17話 突然の終わりと始まり
帰りは早かった。伯爵の弟を見つけた階層の真上が気になるが、やはり人数で押し通せるだろう。
「すみません、クリューズ様。これで今回の任務は完了ということでしょうか?」
オサムが尋ねると
「クリューズ様はよして下さい、クリューズ家よりエリトール家の方が家格は上ですよ。伯爵様に連なる家柄です。それはともかく、今回は目的が達成されましたので一旦城に帰ります。」
『え!?え!?なんですとぉ!?伯爵家の分家?もうわけわかんねぇし・・・』
オサムに与えられた物の大きさを知ったような気がした。
「そんな大事な家を俺が継ぐんですか・・・」申し訳なさそうにオサムが言うと
クリューズが
「閣下が決められたことです、我々はそれを受け入れるのみです」と答えた。
『やれやれ、もしかして舞踏会とかに出ないとイケナイとかか?やだなぁ』オサムは急に緊張した。
『元の世界じゃ考えられないじゃんかよ』
順調に登っていくと、激闘があった広間は静まり返っていた。
その次の層もまたその次の層も、順調に何事もなく通り過ぎることが出来た。
ガースのマッピングのお陰でスムーズに登り階段が見つかるので非常に楽だ。
そろそろ残り5層というところになってスケルトンが現れたらしい。
徘徊かリジェネレートだな、どうということはないだろう。オサムは考えて居ると
あっさりと前衛が片付けてくれた。
あの広間の戦闘を見れば安心出来て当たり前である。
前衛が階段を登りきり、伯爵の護衛団が階段を登ったときにそれは起きた。
オサムの斜め前、伯爵の真正面の空間が揺れてスケルトンが現れた。
クリューズとロレーヌが同時に「リジェネレートか!」と叫んで動いたときには遅かった。
そのスケルトンは伯爵目掛けて弓を引き、矢を放った。
オサムの反射神経が勝手に動き、矢と伯爵の間に入り込んだ瞬間
その矢がオサムの左胸を貫いた。
『あれ?』とオサムは思った『これって死ぬパターン?だよね?』
オサムはその場に倒れ込んだ。
薄れてゆく意識の中でクリューズとロレーヌがそのスケルトンを叩き切っていた。
『伯爵は?』と後ろを見ると無事だった『良かった・・・』と考えつつ意識を失った。
しばらくしてオサムは起きた。柔らかいベッドの上で周りを見渡すと見覚えのある部屋だった。
『ここって・・・えーと・・・』ガバッと起きて「俺の部屋じゃん!」と驚いた。
「何なんだ?何が起こった?」まず矢が刺さったはずの胸を確認したが、傷はない。
「服は、これ、あれ?」と時計を見ると、あの事故の1ヶ月前だった。
「異世界に行った上にタイムスリップかよ~勘弁してくれ・・・俺こんな世界に用はないんだよなぁ、あっちのほうが性に合ってる。
戻る方法って有るのかなぁ?またあの飛行機に乗るか。」
秋葉オサムは軽い男だった。
『しかし、考えてみればあと1ヶ月有るんだったな、賭けになるけど向こうの世界で使える道具を買い集めるか。』
オサムは早速貯金を全部下ろし、いろんな道具を買い集めることにした。
まずは防刃グッズだな、着たまま飛行機に乗れる。武器はダメだ、コンパスと双眼鏡も買っておこう。
他には?着火装置か、ライターやマッチはダメだな。マグネシウムのファイアスターターが良い、いくつか買っておこう。
筆記用具も必要だな、ノートを少しと鉛筆、ボールペンそれに万年筆にしよう。
サバイバル?だよな、えーと・・・ソーラーパネルと充電池を多め、フラッシュライトくらいしか無理か?
そうだ!本を買おう、出来るだけ実用的な、サバイバルの本と医学書だな。料理の本も必要か。
オサムはたっぷりとある準備期間を買い物に費やした。




