65話 世界へ
オサムは歩いて王都に入った。
城代を呼びつけ、事のいきさつを聞くと
どうやらダークドラゴンの穴に飛び込んだと同時に穴が消え、オサムは大地に叩き付けられたらしい。
城の見張り兵がその様子を詳細に説明してくれた。
「では、俺はずっとここに?」
と訊くと
「大量のドラゴンと戦い、全てを斬ったあと陛下が暗闇に向かって飛び降りました」
「黒い穴のようなものが消えて、陛下は地面に」と言われた。
『つまり、こっちの世界から見る限り一瞬の出来事だったわけか』
向こうで過ごした証拠は?とマジックバッグを開いてみると、大量のレアアイテムは入っている。
1年程の期間自分は700年前に行っていた、それは間違いないようだ。
「少し混乱しているので今日のところはこれまで」とオサムが言うと
「モンスター晶石です」と言って手渡された。
どうやら城の者が集めてきていたらしい。
オサムはそれをグランパープルのマジックバッグに移し替え、屋敷へと戻った。
屋敷に付くと、クイード達3人は帰っていた。
話を聞く限り”穴”は無かったらしい。
『ということは、陽動か、本命は俺の城の方?』
しかしわからないことだらけだったので考えることを途中でやめた。
どうせまた起きる。
相変わらず各地で小競り合いが起きていたが、
この数ヶ月大きな異変は何も起きなかった。
各国に領地を持つオサムだが、それはオサムの領民が増えたということである。
幸いオサムがグランチューナーであるため攻め入られることも通過されることもない。
「俺に領土を与えた理由はそれか、確か敵対する国の領土の境界線ばかりに有ったな」
「俺を利用してやがったな?」オサムは怒りを覚えたが、すぐに
『これで少しは戦乱も縮小してるか』と考え、怒りは静まった。
「しかし、これでますます断れなくなったな」オサムは書斎で舌打ちをした。
「いや、いっそ統一しちまうか?この大陸全部」
オサムは本気で考えた。
オサムが今まで一番遠くまで行ったのはグリーシアである。
大陸の全てを見たわけではない。
「リーファなら1ヶ月も掛からず全てを見れるな」
オサムは準備をした。
銀貨を5000万枚、ビーツの最新で最強の装備を身に着け
マジックバッグとそれと同じ大きさのグランパープルのバッグ
他に必要そうな物全てをマジックバッグに入れた。
甲冑やその他の大きなものはグレートドラゴンの首につけているマジックボックスに予備と共にすでにしまってある。
そして、リムルに
「今回は長くなる、世界を見てくる」
と言って飛び立った。
グリーシアを通り抜けるとまだ広大な大地が広がっていた。
「まずは東端の国シャングール帝国まで。」
東端まで来て、海を渡ってみたがやはり日本列島のような大きな島はなかった。
「ここが東の果てか。」
一旦降りてシャングール帝国を見て回り、散財した。
ありったけの絹と木綿、趣味の剣などを手当たり次第に買いまくった。
そしてシャングール帝国の民衆が疲れていることに気がついたが、景気の悪化は無いようだ。
オサムは今度は大陸を一周しながら島を見つけようとした。
大小様々な島が見つかったが、国家のような規模と建築物の有る島は少なかった。
一度石造りの神殿のような物がある場所を見つけたが廃墟となっていた。
大陸南端の半島の近くに大きな島がありそこは栄えていた。
他にも色々と廻ったが、やはり大陸の方が文化的水準は高そうだ。
巫女のようなものが居る島が有るかと期待していたが
聖なる気のようなものを持つ島はグランパープルだけだった。
全てを見て回りオサムは屋敷に帰ってきた。
「クイード、タキトス、ハンビィ、俺の居ない間に何か起きたか?」
オサムが訊くと
「ここ一月は何もありませんでした」
と言われた。
「何もない、か」
「周辺国のいざこざは?」と訊くと
「今まで通り、各地で」とクイードは答えた。
オサムは3人に向い
「俺はこれからすべての国を治める大帝国を作ろうと思う」
そう言って3人を眺めた。
「世界の混乱をおさめるためにですか」
どうやら3人はオサムの言葉を本気と受け取ったらしい。
「そうだ」
オサムは一言で答えた。
「長い道程になるが。」
「しかし今ではない、まずは世界の敵からだ」
オサムは自分に言い聞かせた。
「そのために俺達は奴らの天敵にならねばならん。お前達も」
オサムは指輪を外した。
「インペリアルセイヴァーとなれ、グレートドラゴンにすら恐怖を与えられる。」
「インペリアルセイヴァー・・・HP32万?
ロードナイトやドラグーンが最高職ではなかったのですね・・・」
3人がオサムに言った。
「神々と会うことになる、姿は見えんがな。声だけだ」
「あまりにも強いためお前達にも隠していた、すまない。侯爵閣下と王陛下だけが知っている。」
3人は黙り込み、しばらくして
「ご主人様の計画の実行のためならば。我々もこの世界の平和を願う気持ちに曇りはありません。」
クイードが口を開いた。
オサムは
「では時間を掛けても良い、アレシャルの塔の最下層グレートドラゴンを一人で倒してこい」
「それができれば塔の1階に戻り何度も倒せ。最低30回、それでレベルを上げろ。」
オサムの言うことは無茶ではない。3人の装備はオサムが使っていた装備だ。
恐らくこの世界で最も強力なものばかりに違いない。
「インペリアルセイヴァーになれば更に100回倒せ、余裕のある時で構わん。」
自分がやったことをそのまま3人にやらせることにした。
そして
「行く前に俺の部屋に来い。マジックバッグとグランパープルのマジックバッグを作らせてある。」
「俺も行く。200回程な。」
と静かに言った。
屋敷に帰りマジックバッグを3人に渡した。
もう自分達でも作れるだろうが、これもオサムがデザインし、戦闘中に邪魔にならない形状だった。
「剣も甲冑も用意しておく。最高のものをな」
オサムは実はビーツに自分用だけではなく3人の装備も作らせている最中だった。
自分の持っている素材アイテムを全て見せ、要る物は渡してあった。
モンスターも群れが発生したと知らせがない限りは3人はアレシャルの塔に通っていた。
もちろん他のダンジョンにも。クイード達は数日留守にすることが増えた。
ただし、もしもの時のために1人は屋敷に居させた。
ある時、マジックバッグの中身を整理していると見慣れない物が出てきた。
呼び笛である。
「これは?ん?グレートドラゴンのドロップか」オサムが思い出した。
ボスの中でもグレートドラゴンはドロップするものが少ない。
角や牙、鱗などを時々落とすだけだ。
ドロップアイテムが目的ではないため、見もせずにマジックバッグに放り込む癖がオサムには有った。
この際全てを分けようと考えた。
マジックアイテム精錬師のクライアンの店に行き、整理用のマジックバッグを作らせた。
オサムは色々とアイテムを手にとっては分別していく。
流石に大陸中のあらゆるダンジョンを回っているだけあって非常に種類が多い。
「ビーツとクライアンを呼んで見てもらう必要があるな」
オサムはある程度分け終わると一休みした。
その頃昼夜を通してクイード達3人はロードナイト99を目指して戦い続けていた。




