア、ジェイド、トムル、コスティカ、スロヴィア
クイント、ゴータス、アスタ、スワン、サトルリア、カトル、ルマリア、ミスリル大公国・・・無理だな」
オサムは諦めた。
幸い他国にある領地の城塞はそれほど手をかけていない。
手を引くか、いや、住民が居るしな。と考えて、結局放っておくことにした。
出来上がっているものをむやみに壊さずとも良い。
そしてまた大規模な戦が起きた。
大陸西側、山脈の北にあるゴータス王国とアスタ王国が全面対決することになった。
国力が拮抗するこの2つの国家は以前から敵対している。
山脈の盆地にあるサイス王国とチャスコ王国、どちらも小国だが、その2国の王位継承権をめぐる戦だった。
長年に渡る戦のため、ゴータスやアスタに領地を持つオサムやクイード、タキトス、ハンビィは困っていた。
小さな領地に続々と人々が流れ込んでくるのだ。これ以上は迎え入れられない。
クラウド達を残して4人はゴータスとアスタに飛んだ。
様子を見ているだけだが、今回は以前までのような数千人単位ではなく十数万人の決戦のようだった。
戦力は拮抗していると言えども、ゴータスの兵は精強である。
アスタ王国は7カ国に囲まれており、全ての兵をゴータスとの戦には使えない。
特に西側はクイント王国、スワン王国、サトルリア王国といういずれも強国に囲まれている。
ゴータス王国との戦端が開かれた時、呼応するかのようにこの3国も兵を動かした。
アスタ王国は4カ国と戦わねばならない状況に追い込まれたが、ゴータスが1番の強敵だ。
じわじわと攻め込まれるアスタ王国の王はクイードやタキトスの領地へ応援要請を届けたが
傍観するだけである。
兵士と共に逃げ込もうとして来たため追い払った。
アスタ王国は領土を削り取られ、じわじわと侵略された。
グレイス帝国の各人が持つ領地に大量の難民が流入してきたため、オサムはゴータス王国及びアスタ王国へ行き
「てめぇらの国なんかどうなろうが知ったこっちゃねえ、早く終わらせねぇなら両国ともぶっ潰すぞ」
と脅した。
結果、ゴータス王国はムルトワへの抑えとしていた約10万人を西側へ投入し、アスタ王国は滅んだ。
事前にオサムがグレイス皇帝として6カ国の王に会い
「非戦闘員に被害が出るなら俺が王やお前達の兵を皆殺しにする。」と伝えていたが、それでも被害は出た。
ゴータスは勝利したが、ムルトワ王国軍により東側の領土を王都近くまで失った。
ムルトワ王国は民衆には一切手出しせず抵抗する城塞都市は通り過ぎ王都へと兵を進めた。
アスタ王国に攻め込んだ他の3国は若干の領土を得て引き返した。
そしてオサムは今回の戦乱により民衆が苦しんだことに対しての怒りを伝えるために
ゴータス王国、クイント王国、スワン王国、サトルリア王国がモンスターに襲われても放置する。
と各国の王、兵士、民衆に告げた。
各国国王はうろたえ、どうにか止めようとしたが無駄だった。
オサムは今回の戦争で少なからず民衆に犠牲が出たことを知っていたため激怒していた。
その結果ムルトワ王国が獲得した領土の城塞都市は全てムルトワ王国へ抵抗なく加わり、
ゴータス王国からはムルトワ王国、サイス王国やチェスコ王国、ウィンディア王国へ民衆や兵の多くが逃げ出した。
同じようにクイント王国やスワン王国、サトルリア王国からも多くの兵や民衆が周辺の国家へ逃げた。
オサム達は逃げ延びる者達を守りながら他国へ連れて行った。
ゴータスやクイント、スワン、サトルリアの人口は激減していった。
そして、それに呼応するかのようにオサムが見捨てた4国の城塞都市や王都がモンスターの大群に襲われた。
しかし、オサムは8人に「放っておけ、自領と民衆だけ守れ」と言い、4国の比較的レベルの高い騎士や剣士は全滅した。
「強いと言っても騎士やパラディンの50台だろ?剣士も50から70、まず無理だな。」
オサムはそう言って自分達に与えられた領地と民衆だけを守った。
4国は民に逃げられ、兵を失い、荒廃した。それでもオサムは放置した。
各国の王はオサムの赦しを乞うために国中の宝物を送ってきたが、送り返した。
グレイス帝国ではその程度の物は宝物ですら無い。
さらに王達は直接帝都に来てグランチューナーとしての役割を伏して望んだがオサムは無視した。
とうとうゴータス、クイント、スワン、サトルリアの4カ国はグレイス帝国に国を譲渡した。
最初は属国という条件を出してきたがオサムは断り続け、その間にも続々と人口が減り続ける。
もはや国家として成り立たない状態にまで追い込まれた時、王達は国を諦らめた。
オサムは各王達に小さな子爵領と屋敷を与え、全て旧ゴータスのムルトワ国境に置いた。
そしてゴータス、クイント、スワン、サトルリアを手に入れた。
激減した人口は4国がグレイス帝国領となった途端に増え始めた。
オサムはまた領土内に道路網を張り巡らし、城塞都市を整理することにした。
国境警護のための城塞や要塞は不要なので取り払い、地図を見ながら都市の場所を決め直す。
土木工事や建造、建設工事のために大量の労働者が必要だったが、
元の住民達や兵達が帰って来たため、労働者が足りなくなることはなかった。
約3年でオサムの計画通りの領土に変わるだろう。
クイードが
「これで大陸からほぼ戦はなくなりますな、陛下の思った通りです」
そう言ったが
「違う、これは民の事を考えて居るわけではなく恐怖に過ぎない。恐怖で行われた支配はいずれ瓦解する」
「ともあれ、戦が無くなるのは良いことだ。戦で夫や息子、父を失う民も居なくなる」
オサムはとりあえずの結果には満足していた。
この件で各国の王達は恐怖した。
グレイス帝国に攻められれば滅びる。それはわかっていたが、
グレイス帝国に見放されただけでも国が滅びることを知った。
民衆に少しでも被害が出ればグレイス帝国から見放される。
戦争どころか小競り合いや増税すら出来ず、力を使うことを自ら封印し出した。
全ては話し合いで片付けよう。もしくは属国に。
ライツェンとレギオーラは別格だった。ムルトワとレーラリアも分かっていた。
その他の10カ国が態度を変えることになった。
トムル王国やデレル王国などは属国の話を持ってきたが、レギオーラが間にあるためオサムは断った。
「今のまま穏やかな国政を続ければモンスターから守る」と確約して安心させた。
旧クイント、ゴータス、スワン、サトルリアの地域を合わせるとグリーシア帝国に匹敵する。
西グレイス帝国とし、オサムが皇帝となった。
そしてオサムはまた8人に西グレイス帝国のダンジョン調査を命じた。
数ヶ月掛けたゆっくりとした調査は終わり、地図に書き込み、今までのように詳細をノートに書きとどめた。
ロレーヌがそろそろ出産する時期でもあった。
そわそわと落ち着かないオサムを見てロレーヌは
「陛下、焦っても早くは産まれませんよ」と笑ったが
「毎回こうなる、自分でも抑えられないから良いよ」
とロレーヌに言うと
「ダンジョンや戦場では無敵の陛下でも焦ることがあるのですね」
ロレーヌに笑われた。
いよいよ出産という時になると、またオサムはグランパープルへ飛び、守護者と会った。
名と贈り物を貰い、何か言われると思っていたが、先のゴータスとアスタ両王国の事は何も言われなかった。
ロレーヌは今回も安産で男児を産んだ。
名をもらった時には分かっていたが安堵した。
ゼイノン・オルトール・グレイス、それが今回の子の名前だった。
「4人の子持ちか、大家族だなぁ」オサムが言うと
「各国の王達はもっと多いですよ?」ロレーヌは答えたが
「そんな多く要らないよ、けどまだ増えるだろうなぁ」オサムは子供達を見ながらそう言った。




