52話 最高位
数日間城や屋敷で過ごし、侯爵一行は帰ることとなった。
あと1週間半、それまでオサムはリムルに会うことが出来ない。それが辛かった。
それを侯爵に見抜かれ「リムルが恋しいか?オサムよ」と言われた。
来た道を引き返しながらオサムは毎晩リムルのことを考えていた。
『今頃は新しい屋敷に移っているのかなぁ?クリューズに任せているから安心だけど』
1週間を超えた頃、侯爵の領地に入った。もうすぐ屋敷に戻れる。
「すまぬな、オサム、お前だけならペガサスで飛んでいけるのだが」
と侯爵に言われたが
「いえ、この世界で侯爵閣下に出会えなければ今頃野垂れ死にしていたでしょう。気になされないでください」
オサムは答えると
「そうか、まぁ城に戻れば屋敷も完成しているだろう。リムルとゆっくり過ごすと良い」
そして、城へと戻ってくると、やはり屋敷の引っ越しは済んでいた。
オサムは新しい屋敷の扉をそっと開けると
「おかえりなさいませ、お館様」とハロルドがいつものように迎えてくれた。
「随分と大きな屋敷になったな、全てクリューズが手配を?」
とハロルドに尋ねると
「左様でございます。前の屋敷にはクリューズ様が住むとのことでした。」
オサムは
「そうか、しかし広いな、俺の部屋は?」と聞くと最上階3階となっております、ご案内させましょう」
と侍女のヴィオラを呼んだ。
「子爵様をお部屋にご案内しなさい」ハロルドが言うと
オサムを3階の部屋に導いていった。
部屋に入り
「リムルー、帰ったよー。」とオサムが言うと
奥の部屋からリムルが駆けつけ「おかえりなさい、旦那様!」と抱きついてきた。
甲冑をぬぐのにヴィオラを手伝わせ、部屋着に着替えた。
ヴィオラは「ではこれで。ごゆっくりなさって下さい。」と扉を締めて帰っていった。
リムルが
「ね、ね、聞いてくれますか?」と言うので
「なんだい?」とオサムが言うと
「召使いの中に魔法士が居るんですよ?」とリムルが楽しそうに話しだした。
どうやらクリューズの手配で従者が8名、召使いが14名に増えて、その中の2人が魔法士らしい。
『そう言えば一番最初のダンジョンの時以来見てなかったな』とオサムが考えていると
リムルが「そのうちの一人が可愛い女の子で、すぐ転ぶの、面白くって」
と言うのを聞いて、オサムには心当たりがあった。
「どの子かな?会わせてくれる?」とリムルに言うと。
リムルがドアを開けて「ヴィオラ、あの子を呼んできてくれる?魔法士の子」と伝えた。
少しするとドアがノックされリムルが扉を開けると「その子」が現れた。
「あ、やっぱりあの時の!!」とオサムが言うと、その子も
「あ、あの時の方ですか!?」と言った
「あのときは申し訳有りませんでした」と深々と頭を下げた。
リムルが「お知り合いでした?」と訊くので「ちょっとね」とオサムは笑って答えた。
「相変わらずドジっ子なんだね、名前はなんて言うのかな?」オサムが訊くと
「マリエール・ミルスです!子爵様よろしくお願いします!」と元気よく返事し
オサムが
「マリエールちゃんね、よろしくね。」と言うと
「では失礼します!」と言ってドアから出て走っていった。
リムルが
「旦那様、見ていて下さい。」とドアを開けて見せていると、階段の手前で豪快にコケた。
「ね?面白い子でしょ?」と笑顔でオサムに言った。
「直ってないんだなぁそそっかしいところ」とオサムも笑った。
その日から数日、オサムは屋敷に慣れるため外には出ずに過ごした。
従者が8名に増えたが、クイード達3人が教えてくれているのでオサムは口出ししなかった。
3人はレベル40を超える騎士になっていた、恐らく相当な鍛錬を積んだのだろう、
他の5名はまだ剣士で20~40というところだ。いずれ3人が鍛えるはずである。
オサムはクイード達3人を呼んで銀貨3万枚を渡した。
「これは?」とクイードが言うと「当面の装備が必要だろう?他の5人にも買うか作ってやると良い」
オサムがそう言うと
「我々はご主人様から頂いた装備がありますし、あの5名はまだ剣士ですので高価な品は」
クイードが答えたが
「俺の使わない装備を渡すのでビーツに打ち直してもらうといい。5人にもエリトールの名に恥じない装備をビーツに作らせろ、いいな?」
そして
「ちょっと奥の部屋に来い」と3人を装備用のクローゼットの前まで連れてきて
「剣が20本と少し、甲冑も5つほどある、持っていけ。俺の装備は別の場所に置いてある。」
と剣を1振りずつ取り出して床に座り込み3人に確認させた。
「どれもこれも一級品ばかりじゃないですか!?これを私たちに?」3人が言ったが
「使わぬものを持っていてもな、屋敷も移ったことだし、整理がしたい。全部持っていけ」
3人が剣を確認していったが殆どが刃こぼれ1つ無い新品のようなものだ
魔剣ばかり20数本、甲冑もレアアイテムを使った物だ。
「装備レベルになれば徐々に変えていけよ?あと、楯もいくつかある、持っていけ」
そう言われ、3人は3階と2階を往復して装備を運び出していった。
「スッキリしたな。久々に戦いに行きたくなってきた。」とゴソゴソと準備を始めた。
オサムのレベルはロードナイトの80ほぼ無敵だが、アレシャルの塔の最下層のグレートドラゴンだけはまだ倒していない。
「試しに行くか」と剣を2本、腰に下げられる長さの剣と、ビーツから届いた長大な両手剣を背中に装備した。
「リムルー、ちょっとダンジョンに行ってくる。リジェネリターンの魔石も持っていくから安心してね」
と奥の部屋のリムルに言うと
「まだ行かれるのですか?もっとごゆっくりなさればいいのに」
少々不満げだったが
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と言われ
「うん、どうしても倒したい奴が居てね、しばらく留守にする。」と屋敷を出た。
ペガサスを呼び出し、塔に到着した。
「さて、どのくらい強くなってるかな?」と塔に踏み込んだ。
1日もかからずに98階層、つまりドッペルゲンガーの階に入った。
黒い影がぼやっとオサムの姿に変わった。
『ロードナイトと同じ強さがあるのか?』
しかし、流石にそこまではコピー出来ないようだ。魔剣や鎧もコピーできていない。
オサムはあっさりとドッペルゲンガーを倒した。
いよいよグレートドラゴンと戦うことになる。
前は手も足も出なかったが、今回は善戦出来るだろう。
剣や鎧、マジックアイテムの効果よりオサム自身の強さがグレートドラゴンを翻弄した。
ドラゴンブレスも切り裂ける、爪で攻撃されても腕を切り落とした。
尾も切り落とし、最終的にグレートドラゴンは息絶えた。
見慣れないアイテムがドロップしたが気にせずマジックバッグに放り込んで1階層までワープポータルで戻った。
オサムは数日掛けて10数回100階層まで降りていった。
流石にヴァレスの革で作ったグランパープルの袋も晶石で一杯になってきた。
オサムは一旦換金所へ戻りマジックバッグにはまだ余裕があるため屋敷に戻らず、晶石だけを換金した
無限に晶石を出し続けるオサムに受付の娘は目を白黒させていたが
「ご、合計758万9200枚になります」と言われたので「預かっていてくれ」
とオサムはサラッと言った。
既に1000万枚は超えているだろう、領地の税を少し下げるか。と考えた。
オサムは自分のステータスを見るとロードナイトレベル99となっていた。
「気が付かなかったな、完ストしてるじゃん?」と呟き
転職カウンターに行って
「転職できるか?ロードナイトのレベル99なのだが」
と言うと、受付の娘は絶句した。
「エリトール様、暫くお待ち下さい、確認して参ります」と転職の間に入って、しばらくして出てきた。
受付の娘は「転職は可能ですが、古文書を調べても前例が全く無いためこの建物の地下で転職の儀式を行うそうです」
「そうか、案内してもらえるか?」
とオサムが言うと「まずは儀式の間に」と答えられた。
「承知した」と儀式の間に入っていくと、高齢の神官が待っており古びた魔導書らしきものを用意している。
神官は
「この奥に階段があります。そこから地下の神殿へと参ります」
そう言ってオサムを案内した。
地下の神殿というものを見ていると「ここは精霊界と繋がっておりまして、実際には建物の地下ではありません」
オサムは「そうか」と答えて
「では頼む」と神官に告げた
「しばらくお待ち下さい」と魔導古文書を開き、確認を行うと
「まずあの魔法陣に立って下さい、その後儀式を行います」
と言うので、オサムは歩いてその魔法陣の真ん中に立った。
神官が魔導古文書を開き、何やら聞いたことのない呪文のようなものを唱えると
魔法陣全体が輝きオサムを包み込んだ。
景色が変わり上下左右のわからない空間に居るような感覚の中で声が聞こえた。
その声は威厳に満ちた声であり、恐らく神々の世界とやらに居るのだろう。
強烈な光が放射され、それが消えると、元の魔法陣にオサムは立っていた。
予めハイドステータスの指輪は外してマジックバッグに入れていたが、
それは関係ないようだ。
神官は「おぉ・・・これは・・・インペリアルセイヴァー・・・」と言ったので
オサムは自分のステータスを確認した。
インペリアルセイヴァーLv1、HPは20万を超えていた。
オサムは特段変わったことは感じないが、体の奥深くから力が湧き出すのを感じていた
ロードナイトに転職したときと変わらない
神官が
「では戻りましょう、ここには長く居られません」とオサムを連れて戻った。
戻る途中でハイドステータスの指輪を付けた。
オサムはそのまままた塔に飛んでいった。
「試してみるとするか」と塔を降りていった。
ボスクラスの敵をまるで藁人形でも斬るように一撃で倒していった。
「なんだ?この強さは?」とオサム自身戸惑ったが、シルバードラゴンも3撃で倒せた。
同じようにゴールドドラゴンも5撃で倒し、グレートドラゴンの部屋に降りた。
グレートドラゴンは怯えたかのように威嚇してくる。
オサムは「こちらから行くか」と飛び上がると巨大なグレートドラゴンの頭まで届いた。
斬撃を叩き込むと反撃してきたが、空中で避けることが出来る。
5分もかからずグレートドラゴンを倒した。
そしてまた1階に戻り今度は30回以上戦い続けた。
もう晶石が全く入らなくなったので、また換金所に行き換金することにした
ゴトゴトと晶石を出していくと
受付の娘が
「エリトール様、どこに行かれてらしたんですか?」と訊いてきたので
「アレシャルの塔、今回は30回位クリアしたかな?」
平然と語りながら晶石を出していくオサムに、受付の娘は言葉を失った。
「1722万6000枚です」受付の娘は震えていた。
オサムは
「どうしたの?それお預かっておいてね」と笑顔で言うと
「は、はい、わかりました・・・」と受付の娘は言った。
「じゃ、そろそろ帰るね?またね」とオサムは換金所を出ていった。
『ちょっとこれは誰にも見せられないな』指輪は眠る時も常に付けていることにした。
帰る途中に自分のステータスを見たが、インペリアルセイヴァーLv15となっている。
「流石にレベルは上げにくくなってるな」と呟いた
屋敷に戻り
「ただいま~」と言うと「おかえりなさいませ、お館様」とハロルドが迎えてくれた。
「じゃ、自分の部屋に居るから」と伝え階段を登っていった。




