第16話 南の騎士
グレイス帝国の9人のインペリアルセイヴァー達は誰かが冒険に行っている時でも常に7人は待機している。
オサムは国務があるためあまり城を留守にすることは無くなったが、それでも月に数回は行っていた。
しかし、必要なアイテムがある時にはクイード達が順に集めてきていた。
拡張に次ぐ拡張で当初の3倍にもなった城や10倍になった城の敷地には
オサムの城、公爵家屋敷が3邸、伯爵家屋敷が5邸、
その他巨大な迎賓館や元々有った迎賓館、それにオサム自身の豪壮な屋敷が並び立つ。
小高い丘だが、城門以外に直接敷地と繋げるようにとオサムが考えて実験的にだが
鉄筋コンクリートの高層ビルと鉄骨の高層ビルを敷地の左右に作って最上階を敷地と繋げていた。
クライアンが開発した魔法処理をすれば錆びない鉄が作り出せるのを知り、オサムは楽しんでいた。
エレベーターも試してみたが、長期間の可動は魔法では無理なため諦めた。
その代わりマジックアイテムでクライアンが作り上げた装置を設置した。
クライアンは研究が楽しくてしようがないらしい。
弟子たちに一般のマジックアイテムを制作させ、自身は研究に没頭していた。
ビーツはと言うと、これもまた次の装備は?と訊いてくる。
オサムはかなりの数の装備を次々に発注していった。
オサムは2人を呼んではクイード達が置いていくアイテムを整理させていた。
レアドロップもまた膨大な数がある。仕分けが必要だった。
そんな時にロウからの連絡が届いた。
南にある小国群が1つの大国にまとめられ、近々戦がありそうだ、という内容であった。
オサムはすぐにギルビィを向かわせ、情報を集めさせた。
「決してこちらからは手を出すな」と伝えて。
しかし40万人規模の軍勢が用意されているとギルビィから使いが来た。
まだ敵対してくるかどうかはわからないため引き続き監視をさせることにした。
「北を目指して向かってきている」と連絡が入った時に
オサムを筆頭にタキトスとレオン、ジンを連れて副都に向かった。
どうやら帝国の南方を侵略しようとしているようだ。
ロウはオサムが来たことで安心した様だった。
「まだ領土に侵入はされていませんが、南を全て平らげた者の国です」
そう言って地図を見せた。
「この辺りを全て平定したようです、西には大河があるため恐らくこちらに来るでしょう」
ロウの説明を聞き
「では戦になるな、国境で全滅させて都も落としておくか」
オサムは簡単に言ってのけたが。
「そうですね、40万程度なら30分も掛かりません」タキトスが同意した。
オサムは
「丁度良い機会だ、こちらの兵達にも我々の戦いを見せたい。正規兵はどのくらい居る」
ロウに尋ねると
「現在は50万程に減らしてます」と答えた
「では25万程を南に進軍させてくれ、確か城塞都市が2つ3つ有っただけだな?」
オサムが確認すると
「そうです、あとは小さな町や村くらいです」とロウは答えた。
「ではその南の平原で迎え撃つことにする。兵達は俺の後ろに控えさせておけ」
そう言ってロウに準備させた。
「よし、ではタキトスと俺2人で相手をしよう。ギルビィ、レオン、ジン、今回は見るだけにしておけ」
オサムは3人に確認した。
「わかりました。我々はまだ戦を知らないので戦い方を見させていただきます」
ギルビィは言った。
遥か上空からオサムとタキトスが見る限り北上してくるようだった。
『このままだと国境を超えてくるな』オサムは考えて一旦戦場となるであろう平原に降りた。
「タキトス、この平原が主戦場になると思う、後方に兵が来るまで待って戦闘開始としようか。」
そう言ってギルビィ、レオン、ジンに警戒させていた。
1週間程でグレイス帝国軍騎兵25万が完全武装で現れた。
「ロウか、ご苦労。山の地形や敵の進軍ルートから考えて恐らくここが戦場になると思う」
オサムがロウに言い「後方で待機させておけ、見せるだけで良いが戦の緊張感は持たせておけ」
そう命令した。
「ギルビィ、様子はどうだった?」オサムが進軍状況を尋ねると。
「山を超えながらここへ向かって居ます。恐らく二日後。私の計算ですが」ギルビィは答えた。
「もしかすると海側から船で来ている部隊もあるかもしれん、確認して敵なら連絡を。」
オサムが指示するとすぐにギルビィは飛んでいった。
ギルビィが帰ってくると
「陛下の言うとおり海から進軍してくる部隊がありました。100隻程です。」
と報告した。
「なるほどな。タキトス、3時間程で戻る。タキトス以外は俺について来い」
オサムはそう言って3人を連れて飛んだ。
しばらく飛び
「あれか」と言うと「全員付いてこい!焼き払うぞ!見ておけ!」と言ってオサムは降下していった。
突然の巨大なドラゴンの襲来に船上はパニックになっていた。
矢を射かけてきたが、グレートドラゴンの鱗は通せない。
オサムはドラゴンのブレスで数隻炎上させた。
「ギルビィ!レオン!ジン!全て焼き払え!」オサムが叫ぶと
一斉にブレスで海上の船を焼き払っていった。
「これが戦というものだ!人を殺す恐ろしさを覚えておけ!奴らにも家族が居る!」
「しかし!やらねばならん時がある!それが今だ!」オサムは叫んだ。
10分も掛からずすべての船が焼け沈んだ。
「戻るぞ!」とオサムが平原に戻っていった。
4人はタキトスとロウの横に降りた。
「船を焼いてきた。」とタキトスとロウに言い。
「戦とは恐ろしいだろう?奴らにも大切な人間が居る。しかし敵は叩かねばならん」
オサムが3人に言った。
「わかりました、これが戦ですね。陛下が戦を嫌う理由が分かった気がします」
ギルビィが答えた。
「そうか、ではお前達も今回の戦闘に加われ、嫌なら後方で見ていて構わん」
オサムは3人を試した。
「いえ、やります!」と3人は答えた。
「まずは俺とタキトスが先に攻撃する、お前達もナイトメアに乗って付いてこい」
「本物の戦を教えてやる」オサムは不安を感じていたが、いざとなればタキトスと2人で十分ではある。
モンスターとの戦闘と人間との戦の違いを知って欲しかった。
そこから2日目の昼頃、敵軍が現れだした。
完全武装の25万人を見て相手は陣形を整えているようだった。
「始まるぞ。ここは5人で殲滅する、ロウの兵達は見ているだけでいい。旗を立てろ」
そう言うとロウは命令を下し旗を立てさせた。
5人はゆっくりと距離を詰めた。
突然銅羅が叩かれる音が聞こえ、最前列が突進してきた。
オサムとタキトスはスキルや付加スキルを使って数百数千の敵を次々と切り裂いていく。
後に続く3人は2人が斬りもらした敵を薙ぎ払っていった。
5人は互いに距離を開けながら敵本陣へ苦もなく近づいていく。
一振りで1000人単位が吹き飛んでいく。
「フレイムスパーク!セイヴァースラッシュ!」オサムが縦一閃巨大な火柱の斬撃を放った。
敵軍は真っ二つに割れ、なおも向かってくる。
ほぼ全てを片付けるまでやはり30分程度だった。
残ったのは数百人。しかしオサムが
「大将は誰だ!」と聞き
「俺だ!」と聞くとそいつを残して全てを斬り伏せた。
オサムは大将だと言う者を引きずりながらロウ達のところに戻ってきた。
「お前が南の国を平定したのか?」と聞くと
「そうだ、お前達はバケモノか!?帝国の剣よ」と言われて見ていると
”ロードナイトLv50”と見えた。
「相当鍛えたようだが、俺達に勝てると思うか?」
オサムが見下ろすと
「無理だ、俺は自分を無敵だと思っていたが・・・」敵の大将は震えていた。
「名はなんという?」
オサムが問うと
「ジャグア・ドン・グエン」と答えた。
「そうか、俺はアキバ・オサム・グレイス。この帝国の皇帝だ。」
そう言ってからジャグアを睨みつけ
「お前の国を帝国にもらうぞ?」と言った。
ジャグアは
「まだ平定したばかりの国だ、お前には統治できんぞ」と言った。
「俺は、お前の国をもらうと言った。統治はお前がすればいい。属国となれ」
オサムは言葉で遊んだ。
「ロウ!」とオサムは呼び
「このジャグア・ドン・グエンと申す者の国を属国とする、このあたりの城塞全てに監視を置け」
そう命令した。
そしてまたジャグアに向かって
「次は無いぞ?殺す」と脅した。
「戦など仕掛けられるわけがなかろう、こんな国に」ジャグアが恐怖を露わにしたので
「分かればいい」と言ってタキトスにジャグアを「見張ってろ」と渡した。
「ロウ、兵達はしっかり見ていたか?俺達の戦いを」と訊くと
「全て見せました。今頃は恐怖しているでしょう、陛下。」と答えた。
「ならば良い。これを見せておきたかったのでな」オサムはゆっくりと話した
ロウは背筋に冷たい汗を感じていた。
「ではジャグアよ、お前を国に戻す、しっかりと統治せよ」とジャグアに言い
「タキトス、お前達はこれが終われば帰っていいぞ、あとは俺の仕事だ」そう言って帰らせることにした。
そして兵達の方を向き
「グレイス帝国の兵士達よ!安心せよ!お前達誰一人とて傷つけはさせん!」
と叫び、ロウに
「では帰り支度を」と言って兵たちのところに向かわせた。
「では行くか、ジャグア」グレートドラゴンを呼び出し、ジャグアを掴ませた。
オサムはそのまま飛び立っていき、都と思われる大きな街の中央付近の広場にジャグアを置いて自分は飛び降りた。
「ここがお前の都で合っているか?」と訊くと
「そうです、あれが居城です」と震える指で大きな建物を指差した。
オサムは
「もう攻め込んでくるな、さもなければこの国を完全に滅ぼす、お前も斬る。」
そう脅してから
「グレイス帝国の属国の件は誓えるか?」と畳み掛けた。
「わかりました陛下。もう逆らおうとは考えられません」
ジャグアは硬直したまま小刻みに揺れ、そう言った。
「では、統治は任せる。また来るぞ」
オサムはそう言い残してグレートドラゴンで帰った。




