55話 クラッセ伯爵
侯爵はその頃気が気でなかった、オサムなら本当に王を殺すだろう。
そして何万人の軍でもオサムを止めることは出来ない。
唯一の救いは、そうなったらオサムが王になれば良いということだ。
そうこう考えていると、オサムが戻ってきた。
侯爵は急いでオサムを呼びつけ、仔細を聞き出そうとした。
オサムは王都でのことを大体説明すると、侯爵は顔を手で覆っていた。
「それで?最後はどうなった?」と聞きたくなかったが訊いた。
「こんなものをもらいました。」書状の入った筒を手渡した。
侯爵がそれを開いて見ると、王直筆の書状で玉璽も押されてある。
「ん?これはクラッセ伯爵領か?」侯爵がオサムに訊くと
「そうですね、名家だとかクラッセを名乗れとか言われました。」
オサムが訳を知らずに言うと
「クラッセ伯爵家といえば王国屈指、3位の王位継承権を持つ名家だぞ?」
「城を壊した上でこの扱いか、一体何をしたんだ?」侯爵に訊かれたが
「なんだかわかりません、王位継承権を俺が持つことになるんですか?」
と相変わらず無頓着に答えた。
「身分上はこの私よりも上になる。」と言われたが
オサムは
「侯爵様は侯爵様です、身分には興味がありませんし、扱いも変えないで下さい。
俺は引き続きエリトールを名乗ります。必要な時にクラッセの名前を使います」
と呑気に答えた。
「わかったわかった、オサムの好きにして良いわ」
侯爵に呆れられてしまったが、いつものことだった。
屋敷に帰り、3階に上がり
「リムルー帰ったよ~♪」と呼んだ
「おかえりなさい旦那様、いかがなさいました?疲れているようですが?」
リムルが心配そうにすると
「ちょっと頭を使いすぎて参った。あと、俺伯爵になっちゃったみたいだね」
と軽く言った
「まぁ、子爵様になったと思ったら伯爵様ですか、よかったですね」
とリムルが喜んでくれた。
リムルに手伝ってもらいながら鎧を脱ぎ
「んー・・・王位継承権3位の家らしいけど、
俺には関係ないしクラッセ伯爵じゃなくエリトール子爵のまま居ることにするよ。
どう名乗るかは自分で決めて良いんだってさ。みんなはクラッセ伯爵って呼ぶみたいだけどね」
そう言ってベッドにダイブした。
「もう何も面倒なことに巻き込まれたくない!リムル、来てー」
とベッドに呼んだ
「はいはい、鎧を片付けたら行きます」とリムルが言うと
「それ、すごく重いからクイード達に頼むんで放っといていいよ、早くー」
とオサムは駄々をこねた
「仕方のない人ですね、もう・・・」とリムルはベッドに寝た。
「なんだかねーまだまだやることがあるらしいんだ、けど全部侯爵閣下に頼んできた」
といってリムルに抱きついた。
夕食前に部屋がノックされた
「ヴィオラ?入っていいよー」と言うと
見覚えのある2人の騎士がヴィオラに連れられて入ってきた。
「クラッセ伯爵様、主の命により参じました」
うやうやしく二人は頭を下げた。
部屋着に着替えていたオサムはベッドから起きて居間の方に座った。
「二人共座って?」
「ヴィオラ、紅茶3つお願いね」
オサムは
「えーと、確か侯爵閣下のレンデルフと」
「ブライトン・ザビックです。」ともう一人が答えた
「で、何か用かな?急ぎ?」
オサムが訊くと
「いえ、この度エリトール子爵領の城とクラッセ伯爵領の城の城代として赴任することになりましたのでご報告に」
二人が言うと
「あぁ、そっか、閣下が言ってたな。うん、お願いするね」
オサムは二人に言った。
「伯爵様の城代を務めさせて頂けるのは光栄の至りです。」
「うーん・・・そんなに固くならなくていいよ、何かあればすぐ駆けつけるから」
オサムは政治には疎いので最低限のこと以外は領地経営を侯爵に一任していた。
「じゃあ、二人に渡しておくよ、えーと」
とマジックバッグをゴソゴソして呼び笛を取り出した。
「ペガサスの呼び笛。これならすぐにでもここまで戻ってこれるから」
と二人に渡した。
「ペガサスの呼び笛ですか!?こんな貴重なものを・・・」
レンデルフは言ったが
オサムは
「いいよいいよ、俺の分はまだまだ持ってるから。二人のレベルなら使えるでしょ?」
と受け合わなかった。
「何かあったら戻ってきてくれればいいよ。」
「用事はそれくらい?」とオサムが訊くと
「あ、はい、それだけですが」
二人は笛を眺めてポーチに入れた。
「そうだ、これも。切れない紐だから笛を付けて首から下げてると便利だよ」
とドラゴンスパイダーの糸で作った紐を渡した。
「リムルー」とオサムが呼ぶと
「はい、いかがされました?」とリムルが奥の部屋から出てきた。
「この二人が子爵と伯爵のあの貰った城のね、城代になってくれるんだって。」
「そうでしたか、ありがとうございます、お二人には旦那様の我侭でご苦労をおかけします」
と頭を下げた。
二人は驚き
「そ、そんなおやめ下さい、クラッセ伯爵夫人様」と慌てた。
「だって、お二人は私がお城の侍女の時からの騎士様ですし、今でもリムルですよ?」
ニッコリと笑ってリムルは「リムルと呼んで下さいね?」と言った。
「いや、しかし今ではもう身分が全く違いますので、ク・・・リムル様」
レンデルフとザビックは
「お二人にはかないません。」と笑った。
困ったことにまたオサムの冒険癖が出てきてしまった。
この周辺のダンジョンは全て攻略してしまっているため、最近では離れた辺境まで行っている始末である。
ペガサスやグリフォン、ドラゴンに乗っていけばすぐだが、見つけるのに時間がかかりリムルが寂しがる。
どうしたものかと夜一人で考えていた。
そうだ、王に頼んでこの国のダンジョンの地図をもらうことにしよう。
などと、自分のしたことを全く考えずに図々しく考えた。
明日になったら王のところに行って貰おう。
オサムは次の日、小さ目のマジックバッグを別に持って換金所に向かった。
「これに銀貨1000万枚入るかな?」とカウンターで見せた。
「こちらはマジックバッグですね?恐らく入ると思います。しばらくお待ち下さい」
そう言って受付の女性は奥へ行った。
そして、「入りました」と言って持ってきてくれた。
「え?もう入ってるの?それ?」
オサムが尋ねると
「はい、もう1000万枚入っております、見てください」
と蓋を開けるとたっぷりと銀貨が入っている。
「へぇ、早いね」と言いながらオサムは受け取った。
「で残りはどれくらい預けてるか分かる?」と訊くと
「少しお待ち下さい、えーと・・・3200万枚程です」
「わお、自分で考えてたよりだいぶ多かったね、そっか、ありがとう」
と行ってオサムは次の目的地、魔法アイテム制作の専用店に向った。
その店には行きつけになっているが、今日もマジックバッグを頼むのだった。
「こんにちは、エリトールだけど、クライアン居るかな?」
と呼ぶと
「これは、エリトール様。本日は?」
クライアンが尋ねると
「うん、またマジックバッグ。普通のを3つと俺がいつも使ってるこれを2つ
それからグランパープルのもう少し大きいのが欲しい」
そう言ってヴァレスの革を大量に渡した。
「あ、そうだ、首から下げられるような小さいのも1つね」
と言うと
「はい、わかりました。出来上がりましたらお屋敷に届けます。」
と言われたので
「うん、じゃあ頼むよ」とオサムは街を出た。
すぐにペガサスを呼び、王の城へと向かった。




