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終わったならまた始めればいいじゃないか  作者: 朝倉新五郎
平和への道程
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第20話 ライツェンとレギオーラ

 ある日の夜、オサムは寝付けないため深夜に書斎へ足を運んだ。

 エターナルライトを隠すための分厚いシェイドを外して一冊の本を読み出した。


 それは蒸気機関とガソリンやディーゼルエンジンについての本だった。

 一度読んでいたが、蒸気機関以外はオサムにとって難しいものだったためじっくりとは読んでいない。


 オサムは船を作る準備をしていた。

 南を大きく周り、ルアムールとの交易に使おうとしていた。

 船体は魔法で処理された分厚い鉄板で作ってある。全長250メルトの巨大な双胴輸送船である。


 船は出来たが、肝心のエンジンや燃料が難しい。

 オサムは実験的に石油精製プラントを作っており、

 1日10キロリットルのガソリンや軽油、灯油、重油等を作っていた。

 ガスは要らないので全て燃やしていた。


 重油と灯油は城や屋敷の風呂や公衆浴場で使っている。

 火の魔法士や薪や石炭での手間を省くためだが、増産の必要は無いようだった。


 エンジンは設計図を見ながら部品を作成してみたが今の技術ではかなり難しく、すぐに故障する。

 しかし、蒸気機関はかなり大きなものまで作れるようになっていた。


 外輪船ではなくスクリューの船である。就航の時期を待っている段階だ。

 オサムの世界の技術と魔法で作り上げたのでかなり良く出来ている。


 「まだ早いな。海図もないし。」と言い、オサムは本を閉じた。


 シェイドをかぶせ、薄明かりにしてから書斎を出てベッドに入った。



 次の朝、クラウド、アンカール、ギルビィ、レオン、ジンが執務室に揃ってやってきた。

 「どうした?」とオサムが訊くと

 「我々の妻ですが、全員決めました。レオンとジンが決めるまで待ってたので時間が掛かりましたが」

 クラウド達の話では

 クラウドとギルビィは侍女、アンカールはエスカニアの子爵令嬢、レオンはグリオンの騎士、ジンは町娘とのことだった。


 「お前達にも色々と飛んでもらっているからな、見つかったなら良い。」

 「いつ祝福の儀式を行うかは俺の一存でいいな?いつでもいいので連れてこい」とオサムは取り仕切った。


 3ヶ月後、5人の儀式を行った。

 また各国から使者や国王が来たが、慣れているためオサムは煩わされることもなく宴は終わった。


 夜になり、部屋へ帰ると

 「混乱もなく上々の儀式だったな」寝間着に着替え、リムルとロレーヌに話した。

 「そうですね、何度目かになるので全てうまく行きました」

 ロレーヌはまた身籠っていたが、わかったばかりだったので出席していた。

 リムルはもう歩き出したスウェンとミシュルの面倒を見ていたが、殆ど侍女がやっていたため疲れはない。


 今回はグレイス王国建国の日ではなく、グレイス帝国発表の日にした。


 穏やかな平和の中で子どもたちは育ち、オサムは幸せであった。

 もちろんリムルやロレーヌもそうだろう。


 グレイス帝国は安定しており、民達は幸せだった。



 しかし、先のグリーシアの内乱のように突発的な戦が起きるかもしれない。

 事実パルトス王国がグリーシアに攻め込んだが、逆に敗れた末グリーシアに取り込まれた。

 大河の西に残る脅威はタウール王国とミトワ帝国が分裂した南北ミトワ王国だけである。

 その先には大河と山に囲まれた大国ムールラントがある。しかしムールラントの東はルアムール王国、ジャグアの国だ。


 レギオーラ、グレイス、グリーシアの南方には大小様々な島が点在し、

 その向こうにもちょっとした大陸があることは知っていたが、まだ未開の土地といっても良い状態だ。

 放っておいても良いだろう。そうオサムは考えていた。ロムドール大陸だけで十分だった。



 大陸の西側でも小さな動きがあった。

 レギオーラ国王の第一王位継承権を持つオトラ姫がライツェン王国ネシュア皇太子に嫁いだ。

 これは将来レギオーラとライツェンが一つの国となることを意味する。


 オサム達も久しぶりにライツェンに向かった。

 ロレーヌは身重だがミシュルを連れて行くこととなった。


 飛んでいけばすぐだが、同行する侍女、侍従、召使い等人数や荷物がかなり多いため陸路を馬車で進んだ。

 遠回りになるが舗装路が整っているためグリオン側から入った。

 しかし重量のあるもの、例えば鉄などはグレートドラゴンで運び済みだった。


 時間には余裕があるので、ロレーヌとミシュルをマンセル子爵に預け、自身はフルグリフ侯爵の城で休んだ。

 束の間であったがオサムにとっては懐かしく楽しいひとときを過ごした。


 2日滞在し、次はクラッセ公爵領に入った。ここも舗装されており、隣のエリトール子爵領と繋げている。

 そこでも1日滞在しライツェン王国の城に入った。


 オサムは早速ライツェン王に会った

 「これはグレイス皇帝陛下、よくいらっしゃって下さいました。」

 王がすぐに執務室を出て自室のリビングにオサムを連れて行った。

 「お忙しい中ありがとうございます。」王に言われて、オサムは相談を持ちかけた。


 「陛下から賜っているクラッセ公爵領とエリトール子爵領をグリオン、レギオーラの近くに転地出来ないでしょうか?」

 「飛び地が多すぎて管理が行き届きませぬゆえのお願いですが。」


 王はしばらく考えて

 「そうですな、フルグリフ侯爵領とその南の土地との交換ということでいかがでしょう?

  エリトール子爵領はクラッセ公爵領に組み入れて。皇帝陛下の家臣の方の領地も1箇所にまとめましょう」

 王の提案に

 「それは助かります。もうグリオンはライツェン国に攻め入る事はありませんので。」

 オサムは答えた。


 「それはそうですな、グレイス帝国は戦を仕掛けぬ国、皇帝陛下が戦嫌いですからのぅ」

 「我が国もレギオーラとは繋がりますゆえ、ムルトワ、レーラリアに戦力を集められます。」

 王に許諾されたことでライツェンに持つ領土がグリオンと接する土地となった。


 更にレギオーラ国王とも相談し、グレイスとライツェンの間へ領地替えしてもらった。

 これによりグレイスの真北が埋まり、ライツェン国とスムーズに行き来出来る様になった。

 「他国にある領土はそのままでいいか」オサムは急がなくても良いと考えた。


 

 そして豪華な式典が始まった。流石に国家同士の婚姻である。

 ライツェン国中の貴族が集まり、他国からの使者や国王の数も多い。

 ただし、西側は防備しておかなくてはならないため、その諸侯達は来ていなかった。


 1週間の間祝宴は続いた。元来このようなことの苦手なオサムはまたテラスに出ていた。

 クリューズに頼むわけにもいかないので、最も真面目なハンビィに相手をさせていた。


 帝都から近いためオサム以下公爵3人伯爵5人、その夫人と子供全てが来ていた。


 それぞれは儀礼用の服で腰にはレイピアだが、全てが装備レベルロードナイト80~95であった。

 つまりはレイピアで城を叩き切れる。


 クイード達もクラウド達も既に正室を持っているため、それらの話題は出なかったが他の事を訊かれていた。

 

 皆はバルコニーにテーブルと椅子を持ち出し一人で飲食をしているオサムを見つけてやって来た。

 「陛下、このようなところではなく各国の王と話をしたほうが良いのでは?」

 クイードは言うが、もう既に簡単に済ませてあった。


 特にムルトワ国王とレーラリア国王とは

 「ライツェンは大恩のある国ゆえ戦の際にはグレイスはライツェンを援護します」

 これだけで2国の王はライツェンにもレギオーラにも手出しはできなくなった。

 ライツェン王は既に戦を仕掛けることはなくなっていたのでライツェンが戦火に巻き込まれることはない。


 各国から祝いの品が届けられたが、やはり驚かれたのはグレイスの物だった。

 鉄は重量にして100万トン。1国で使い切れる量では無い。


 それに宝石の散りばめられた王冠や王笏にティアラ、

 しかもシルバードラゴンやゴールドドラゴンの角と鱗で作っている。

 他にもプラチナで作った豪華な腕輪や黄金と宝石で作ったアクセサリー等も贈った。

 各国国王は驚きを隠さず「グレイス皇帝はやはり違う」と言われた。


 こういう場では時としてハプニングが起きることもある。

 敵対する王同士も集まってくるため少しのきっかけで争いが始まる


 ムルトワの向こう、ゴータス国王とその西のアスタ国王がいざこざを起こしそうになっていた。

 バルコニーからそれを見ていたオサムは素早く2人の間に入り

 「めでたい席ではお互いお国のことは忘れて楽しまれては?」

 オサムはにこやかだったが言葉は威圧的だった。


 それでその場は治まったが

 「困るよね、こんな時に」リムルとロレーヌが座っているところに行ってボヤいた。

 「陛下は言葉だけで争いを止められますからね」ロレーヌが言い、リムルは笑っていた。


 3日間続いた宴が終わり全員が帰路に付いた。

 護衛は居るがハンビィとジン、それにオサムが帝国仕様の豪華な馬車に乗り、他の6人は先に帰らせた。

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