第1話 国の始まり
オサムは以前グリーシア皇帝から与えられた国土と新たにグリーシアから追加された領土を
グリーシア帝国から完全に独立させグレイス王国とし、国王として3人に伯爵位を与えていた。
グレイス王国君主グレイス王アキバ・オサム・グレイス、それに
クイード・ローレンダーク伯爵
タキトス・シュルツ伯爵
ハンビィ・ストワード伯爵
国王及び実質的な領地を持つ貴族はこの4名である。
そして、オサムはリムルにリムル・グレイシア公爵位を与え正室とした。
諸国はこぞって国使を送ってきたり、王自らがやって来た。
4人のインペリアルセイヴァー、神々の守護者達の統べる国である。
グランパープル聖国と並ぶ国として敬われた。
国庫には晶石を換金した銀貨10億枚以上が有り、最も豊かな国である。
王やクイード達があまりにも強大な力を持つため、もはやどのような国も手出しができない。
グレイス王国に手出しすればそれがグリーシア帝国であろうと滅ぶだろう。
グリーシア皇帝とライツェン国王、それにフルグリフ侯爵から人材協力を得て国家運営は順調だった。
ただし、グレイス国王であるオサムは相変わらずであった。
「だれかー!おーい!」オサムが城の中で誰かを呼んでいた。
「陛下、どうなされました?」
エリスがオサムに声を掛けた。
「あー・・・エリスちゃん、あのさぁ城が広くて迷っちゃって、俺の部屋どこだったっけ?」
オサムは以前の屋敷の40倍は有る城にどうしても慣れることが出来なかった。
「フルグリフ侯爵閣下の城の何倍もでかいんだもん、迷路みたいだしさぁ」
情けない声でオサムはエリスを頼った。
「ここは以前グリーシア帝国の最前線の領土でしたから、ライツェン国のお城より大きいと聞いております。
それに、陛下の領土となった時から改装と拡張をご指示したのは陛下であらせられますよ?」
エリスは言いながらオサムを連れて行った。
最上階である5階の部屋へたどり着き
「エリスちゃんありがとね。リムルー!」
とまた情けない声でリムルを呼んだ。
「どうされました?陛下また城の中でお迷いに?」
図星を突かれたが
「うん、もうやっぱりバルコニーから出入りするよ俺」
と言うと
「皆が驚くのでそれだけはおやめ下さい」
とリムルに言われてしまった。
以前、階段を使うと迷うからということで5階のバルコニーから飛び降りたり、
地上からバルコニーに飛び乗ったりして見た者を驚かせてしまったのだった。
「駄目かなぁ?」とオサムが訊くと
「おやめ下さい」とリムルにきっぱりとまた言われてしまった。
城自体も大きいが、庭も広大である。
グレートドラゴンが4匹降りてもまだまだ余裕がある。
そして、クイード、タキトス、ハンビィには城近くに屋敷をもたせた。
城下の街も拡張し、各国王都の倍の大きさとなっていた。
交易路の要衝であり、肥沃な土に恵まれ作物もよく育つ。
オサムは町や村、国土の隅々まで道路を整備している。
王直属の騎士は城内外で約2000人。これはグリーシア時代の駐留騎士が多く含まれる。
さらに傭兵を正規兵として雇い、総戦力を5万人とした。
他国と違い、騎士位の者にも領地は与えず銀貨を与えていた。兵も同様である。
そして他国のように徴兵を行わないため、総人口と比較すると騎士や兵士は相対的に少ない。
しかし、グレイス王国は戦を捨てた国であるためそれでよかった。
兵というよりは警官や武官に近い存在である。
これには毎年相当な銀貨が必要になるが、モンスターを倒せば1日もかからず稼げる額である。
それゆえに王直轄領内の税は諸国の半分以下である2割としている。
庶民出身のオサムにとっては出来るだけ税を低くしたかった。
領内の者全てが幸福に暮らせる国、それだけを徹底した。
数カ所有る支城は一応王直轄もしくはクイードやタキトス、ハンビィが城主だが、他の要塞も含め城代を使っている。
これは攻め込まれることを想定していないためであるが、
攻め込まれたとしても領土内ならグレートドラゴンで1時間以内に駆けつけて10万の兵でも片付けられるからだ。
そして、アレシャルの塔と似たメラススの塔というものも国土の端に有った。
以前オサムが大陸を飛び回っている時に入った塔で地下200層まである。
オサムは今まで以上に責任を持つこととなったが、幸いクイードとタキトス、ハンビィが十分な働きをしている。
オサムはリムルや3人に
「城じゃなくて屋敷にしない?」と提案したが
「王が居城に住まずにどうされますか、屋敷で過ごすのは余暇の時くらいにして下さい」
と諭された。
オサムは諦めて、偵察を兼ねた冒険を始めていた。
オサム達4人はグレートドラゴンに騎乗し周辺の様子を見ていた。
モンスターの群れが発生する兆候を知ることは出来ないのか、と。
しかし、この数ヶ月全く現れる様子がない。
オサムは3人に
「メラススの塔で少し稼いでくる。お前達はこのまま領土内を見て変化がなければ城に戻れ。」
と指示し、塔へ向かった。
「さて、今回は何回攻略するかな?5回もクリアすれば1000万枚になるな。」
そう言って休みながら1日で5回攻略してしまった。
新たに作らせたマジックバッグやグランパープルのマジックバッグは3重構造になっており、ほぼ無限かと思えるほど入る。
城下にあった換金所の建物も非常に立派なものに改築しており、中には商店まで揃えていた。
これは換金所で武器や防具、アイテムなどを購入することが出来るようにだった。
換金所の隣にはビーツの巨大な工房を作り、その横にはクライアンのマジックアイテム工房を作って移住させた。
ビーツとクライアンはどうしても手放したくない人物であり、
弟子や職人のために家屋を作ったり、ビーツやクライアンには屋敷を与え、住まわせていた。
オサムが換金所で晶石を換金すると1200万枚だった。
「これで数年分は稼げたな。」
同時に換金所に国庫分の蔵も作らせており、必要に応じて取り出せるようにしていた。
「ではこれは国庫の方に入れておいてくれ、今何枚有る?」
と受付の女性に尋ねると
「現在グレイス陛下は5億枚程度、国庫分は3億枚程あります。」と返答された。
「えぇ?預金が3億枚?何故そんな多くなってる?」とオサムが驚くと
「クイード様、タキトス様、ハンビィ様も同様に国庫分に納められますので」
そう答えられた。
「そうか、ふむ」と言いオサムは城へ戻り3人を呼び出した。
すぐに3人が王執務室、主室の横だが、そこに現れた。
「今日換金所でお前達も晶石を国庫に納めていると聞いたが、自由にしてよいのだぞ?」
オサムが言うと。
3人は笑顔で
「我々はもうそれぞれ2億枚以上の銀貨を持っておりますので、必要無いのです。」
と答えた。
「そう言われればそうだな、俺も個人で5億枚持っている。そういうことか。」
オサムが言うと
「そうです、もう我々に銀貨は必要ありません。領地の税も陛下に倣い2割としておりますし。」
続けて
「たとえ飢饉となっても問題ないようにそれぞれが3年分の穀物を蓄えております。」
と答えた。
オサムは
「お前達3人それぞれが3年分だと?国の倉庫にも5年分蓄えてるぞ?」
と言うと。
「我が国は陛下の心が作った国。何があろうと民をいたわらねばなりません」
「民の笑顔こそが陛下の望むもの。そのために我々も出来ることを行います。」
3人は完全にオサムに影響されていた。
「そうか、お前達には色々と助けてもらっているな。」
オサムが言うと
「これは陛下への御恩返しです。我々を導いてくれたのは陛下ですから」
「下級騎士家も継げない我等が今では伯爵です。我々が陛下の事を考えるのは当たり前のことです。」
オサムは
「そうか、ありがたいな。」と言うと
「もったいなき、お言葉です。」と3人は答えた。
夜になりオサムはリムルと過ごしていた。
「あの3人は俺には過ぎた家臣だよね」と言うと
「陛下だからこそ皆がついてくるのです、一番近くに居させて頂いた私にはわかります」
リムルはそう言ったが
「城の中で毎回迷うような奴でもか?」と言って二人で笑った。




