第2話 ロレーヌ・マンセル
平和な日々が続く中、オサムはいつものようにゴロゴロとベッドに転んでいた。
リムルが
「陛下は自由ですね」と言ってオサムのベッドに腰掛けた。
「うん、けどその分ハロルドや事務官、家臣たちが苦労してるだろうけどね」
と笑った
「あの方たちはエリトール様のお屋敷の時からの方々ですから、わかってくれておりますよ」
リムルは微笑んだ。
「リムルはもう公爵なんだから普通に話して良いんだよ?未だにハロルドにもハロルド様って言ってるよね?」
オサムがそう言うと
「侍女の時の言葉遣いが抜けきらなくて、でも初めてお会いした時から2年ですか、
私はあの日から自分を変えたくないのかもしれません。陛下の寵愛を失うのが怖いのでしょうか?」
瞬時にオサムが
「そんなこと絶対に無いから、だからリムルを正室にしたし、側室も娶らないでしょ?」
オサムにはリムル以外に心を動かされる女性が居なかった。
ロレーヌやライツェン王の城で出会ったミーシャ、城の騎士ファシリアは美しいが、リムル以上の存在では決して無い。リムルが居ればそれでよかった。
そんな時に部屋がノックされた。
リムルが応対に出るとロレーヌとクリューズだった。
「陛下、ご無礼をお許し下さい。」
そう言って2人は深々と頭を下げた。
「ロレーヌ様とクリューズ様、お久しぶりです」
リムルが言うと
「王妃陛下、そのようにお呼びなさらないで下さい」
ロレーヌが言ったが
「私は今でも気持ちは侍女のリムルですから、お二人共リムルとお呼び下さいね」
そうリムルに言われた2人は困ってしまった。
「いいよいいよ、2人には世話になったし、俺のこともオサムで良いからね」
とオサムも2人を困らせた。
「そうは言われましても、グランパープル聖国と並ぶ聖なる国の国王様ですし」
「ペガサスも頂き、自由に来ることが出来るようになりましたが、ライツェン国王陛下でさえ膝をつくお方に対して・・・」
2人がそう言うと
「陛下かー、あのときは俺もどうしたら良いか混乱したよ」
「でもまぁほら、それはいいじゃん?何かの用で来たんでしょ?」
オサムは軽く流した。
「本日は私用なのですが」ロレーヌがリムルをちらりと見て
「私を陛下の側室にして頂けませんでしょうか?」
とロレーヌが言った
「まぁ、どうかなされましたのですか?ロレーヌ様」
とリムルが言うと
「はい、縁談を持ちかけられておりまして・・・形だけでも陛下の側室にしていただければ断れるかと思い」
ロレーヌは膝をついて
「お願い出来ませんでしょうか?もちろん側室として立派に務めさせていただきますが」
そう言われてオサムは
「でも俺にはリムルが居るし・・・」
言いかけた時にリムルが
「良いではありませんか陛下、私にはまだ子が出来ませんし、ロレーヌ様にはお世話になりましたでしょ?」
『いいのか!?嫉妬心とか無いのかなこの子には、身分の事を気にしてる様子もないし』
オサムは考えて
「俺なんかよりもっと良い人が居ると思うよ?ほんとに俺でいいの?」
とロレーヌに言うと
「陛下がまだエリトール家の頃よりお慕いしておりました。王妃陛下が居られましたのではっきりと申し上げませんでしたが」
「そう言えば、何回かあったね、あれ本気だったの!?」
オサムは自分の鈍感さには自信があったが、それでもからかわれていると思っていた。
「やはりお気付きになられてませんでしたか、私はこういうことが苦手なもので」
ロレーヌの言葉にオサムは考えていた。
「んー、どうしよう?俺はリムルが大好きなんだけど、それでもいいのかな?」
オサムが尋ねると
「側室ですから、陛下のお慰みとして使っていただいて構いません」
ロレーヌは答えた。
「そんなこと言わずにもっと自分を大事にしようよ?ロレーヌ様。あ、ロレーヌ」
オサムも癖が抜けていなかった。
「陛下のその優しさと強さに惹かれて居りました。」
ロレーヌの言葉にリムルが反応し
「ロレーヌ様も私と同じお気持ちでいらっしゃったんですよ、私にはわかります」
とリムルがオサムに言う。
「いや、あのねリムル」一息置き
「側室ってことは一緒にベッドに入るって事だよ?良いの?俺がロレーヌに取られちゃうかもだよ?」
オサムが言うと
「いえ、そのようなことは決して致しません。王妃陛下が苦しまれるならこの命を絶ちます」
ロレーヌは騎士なので本気だろう。
「私は陛下のお傍に居られれば幸せです。それよりロレーヌ様のお願いを受け入れて差し上げて下さい」
オサムはこれはもう俺がうんというしかない状況だなぁと考え
「分かった、じゃあロレーヌ、俺の側室に娶るよ」
オサムは折れた。
『そもそもリムルとの仲を進展させてくれたのはロレーヌだし、恩はあるよなぁ』
そう考えて
「じゃあ今から子爵様を説得に行こうか。下で待ってるから居りてきてね?」
そう言ってオサムはバルコニーから飛び降りた。
「あ!またそのようなことを」リムルが慌てたが、2人はもっと驚いていた。
「いつもあのように出ていかれるのですか?」とクリューズが問うと
「はい、帰りも飛び乗って来ます。ロレーヌ様、叱って下さい」
とリムルは溜息を付いた。
3人はペガサスでフルグリフ侯爵の城のマンセル子爵の屋敷に居りた。
子爵は窓からペガサスを見たのだろう、1階まで降りてきていた。
そして
「ロレーヌ!お前のために良い縁談を持ってきたのに名も聞かずに飛び出しおって!」
「クリューズ、お前もお前だ、ロレーヌの従者でもないのに」
とオサムに気がついて
「これは、グレイス国王陛下。じゃじゃ馬娘を叱って頂けたのですか?」
マンセル子爵にそう言われて、オサムは頭を掻きながら
「申し訳ないですが、ロレーヌを側室に娶りたいとお知らせに参りました」
といって頭を下げた
子爵は驚き
「グレイス王国の?陛下の側室ですか!?」
オサムは
「そうなります、いきなりの申し出、申し訳ない」
とまた頭を下げた。
子爵は
「おやめ下さい陛下、どうぞこのじゃじゃ馬を引き取って下さい、お願いします。」
「このことに比べれば伯爵家との縁談など紙屑同然です。先方には説明をして断って参ります」
と膝をついて
「どうかロレーヌをかわいがってやって下さい、グレイス陛下」
「はい、心配はおかけしません、時々こちらの屋敷にも帰らせますし」
オサムはそう言い
「えーと・・・結納金です」と言って銀貨200万枚入ったマジックバッグをマンセル子爵に渡し
「銀貨200万枚あります、ロレーヌに良いドレスを作って上げて下さい」
と言った
「200万枚?結納金でこのような額聞いたことがありません、王国同士の婚姻では無いのですから」
そう言って返そうとしたが
「側室と言えども国王の花嫁です、準備はそれで」
といって受け取らなかった。
「では、式は2ヶ月後、ロレーヌはこのまま1週間ほどお預かりします。」
と言ってオサムとロレーヌが飛んでいった。
「クリューズ、お前の入れ知恵だろう?」
子爵はクリューズに笑顔で言ったが
「ロレーヌ様の意志です。背中は押しましたが」
と言ってクリューズも笑った。




