27話 注文と買い物
朝になり、オサムが起きたときにはリムルは居なくなっていた。服も無い
オサムは昨晩の事を思い出しながらしばらくベッドで横になっていた。
そして、着るものを着て、書斎に入り現在進行系で建てられている屋敷の図面を見ながらノートに書き写していった。
風呂場は作れるとして、湯を沸かす仕組みを書き起こさないとな。
水も引いてこないといけないし、頭の中でイメージした図を鉛筆で書き起こしていた。
その時、ドアがノックされ
「失礼いたします、エリトール様、朝食をお持ちしました。」
リムルが来た。
オサムはいつものように呼び入れずに、自分で扉を開けた。
「おはよう、リムル。起きたら居なかったけどどうしたの?」オサムが訊くと
「少し早く起きて侍女部屋へ戻ってました。私達は起床が早いので、その前に」
リムルはオサムの顔を見てまた頬を赤らめた。
「そっか、じゃあよく眠れなかったんじゃないのか?」と訊くと
「一日くらい平気です。昨晩はベッドで眠らせていただきありがとうございます」
リムルはいつもの侍女の顔に戻っていた。
「ベッドルームは二部屋もあるんだし、寝心地が良いなら使っていいよ?」
とオサムが言うと
「そういうわけにはまいりません、エリトール様は主様ですから」
『うん、いつものリムルだな、これ以上は深入りしないでおこう』とオサムは決めた。
朝食を済ませ、今日は屋敷の方へ行こうと考えていた。
『なんだかもうリムルちゃんって呼べなくなってるぞ?俺。いきなり呼び方が変わるとクリューズ辺りが怪しむな』と考えた
「今日は屋敷の方へ行こうと思う。もう骨組みは大体出来上がっているようだしね。
リムルちゃんも一緒に来てくれよ、その後街へ買い物に行こう。」
滅多に屋敷や城を出ることのない侍女は街へ出ることもほとんどない。
しかし、元々が街の住民なのでよく知っているだろう。と、オサムは考えていた。
外着に加えて防護服、つまり防刃着を着用し、腰にサーベルを下げて出かけた。
今回はクリューズが居なくとも良い、銀貨もたっぷりと用意した。
オサムはリムルを連れ出して、建築中の屋敷を見に行った。
「棟梁は居るか?」と訊くと「へい、今行きます、エリトール様」とガッチリした体型の男が6割方出来ている屋敷から出てきた。
「実は、この間取りを見たんだがな、1階部分に風呂場を作ってもらいたい。」
オサムがノートを見せて「この部分だが、可能か?」と訊いた。
「そりゃあ、出来る限りの要望にはお応えしますが、フロバとは?」と言われ
「湯を沸かして浴びる場所だ。全身浸かるところでもある。」と答え
「部屋数がかなりあるが、そのうちの1つ、先程のここを開けておいてもらいたい。詳細は後で教える。
あと、2階の部屋はこのままで良いが、私の主室近くに侍女用の部屋を作っておいてくれ。
あ、言い忘れていたが、大理石でも何でもいいが防水性の高い石を用意してくれ、一つは出来るだけ大きいものを。」
「さて、街へ出ようか、リムルちゃん・・だとおかしいな、街ではリムルと呼ぶよ?」
「街へ出るのは久しぶりだし、リムルの服でも買おうか」
と軽く言ったが
「とんでもございません、私の服など。伯爵閣下から頂いております」
そう言われてもオサムは
「良いの良いの、俺も久しぶりの街だしね、色々行きたい。まぁ用事を済ませてからだけどね」
「じゃ、行こうか。」
オサムはリムルの手を引いて街へと降りていった。
「まずはここ、良さそうな鍛冶屋ね。剣と短剣を10振り程作ってもらう。甲冑と楯もね」
と鍛冶屋に入っていった。
「すまぬが、剣と甲冑の制作を依頼したい。誰か居らぬか?アキバ・オサム・エリトールだ」
と言うとすぐに奥から人が出てきた。
見るからに鍛冶師という初老の男だ。
「申し訳ありません、食事をしていたもので」
オサムは
「構いませんよ、押しかけたのは私の方ですし。
あ、そうそう、絵を描いてきたのだが、そのとおりに作れるだろうか?
あと、形状が変わっているので他の誰にも見せたくはないのだ。そこは大丈夫か?」
と言いながらノートを渡して見せた。
「これは剣ですか?見たこともない形ですが・・・甲冑も」
しばし鍛冶師は絶句したが
「素晴らしいですな、人生最高の作品に仕上げましょう。」
と興奮しながら返事をした。
「それで、材料などの購入に手付はどの程度必要かな?」
オサムが尋ねると
鍛冶師は
「材料はありますので、必要ありませんが、これだけのものとなると・・・
そうですな、一月では出来ませんのでその間他の仕事を止めて打ち込みますので」
と言葉を止めた
「ふむ、弟子や他の職人達の給金も必要だろう、いかほどになる?」
「そうですな、二月と考えて、銀貨500枚あれば専念出来ます。」
と鍛冶師が言うと
「な、二月で銀貨500枚とはまた、吹っ掛けますね!」
後ろでリムルが怒っていた。
「まぁまぁ、リムルよ、無理な注文をしているのは私の方だ、構わんよ。
銀貨500枚だな?後で城に取りに来れるか?他にも話があるのだが、その時に言おう。」
オサムがそう言うと
「わかりました、明日の昼でよろしいでしょうか?」
「それで頼む。名はなんという?城の番兵に言っておかねばならぬのでな」
一鍛冶師が城の門を通れるわけがない。クリューズと伯爵にも伝えておくべきか。
「ガストル・ビーツと申します」
鍛冶屋の名前をノートに書き、その部分をちぎってポーチに入れた。
「ではビーツよ、明日の昼。頼むぞ」
オサムの新しい剣を作るには相当な労力が必要であることはわかっていた。
銀貨500枚が手付けで、残りは口止め料と合わせて3000枚というところか。
「エリトール様、普通の剣でしたら銀貨10枚もあれば買えますよ?
手付で銀貨500枚なんて呆れてしまいます。」リムルはそう言うが
「リムルの胸の宝石は幾らだったかな?」
とオサムが言うと
「あ、はい・・・そうでした。申し訳ありません」と黙った。
「まぁ、それは異世界のものだからね、この世界には無いから仕方ない。
同じように、さっきの鍛冶師に注文したものもまだこの世界には無いものなんだ。
高価でも仕方がないよ?」と言いくるめた。
「さて、次はリムルのものを買おう。止めようとしても無駄だぞ?」
オサムがそう言うと
「はい、わかりました。けど高価なものは控えて下さい、お願いします」
リムルは諦めたようだった。
「ここが服屋通りか?かなり多いな、片っ端から見ていこう、まずは寝間着だ」
「小物もいいな、いくつか買おう、お?良い櫛がある」
「リムルに似合う服はこれだと思う」
「このバングルとネックレスもきっと似合うぞ」
等々言いつつオサムは散財した。ざっと銀貨280枚程だ。
「エリトール様、このような品々、侍女部屋には置いておけません・・・」
リムルが言うと
「じゃあさ、俺の部屋に置いとこう。屋敷が建てばリムルは個室だし、その間だけな」
リムルはオサムに圧倒されてしまっていた。
楽しい買い物ではあったが、買ってもらいすぎだと感じていた。
「何故エリトール様は私にいつもお優しいんですか?」
とリムルがオサムに疑問を投げてきたので
「リムルのことが好きだからね、俺」と軽く言ってしまった
『ヤバ!また本音が勝手に口から出た』と即座に
「おしとやかで、俺に気遣いしてくれて、可愛くて、働き者で、賢い子だ」
「それに・・・俺を好きだと言ってくれた。そういうことだよ。」
とリムルに何も言わせないように話した。
なのでリムルは
「ありがとうございます・・・」としか言えなかった。
帰り道は流石に大荷物を持って居たため馬車に乗って城まで戻ることにした。
「なぁリムルちゃん、やっぱり買いすぎたよな?これ」
とオサムが笑いながら言うと
「ホントですよ、馬車がなければ帰れないところでしたよ、エリトール様」
リムルも楽しそうに笑った
それを見てオサムは幸せな気分になれた。




