28話 冒険者としての始まり
次の日の昼きっかりに鍛冶師のガストル・ビーツがやって来た。
オサムは番兵とクリューズ、伯爵にも伝えてあったが待ちきれずに城門で待っていた。
「これは、エリトール様。お待たせしてしまいましたか。申し訳ありません。」
ビーツ鍛冶師は言ったが
「待ちきれぬでな、ついここまで足が向いてしまった。」
「さぁ、私の部屋へまいろう。ノートは持ってきたか?」とオサムが言うと
「もちろん持ってきております。昨日は眠れずに見て楽しみました。」
ビーツ鍛冶師がノートをだした。
「そうだ、追加で話したいことが有る。それに書いてある説明は読めなかったであろう?」
オサムは威厳正しく話してみた。手本はクリューズだ。
部屋にビーツを通し、リムルを呼び出した。
「リムルよ、紅茶を一つと。ビーツは何を飲む?」と尋ね
「私はなんでも構いません。」
居心地悪そうにキョロキョロとしていた。
「では2つ頼む。」
「まずは」ジャラリと銀貨を机の上に出し「500枚数えてくれ、丁度のはずだ」と言うと
ビーツは「いえ、エリトール様を疑うようなことはしませんのでこのまま頂きます」
自分の革袋に銀貨を詰めていった。
「それで、話というのはな、まずノートから行こう、文字は書けるか?」
とビーツに言うと
「鍛冶以外は無学ですが、文字を書く程度であれば」と答えた
「まず、ここは、黒く染める、と書いてある。そしてここは・・・」
オサムが丁寧に説明すると、ビーツはその文字の下にこの世界の文字を書いていった。」
「エリトール様、紅茶と菓子をお持ちしました。」
リムルが戻ってきた。
「サイドテーブルに置いてくれるか?」と指示した。
「それで、ここはこう書いてある。あとこれは・・・」
オサムが指示する度にビーツは驚いていた。
「難しいのは承知しているが、ガストル・ビーツに作れぬのなら、誰にも作れんと聞いている」
オサムが言うと
「それは光栄の至りです。お褒めいただきありがとうございます。」
ビーツは嬉しそうに言った。
「それと、出来上がった品の代金だが、言い値でよい。言ってみよ」
オサムが言うと
「この銀貨500枚が私どもの工賃となりますゆえ、特殊な素材の分だけでしょうな。
例えばこの、鎧や剣を黒く染めるなど、工程が詳細にかかれている技術にはこちらから技術の提供料を支払うべきですが。
しかし、門外不出と言われれば店に並べる武器には転用出来ませぬゆえ使えません。」
オサムは
「いや、私が申しておるのは、数年の間ということだ。その頃には”黒騎士”の名は知れていよう。そうなればその技術を使っても構わぬよ。」
『黒騎士だってよ、カッケー!なんでこんなにトントン拍子なんだ?』
オサムは妄想しながらにやけそうになったが、微笑みで済ませた。
「で、いかほど支払えば良い?」
オサムはまた訊ねた。
「では、エリトール様のお気持ちで結構です。銀貨は頂かず、専属の鍛冶師としていただければ」
ビーツは欲のない人間であった。
「左様か、専属鍛冶師の件は承知した。契約料は考えておく」
オサムはビーツを手に入れた。
「それで、続きだが、ここは・・・」と2時間程度の話が終わり
「では、よろしく頼む」
とオサムは言い
「こちらこそ勉強になりました。」
ビーツは答え、帰っていった。
「ふぅ・・・」と椅子に深く腰を掛けた時、リムルが扉の前に居ることに気がついた。
「あ、リムルちゃん、ちょっとこっち来て?」
オサムが言うと
「はい、何か御用でしょうか?」と寄ってきた。
「うんうん、御用ですよ~ベッドで御用ですよ~」とオサムが言うと
「え?あの、今ですか?」と訊かれ
「うんうん、今~お願い~疲れちゃったぁ」とリムルに甘えた。
ベッドの方に二人で行くと、リムルはエプロンを外そうとしたが
「そうじゃなくて、そのままベッドに乗って?」と靴だけを脱がして、ポンとリムルを優しくベッドに放り投げた。
「で、俺も、どーん!」とベッドに倒れ込んだ。
「ああいう言葉遣い疲れちゃって、しばらく横になるんで添い寝、ね?だめ?」
「いえ、お疲れでしたら、私で良ければ・・・」とリムルが言うと
オサムはリムルをギュッと抱いて
「ん、安心する・・・」とオサムはウトウトし眠った。
それを見ながらリムルは微笑んで
「エリトール様、お慕いしております。」と嬉しそうにオサムの寝顔を見ていた。
2時間ほど経った時オサムは目覚めた。
当然リムルは自分の横に居た。
「お目覚めですか?エリトール様」リムルが気づいた。
「ん、疲れが取れた、ありがとね、リムルちゃん」ギュッとまた抱きしめた。
「じゃ、リビングに戻ろうか」とオサムが靴を履き、その横でリムルも靴を履いた
リビングに行き、時計を見ると午後5時前だった。そろそろ日が傾き始める。
「俺、城外に行くんで、鎧を着るの手伝ってくれる?リムルちゃん」
とオサムが言うと
「今からですか?!いけません、夜になるとモンスターが出てきます!」
リムルは止めたが
「鎧と剣が出来るまでに少しは強くなっていないとね、俺は騎士だし」
「それに、俺の世界では最強の騎士の一人だったんだよ?俺。
レベルは完ストしてたし、武器もすげーの持ってたんだ。」
オサムのゲーム脳が発動した。
「でも、今のエリトール様は・・・」リムルが言い掛けて
「弱い?でしょ?だから強くならないと、城の周りのモンスター程度なら十分倒せると思うよ?レベル1でもね」
ゲーム脳は発動中だった。
「かんすと?最強の騎士様?れべる1?」
「では、従者を!魔法士も、クリューズ様にお願いしては?」
「いいよ、回復薬を沢山持っていくし、城外程度の敵なら一人で倒せないと意味がないし」
「ですが・・・エリトール様・・・」
「リムルちゃんに心配かけてごめんね、でもぜってー帰ってくるから、俺。
4時間位で帰ってくるからそれまで待ってて?」
鎧の下に防刃具を付け、ブロードソードを背負い、左腰にサーベルを装備して楯を持ちオサムは部屋を出た。
「よし!行くか」と気合を入れた。
途中で番兵に数度止められたが強引に外に出た。
街の中心は酒場や宿屋以外閉まっていた。そして城外への門に歩いて行くとぽつぽつと冒険者らしき装備の者達も城外へ向かっていた。
オサムは門の小さな冒険者用の2重扉を出て、城外に着いた。
「さてと、レベル1の強さは・・・」とオサムはサーベルを抜いた。




