61話 かけがえのないもの
オサム独りが何をやったところで各地の戦乱は収まらない。
わかりきっていたが、出来るだけ止めたいと考えていた。
しかし、他国の内政に干渉するのもどうかという悩みがオサムの行動を止めていた。
その代わり、一冒険者として大陸を廻り例の穴が無いか確認するように決めた。
城下の街で情報を集め、ダンジョンを回っていった。
ビーツの10作目の鎧ともう数十本目になる剣を腰と背中に挿し、楯を持ってグリフォンで飛んでいた。
数カ所おかしなダンジョンがあったが、例のダンジョンほどではない。
ドラゴンダンジョンで起きたら恐ろしいことになる。
そもそも自分の行けない場所で起きるのだろうか?
オサムは自分の生活も大切にしたいと考えていたので一日以上屋敷を開けないと決めていた。
ファシリアは既に騎士になれるのだが、オサムやクイード達に触発され99での転職を考えているようだ。
その件は完全に任せて自分は自分なりの鍛え方を行っていた。
インペリアルセイヴァーのレベル上げは行っていないが、30を越えていた。
どうやらここまでステージを上げてしまうと簡単には上がらない。
それは構わなかった。
事実上無敵であるのだからこれ以上鍛える必要はない。
ダークドラゴンを想定してグレートドラゴンを相手にしたが、一体なら苦労せず倒せる。
ダークドラゴンが一体何匹現れるのか、他の知らないモンスターが出るのか。
グランパープルで訊いてもわからないという解答しか返って来ない。
大陸の西端、ミスリル大公国にあるドラゴンダンジョンで、
ドラゴンダークネスというドラゴンと戦ったが、どうやらダークドラゴンでは無いらしい。
”穴”を見つけることは諦めていた。
「俺が警察みたいにパトロールする必要も無いだろう」
それが理由だった。いや、簡単に言うと面倒だったからだ。
オサムは冒険とリムルにしか興味がない。
世界を救えと言われてもピンと来ないのもあった。
のんびりと生活して、時々冒険がしたい。それだけだ。
その日は前日幾つかのダンジョンを回っていたため、起きるのは昼頃になった。
食事の時間が皆と揃わないため、最近はカッシュの補佐をしているユゼムに任せることが多くなっていた。
ユゼムは最初の屋敷の時代からカッシュの横で作っていたため、料理の腕に問題は無い。
「おはようございます、ご主人様」とヴィオラが昼食を持ってきた。
リムルの気遣いだろう。
「リムルは?」とヴィオラに訊いた
すると
「リムル様はお出かけになられました。」という。
「一人で?共は?」と訊くと
クイード様とハンビィ様がご一緒です。
と言うのでオサムは安心した。レベル60に近い騎士が二人も付いていれば安全だ。
「買い物かな?」ヴィオラに訊くと「何もおっしゃらずにお二人を連れて行かれましたので」と答えた
『街に用事って何なんだろう?一人で出るのは始めてなんじゃないか?』
オサムは帰ってきてから聞くことにした。
オサムが部屋のベッドでいつも通り休んでいると、リムルが帰ってきた。
「勝手にお屋敷を出てしまい申し訳ありません」と頭を下げたが
「2人護衛が居れば平気だよ、あの3人はすごく強いからね」
オサムが続けて
「なんか用だったの?」と尋ねた。
「はい、これを」とペンダントを見せた。
オサムは
「そんなの幾らでも買ってくるのに、欲しかった物?」と訊いた
「これは旦那様に。神殿の聖なる護りです。いつも危ないことばかりなさるので」
そう言ってオサムの首に掛けた。
「やっぱり心配してたんだね、ごめんねリムル」
オサムが言うと
「いえ、旦那様はもう誰よりも強いはずなので心配はしてませんが、
なにか私にも出来ることを、と考えて。差し出がましいでしょうが。」
リムルは答えたが
「んーん、すごく嬉しいよ、けどリムルの分も買ってくればよかったのに」
オサムはおそろいにしたかった。
「私の持っている銀貨ではそれ1つしか買えませんでしたので」
笑顔でリムルが言った。
「え?銀貨なら使い切れないほどあるよ?必要なだけ持っていけばいいのに」
オサムがマジックバッグを出して
「ほら、多分10万枚はあるはず、足りないならまた換金所で下ろしてくるし」
と言った。
リムルは
「いえ、私が侍女のときに頂いていたお給金です、銀貨60枚位で少ないですが」
と言った。
オサムは
「これリムルの貯金で買ったの?大事なお金だったんじゃ?」
オサムは嬉しかったが、この”護り”の重さに気がついた。
「いつか旦那様に御恩を返させていただこうと思っていたので、思い切っちゃいました」
笑顔でリムルはそう言った。
「ありがとう、大事にする。ありがとうね、本当に」
とリムルを抱き締めて
「大金を持って銀貨の価値がわからなくなってたけど、これは違うね、リムルの想いがこもってる」
嬉しくてつい泣きそうになってしまった。
オサムはリムルから貰ったペンダントを見ながら
「確か日本にいる時にお金じゃ買えないものがあるって言ってたな、こういうことか」
そう言って胸にしまった。
「リムルー?」オサムが呼ぶと
「なんですか?どうかされましたか?」と隣の部屋からリムルが出てきた。
「なんでもないけど、一緒にいたくてさ」
オサムが言うと
「いつも一緒ではありませんか、お元気無さそうですけど大丈夫ですか?」
リムルはオサムの様子を見てそう訊いてきた
「んーん、違うよ、すごくゆったりした気分。リムルが大好きだっていう気分」
「しばらくは一緒に居るね、大陸のダンジョンを回るのも少し休む」
オサムは寝たまま天井を見ていた。
「この世界が終わるまで・・・俺がそうはさせないけど。」
ダークドラゴンの事が頭をよぎった。
『何が出てきてもこの世界とリムルは守る、俺が守る』改めてそう考えた。




