12話 美女の正体
伯爵とオサムのやり取りを聞いていた暴力女は
「閣下、得体の知れぬ者にそれは待遇がよすぎるかと」
と言ってきたが
伯爵は
「もう決めたことだ、つべこべ言うな」と言うと
「承知致しました」と女はオサムを睨んだ
『なぜ俺が睨まれなきゃならねーんだよぉ、もう怖すぎるんですけど』
勝手に話が進められた挙句に美女に嫌われてもうオサムは凹んでいた。怒りを露わにしながら歩いて行く美女を見ながら
「俺が何をしたっていうんだよ、もう」とボヤくと
「すまんな、あれは弟の娘で名をロレーヌと言う。あの通り男勝りで困っておるのだ。」
と伯爵が説明してくれた。
『えーと、伯爵の弟の娘・・・貴族じゃん!』とオサムは驚いた。
「すごく綺麗な方ですね、俺にとっては雲の上の存在です」
と言うと
「そうか?あれの上の娘の方が器量は良いぞ?おぉ、それならロレーヌを娶るか?あのような勝ち気な娘を引き受けてくれる者は居らんのだ。オサムも騎士になることだ、問題無い。」
伯爵は笑いながら言ったが、なんとなく本気のように聞こえた。
オサムは二度と会えないような美女に一目惚れしていたのだが、尻に敷かれるだろうな、と考えている自分に気付き
『いや、俺なんかが好きになっていい相手じゃないし、あまり期待しないでおこう』
「それも有り難い言葉ですが、俺なんかと釣り合う方では無いですよ」
諦め半分に伯爵に答えた。
キャンプの用意が出来た、今晩はダンジョン前で露営するようだ。この人数なら何が来ようと安心できる。改めて放り出されなかった事を幸運に感じていた。
「オサムは閣下の近くのテントに入れ、クリューズと同じテントで5人用だ」
ロレーヌが指示をくれた。
そして
「私は反対側のテントで眠る。何かわからぬ事があれば聞きに来い、クリューズは喋らんからな」
通常の対応に戻っていた。
『何?この子ツンデレ?』と同時に
『伯爵が言ってた護衛10人がこっちのテントとあっちのテントか』と考えているときに
「オサム!日が落ちる前に水を汲みに行くぞ!」とロレーヌが言ってきた。
20名ほどの男を連れている。
「剣は忘れるなよ?何が起きるかわからんからな。」
と言われ
『なにそれ、20人の武装した剣士を襲うような何かが居るの?こえぇよ』と思いつつ
「分かりました」と岩から流れ出しているという水場へと向かっていった。
台車に樽を4つ積み込み、バケツ代わりの小さめの樽をもう1台の台車に積み込んだ。
10分程歩くとその水場が見えた。泉のようになっているが、岩から湧き出す水を汲み台車の樽に移していった。
満タンになった頃に
「ではお前らは陣に戻ってよし。オサムは残れ」と言われた。
『二人っきりになって何するつもりですか?事故で俺死亡ってことになるの?もうやだよぉ』
と考えているとロレーヌとオサムを残して皆が帰っていった。
ロレーヌが剣に手をかけたときに
『やっぱり?』とオサムは考えたが
鞘ごと剣を外し着ているものを脱いでいった。
「オサム、何をしている?お前は水浴びせぬのか?」と言われ
『そっちかよ!意味深な事言うなよなもう!ってえええ?素っ裸!?』と考えてる時に
「水浴びするのならお前も脱がんか、心地よいぞ」と誘われた
『えーと、こんな美女の裸を見て、いや、見るだけのほうが失礼か、わからん!』と
「入ります」とさっさと脱いで泉に飛び込んだ。
「こら、ゆっくり入らんか、武骨者が」怒られたが
「心地よいだろう?今日は暑かったので汗を流したくてな、水汲みのついでだがこれが目的だ」
ロレーヌは言った
『よく見ると色々な場所に傷があるな、昔から戦っていたのか?しかしスタイルも良いな』オサムはじっとロレーヌを見ていると
「ん?傷か?姉上と違い男として育てられたからな、古傷は多い。珍しいのか?」
と訊いてきた
オサムは焦り
「いや、その、綺麗で見とれてました。」と本音を言ってしまった
『何を言ってんだよ俺、そこは・・・いや俺には良いコメントは無理だ!』と諦めた。
「ほう、初めて言われたが、悪い気はせんな。私も女ということか」と笑ってみせた。
『そういうことじゃないでしょーが!』オサムは思ったが雰囲気が良かったので
「俺が初めてですか、正直美しいと思いますよ」と微笑み返した。
驚いたことに、一切の下心が失せていた。




