21話 夜会
夜会だかなんだかの宴会が始まった。
思っていたのとは違う立食形式だった。
オサムは
『立食パーティーなら何回か行ったことあるし大丈夫だな』
城の大きなホールには見た限り100名程度の貴族?のような人達が集まっている。
奥の最上段には伯爵が居るのが見てわかった。
オサムはクリューズと一緒に来たのでかなり安心できた。
しかし
オサムが入ってきた時に
「紹介しましょう!私の命をその身を捨てて救った、エリトール卿です!」
と扉近くのオサムに
「では、こちらに来られよ、エリトール卿」と伯爵に呼ばれた。
拍手が響く中、気まずいオサムがクリューズに半ば引きずられて壇上に上がった。
そして
「あらためて紹介しましょう、今回の功績により名家であるエリトール騎士家を継ぐこととなった、アキバ・オサム・エリトールです。」と伯爵が言うと
盛大な拍手がまた起きた。
『えぇ~こんなのにも慣れないといけないの?胃が持つかな俺』とオサムは泣きたくなってきた。
形だけの挨拶を済ませ、壇上から降り、クリューズかロレーヌを探した。
クリューズはどこかの貴婦人と談笑中だったのでロレーヌを探すことにした。
広い部屋を真剣に探していると、テラスに女性の姿が見えた。
ロレーヌならこんな宴会は好かんだろう、という直感でオサムはテラスに出てその女性に近寄っていった。
「ロレーヌさんですか?」オサムが尋ねると、その女性が振り向き「オサム?」と言った
その瞬間オサムは安堵し、力が抜けた。
「私は昔からこういうのが苦手でな、しかし出ないわけにもいかんのでいつもこうやっている」
ロレーヌが言うと
「わかります、俺も苦手で・・・というか初めてですよこんなのは」とテラスの壁に寄りかかった。
「オサムはあちらの世界では貴族ではないのか?奇妙な宝物を持っていたり、あのように美味い菓子を食して居るのだろう?」
『いや、それ違うから、実用品だし、土産菓子だし・・・ま、いっか』と考え
「貴族とは違いますね、のんびりと好きなことをして暮らしてましたが」と答えた
突然ロレーヌが指を指して
「見えるか?オサム、あれが私の屋敷だ。」見るととんでもない大きさの屋敷が建っていた。
「それとその横に森が有るだろう?城下ではなく城内になるが、あそこにオサムの屋敷が建つ。
『はぁ?なんですかその独身寮・・・屋敷ですと?そんなの維持できねーし俺』
と考えながら
「屋敷といっても俺は独り身だし、家族も居ないのに掃除もできませんよ」オサムが言うと
「掃除?そんなものは召使のすることだ、主は務めに励めば良い。と言っても、今夜のような夜会や軍務などだがな。」とロレーヌは言う
「エリトール家はフルグリフ伯爵家の筆頭騎士の家柄だからな、恐らく年間の税は私のマンセル子爵家と同じく銀貨15万枚は下らん領地を与えられるはずだ。心配するな。
それに、伯爵に献上した様々な品の褒美として銀貨30万枚が与えられるらしい」
そう言われてもオサムはピンとこなかった。そもそも銀貨1枚の価値がわからない。
「ロレーヌ様、お聞きしてもよろしいですか?」とオサムが言うと
「何だ?私が答えられることなら教えるが?」とロレーヌは言った
「銀貨1枚で庶民は何が買えますか?」との問いに、ロレーヌは首をかしげながら
「庶民が1ヶ月暮らせる額だな、住み込みの侍女の月の手当もそれくらいだ」
『げ!円で言っちゃだめだったじゃんか・・・それであの侍女が驚いたのか』
と考えながら侍女を思い浮かべていた
『ロレーヌも綺麗だけどあの侍女の子可愛かったなぁ・・・』
「何をニヤニヤしておる、気持ちの悪い」とロレーヌに小突かれた。
「っていうか、銀貨30万枚に年間15万枚ですか!?」
何に使えって言うんだよ、とオサムは思った。
そしていきなりグイっと腕を捕まれ
「ちょっと付き合ってくれ、いつまでも此処にいるわけにもいかん、戻らねば」
その頃になると宴も終わりの様相であった。
ロレーヌがオサムを連れて帰ってきたので何人かがコソコソと話をしていた。
「俗物は放っておけ、好きなように言わせておけば良いわ」
相変わらずだなぁとオサムは思ったが、その言葉で助かった。
しばらくしてから伯爵の挨拶で夜会は終わった。
しかしオサムは思ったのだ
『晩飯食いそびれた』と。




