37話 黒騎士
連日連夜オサムは戦い続けた。ビーツの漆黒の甲冑と剣、楯を持ち。
その頃街の中に噂が流れていた。
「闇夜の黒騎士」しかし正体を知る者は少なかった。
兜で隠された顔は誰にも見えない、誰とも話さない。
ただその一振り一振りが見た者を魅了し、一人で強大な敵を倒す姿は恐れられた。
オサムは剣士のレベルを99まで上げ、既に騎士になっていた。
それでも戦いをやめようとしない。
取り憑かれたかのように夜、剣を振るう。時に鋭く、時に豪快に
屋敷が出来上がってはや一月が経とうとしていた。
昼間はだらしなく過ごすオサムは世界が闇に包まれると戦士へ変わる。
はじめはクリューズも知らなかったが、
ある夜エリトールの屋敷から漆黒の騎士が出てくるのを見て気がついた。
しかしそろそろ何もない日々へと移る時期であった。
毎日心配しながらオサムを見送るリムルの瞳に耐えられなくなっていたからだ。
それに騎士レベルも目的の50を軽く超えて80に近づいていた。
「リムル?今日から俺夜は出かけないからね。そろそろ落ち着くことにする。」
オサムがそう言うと
「本当ですか!」と言ってリムルは喜んだ。
「本当だよ、もうリムルに心配は掛けない。」
安穏とした日々を過ごすことにした。
『既に噂が広がりすぎてやりにくいし』とオサムは考えていた。
「じゃ一緒に風呂に入るか?リムル?」とオサムが言った
「え、あ、はい、ご主人様。では・・・その」
相変わらずリムルはこういうことを恥ずかしがる
「うん、そうだよ、ずっと戦ってたからね、リムルが恋しかった」
とオサムが微笑んだ
オサムは執事のハロルドに早めの風呂を用意させた。
「お館様、もうすぐ風呂の準備が出来ます。」
ハロルドに言われ
「じゃあ入る、俺はリムルと一緒に入るから、その後皆に伝えて?」
と返した。
風呂から上がりガウンに着替えて自分の部屋の安楽椅子に腰掛けながら食事をしていると
「エリトール卿、今晩は」とクリューズがやって来た、続いてロレーヌも部屋に来た。
「二人共どうしたんですか?」とオサムが尋ねると
「風呂を使わせて貰おうと思って来た」とクリューズが答え
それに同意するかのようにロレーヌが頷いた。
「構わないけど、よく来るね、好きなのか?風呂が?」
その言葉に
「自分だけあんな気持ちの良いものを造りおって、当然だろう」クリューズは答えた
「今、閣下と私の屋敷にも風呂を作っているが、それまでは使わせてもらうぞ、オサム」
ロレーヌもそう言った
「え?もしかしてクリューズとロレーヌ様一緒に入るのか?」とオサムが慌てて訊くと
「そうだが?あと侍女二人もな。背中を流してもらう。オサムも侍女に背中を流させているんだろう?」
クリューズはあっけらかんと答えた。
「まぁ、かまわないよ、食事もしていくか?」とオサムが言うと
「もちろん!」と二人が声を揃えて答えた
「エリトール家の味は格別だからな、毎日でも来たいくらいだ。」
と料理を褒めてもらったが、実はオサムの持ってきた料理本を翻訳して料理長にレシピを渡しただけだ。
「じゃあちょっと待っていてくれ」と書斎に向かい、その奥の扉を開けてリムルの部屋に入っていった。
「リムル?あれ?居ない?」と戻ろうとした時にリムルが書斎に入ってきた。
オサムは
「なんだ、こっちに来てたのか、リムル」と言って。
「カッシュにクリューズとロレーヌ様の食事の用意をするように伝えてくれ。俺の部屋で食べると」
何かの用で来たんだろうし、その方が良いな。とオサムは考えた。
二人が風呂から上がり、揃ってガウンを着たままオサムの部屋へやってくると
既に食事の用意は出来ていた。
「いいねぇ」とクリューズが言い「うむ」とロレーヌが頷いた。
食事をしながら
「話があって来たんだろう?二人共」とオサムが言うと
「それもある。しかし、風呂と食事にも用があった」クリューズが答え
「くつろいでるところを見ると、今夜は出ないのか?オサム」
ロレーヌが訊いてきた
「そうですね、そろそろ落ち着こうかと考えてます。」
オサムが答えた。
「それはそうだな、もう十分だろう、たった2、3ヶ月で抜かれるとは思って無かったぞ」
クリューズは続けて
「剣士レベルを99まで上げてのレベル78の騎士なんて閣下の領内には居ないぞ?それにあの甲冑と剣だがかなりの魔力が込められているな?」
と言った
「鍛冶屋の腕が良くてね、専属で契約を結んでいる。」オサムが答えると
「それだ、我々二人の甲冑と剣も打って貰いたい」
クリューズが言い、ロレーヌが頷いた。
「あの鍛冶屋に訊いたが、オサムのデザインが必要らしいな?」
「恐らくな。で、どんなものが良いんだ?クリューズ」
「ロレーヌ様も遠慮なく言って下さい」
オサムはもう頭の中で考え始めていた。
「オサムのような黒騎士ではなく今我々が使っているようなものが良いな。
私は閣下の守護騎士なので見栄えのするものを」
クリューズが言うとロレーヌが
「私は防御力を落とさず細身のものが良い」と言った
「うんうん、デザインしておきましょう。あと、剣は?」
オサムが尋ねると
「剣はもう持っている。使い慣れているので必要ない」クリューズが言い
「私はもう少し軽く振れる剣が欲しいのだが、できそうか?」
ロレーヌが訊いてきた
「出来ます、もうイメージは完成しました。」
オサムが言うと
「なんと、早いな。オサムの才能には驚かされる」
ロレーヌは本当に驚いたようだった。
「私ももう一振りレイピアを発注しようと思っていたところなので、二人のものも含めて発注しましょう」
オサムは簡単に答えた。
食事が終わり、談笑しつつオサムの取ってきたレアアイテムを二人に見せた。
「これは、ドラゴンの角に牙、ヒュージワイバーンの革か
あとは、オーガナイトの腕輪、ケンタウロスの弓弦
シールドガーディアンの肩鎧と鎧の魔法石、デモンの指輪
タートルドラゴンの甲羅にナイトウォーカーの目
ナーガの革、ハーピーの爪、ヒドラの尾・・・
一体どこまで行ってたんだ?お前は?」
と二人に驚かれた。
「この国では3本の指に入る騎士だな」
そう言われてもオサムにはピンと来なかった。
「名実ともにエリトールの名を継ぐに相応しい筆頭騎士だ」
ロレーヌが突然
「オサムの妻になっても良いぞ?」
といった時に紅茶を飲んでいたのでオサムはゴホゴホと咽た。
「俺にはリムルが居るので、それはまたの機会に話しましょう。ロレーヌ様」
止まらない咳を堪えながらオサムは答えた。
ロレーヌは扉の前に立つリムルに目をやり
「あの侍女か、側室に娶る気か?オサム」と訊かれた。
「今はそのつもりです、正室が先になるかはわかりませんが、リムルは娶ります」
オサムの言葉にロレーヌは
「そうか、側室が先でもかまわぬがな」と答えた。
「では、邪魔をした、また邪魔をしにくるのでよろしくな、オサム」
と二人が帰っていった。




