22話 空腹と再開
オサムは当面の間は城暮らしということだった。屋敷が建つまでは。
その屋敷とやらが出来上がるまではだだっ広いが、一部屋というか広い2つのベッドルームに応接間、書斎のある部屋が与えられた。
『これでも落ち着かねぇよぉ、それに腹減ったぁ』と部屋をこっそり抜け出して、先程の大広間に歩いていった。
そこでは片付けの真っ最中だった。
「すいません、ちょっと良いですか?」と近くの執事風の指示をしている男性に声をかけると
「これはエリトール卿、何か御用でしょうか?」と言われたので
オサムは
「すいませんが、何か食事余ってませんか?腹が減ってしまって・・・」
と言うと
「余り物などとんでもない、料理長に作らせますのでお部屋の方でお待ち下さい」
と返された。そしてその執事風の男性が片付け中の侍女に話しかけるのが見えた。
『なんだか高級ホテルのルームサービスみたいだなぁ、行ったこと無いけど』
オサムは一旦自分の部屋に帰ることにした。
30分程度すると扉がノックされ「失礼致します」と着替えを手伝ってくれた侍女が料理を運んできた。
「あ、君は!あれ?名前なんだったっけ?」とオサムが言うと
「リムル・シャッセと申します。エリトール様の専属となっております。何なりと申し付け下さい。」静かに返事が帰ってきた。
「そうか、名前聞いてなかったんだ、ごめんごめん」と頭を掻き「あのペンダント気に入ってくれた?」と尋ねた。
「私などには勿体無い品ですが、身につけさせていただいております」そう言って襟元から出してみせた。
「それはブルートパーズって言ってね、明るい希望をもたらしてくれるんだ。
あ、これは伯爵閣下に言わないといけないのかな?俺、今度屋敷を持つことになるらしくて、よければ住み込みの女中?侍女?になってくれないかなぁ?君、話しやすいし」
オサムはここに来てナンパの技術が上がったらしい。
「私などで良ければ喜んでお世話致しますが、伯爵様のお許しをいただかないと・・・」
と言うので
「うん、そうだね、俺から言っておくよ、それ」と軽く流した。
『やったね!あっちの世界だったらこんな簡単には行かないよね、って言うか屋敷なんかゼッテー持てないよね、ほんと・・・すげーなぁ、ここは、俺モテ期だし♪』と考えたが、別にオサムがモテないわけではない。
長身で程よく鍛えられた体と端正な顔立ちでモデルも出来るような男だったが、
残念なことに”極度のオタク”だったのだ。
「じゃあ、ありがとう、食べ終わったら調理場に運んでおけば良いのかな?」
とオサムが言うと
「とんでもありません、エリトール様の食事が終わるまで待って居ります。」
リムルが言ったが
「そうなの?じゃ、急いで食べるね。そこに座って待ってて」
と、椅子を指差した
「出来ません、エリトール様の椅子です」と言うので
「もう、かたいこと言いっこなし、誰も入ってこにゃいんはから、座れれいいろ」
食いながら喋るのは無理だったので言い直した。
「誰も入ってこないんだから、座ってていいよ、つか落ち着かないから座ってて」
「ご命令であれば、失礼します」リムルが申し訳なさそうに座った。
「ふぃ~食った食った。ありがとね、えと、リムルちゃんでいいかな?」
「どのようにでもお呼び下さい。」
「うん、じゃあリムルちゃんで」とオサムはテーブルからワゴンに食器を置いていった
「あ、そのようなこと私が致しますので」
リムルが言った時にはテーブルが片付いていた。
「じゃ、残業させてごめんね?リムルちゃん。あとよろしくお願いします。」
「わ、わかりました、御用があればいつでもお呼び下さい。私は5番の侍女部屋にいますので」
『なんだかなぁ、やっぱり毅然としないとダメなのかな?俺エリトール卿だもんな』
イマイチ立ち位置のわからないままオサムの夜が更けていった。




