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終わったならまた始めればいいじゃないか  作者: 朝倉新五郎
降臨した神
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第6話 東グレイス帝国

 「リムルー?」オサムが呼ぶと1階から階段を上がってきた。

 「何でしょう?ご主人様」リムルが尋ねると


 「俺、王様になっちゃった。グレイス国王なんだってさ」

 オサムもわけがわからないまま話が進んだので実感がない。

 それを聞いてリムルは

 「はい?国王陛下ですか?グレイス王国?聞いたことが無いですが」

 そう言われオサムは説明を始めた。


 しかし、肝心なところはぼかしていた。自分が聖騎士であるということを。


 「グリーシア帝国と同盟ですか、私にはわかりませんがすごいことなのでしょう?」

 リムルがわからないのは当然だったが、伯爵にも言わなくてはならない。

 オサムは城へと向かった。


 伯爵にグリーシア皇帝とのことを伝えると

 「やはりな、武に秀でてはいるが、軍略や政治の才もある・・・か、さすがグリーシア皇帝」

 「聖騎士とはそう言う存在ということだな、全ての戦を無くせるかもしれん」

 伯爵は明らかにオサムの扱いに悩んでいた。他国に利用され始めたのだ。


 オサムはと言うと、それはどうでも良かった。

 ただ、自分が王になったということで、王都、特に城を中心に改装させた。

 風呂とトイレは絶対に譲れない。

 屋敷や迎賓館も含め、他は任せることにした。


 オサムが手に入れたグレイス王国の領土は大陸でもかなり豊かな土地であり、交易路も通っている。

 他国が虎視眈々と狙うのもわかるが、それを皇帝はいきなり手放した。

 巨大な帝国の小さな領地とは言え帝国にとっては痛いはずなのだが、それ以上の効果があるのだろう。

 10万以上の兵を常時維持しておくことと天秤にかけたのかもしれない。


 オサム一人で百万の兵に匹敵する。

 それが皇帝の出した結論だったのだろう。


 しかしオサムは記憶がほとんど戻らない。戸惑ってばかりの毎日だった。

 それでもリムルの顔を見るだけで心が解ける。それが記憶に関係しているのは分かっていた。

 恐らく以前愛した女性なのだろう。

 だが、オサムは結論を急がず待つことにした。


 オサムは皆が自分の事に関心を持つのでクリューズと言う騎士に聞いてみることにした。

 「聖騎士様は神に一番近い存在なのです」そう言われたが

 グランパープルでは”神々の一人”と言われた。


 剣のことでも色々と言われたので尋ねると

 「意識を集中して剣を見るのです、そして自分のことを考えるようにすると自分のレベルも見えます」

 オサムは腰の剣を見るとぼうっと浮かんだ、トールアーク、インペリアルセイヴァーLv500、と見えた。

 同じく自分にも意識を集中してみた。”Gods”レベルは無い。

 恐らくインペリアルセイヴァーと言う者の上位の存在なのだろう。

 「見えますね、インペリアルセイヴァーでレベルが500、これが聖騎士ですか?」


 クリューズは

 「それはその剣を扱えるレベルのことです、歴史上存在しませんが。自分のレベルはわかりましたか?」

 そうオサムに尋ねると

 「はい、インペリアルセイヴァーではないです。Godsになってます、レベルは有りません」

 「Gods?!なんですかそれは?」と訊かれたので

 「確かグランパープルでは神々の一人だと言われましたが、これがそうなんでしょうか?」

 オサムは訊き返した。


 クリューズは次の言葉が思い浮かばなかった。神々の一人?それならば納得できる材料である。

 「しかし、いや、私にはわかりません、エリトール様。理解の範疇を超えています。」

 オサムにとってはどうでも良かったが、答えは無いのかもしれない。

 それはそれでいい。ゆったりと暮らせている。


 自分が何者なのかはもう知っている。秋葉オサムだ。

 それで良い。



 グレーシア皇帝からもらった城の改築や屋敷の建築が終わったらしい。

 オサムはグランパープルに飛び、ライツェン王国から出ても良いか訊いた。

 守護者はそうすべきだと言う。

 そのため準備を整えていった。


 ライツェン国王の所へ行くと「聖騎士様よくぞいらっしゃいました」と言われた。

 どうやら他国も知っているようにライツェン国王も知っているようだ。

 グレイス王国に移ろうと思う、という事を伝えると祝わせてくれと言われた。

 同盟を結びたいという旨の話もしたので恐らく同盟祝いなのだろう。

 オサムはそういう事は苦手だが断るのも失礼だと考え了承した。



 当日、グレイス王国とライツェン王国同盟の盛大な宴が開かれた。

 国中の貴族が集まったのだろう、かなりの人数だ。

 その中には伯爵も居たので話をしてバルコニーへ出た。

 テープルと椅子を用意し食事や飲み物が出され、給仕係がバルコニーの出入り口付近に立っている。


 そこへ一人の女性がやって来た。

 「グレイス国王陛下、以前伯爵閣下の城でお会いしましたロレーヌ・マンセルと申します」

 そしてその後ろにも誰かが居た。

 「この子はファシリア・ユーリヒといいます。よろしければご一緒しても?」

 ロレーヌと言う女性が言うので、従者である3人も呼んだ。


 オサムは食事をしながらふと横を見るとバルコニーに一人で出てきた女性が居た。

 男の数のほうが多いためその女性にも声を掛けることにした。

 名前をミーシャ・ツォレルンと言う男爵家の令嬢らしい。


 この3人の女性も自分の記憶に関係しているに違いない。

 ひと目見た時に会っている様に覚えたからだ。特にロレーヌという女性には強く惹かれる。


 7人で楽しく話をしながらオサムは記憶を探ったがやはり思い出せない。

 しかしそれでも構わなかった、徐々に記憶が戻るのだろう。

 クイード達3人やロレーヌという女性達3人には他者と違う感覚で接している自分を知った。

 親しくしていた者たちなんだろう。恐らくだが。


 宴も終わりに近づき大広間に戻らなければならなくなったので、3人の女性に

 「いつでもグレイスに来て下さい、歓迎しますので」そう言って席を立った。


 ライツェン国王と公式の文書を取り交わし、盛大な拍手で式典は終わった。



 オサムはグレイス王国と伯爵の城を行ったり来たりしていた。

 グリオンとレギオーラに出向き、ライツェン国との間にある領土の買収も持ちかけた。

 脅したわけではないが、オサムに言われて断れる国王など居ない。

 それぞれ銀貨1億枚と言う膨大な金額を提示すると二つ返事で小さな領土をグレイス王国に売り渡した。

 これは両国の国家予算の5年分に相当する。


 気兼ねなくライツェンとの往来ができるようになった。

 屋敷や城が持てたのは良いが、信用できる者がほとんど居ないのが問題だった。


 オサムは伯爵に相談し、侍女を1名そして5人の従者と召使いを10名程度引き渡された。

 この者達を連れてグレイス王国に完全に移住することにした。


 伯爵領からグレイス王都までは馬車で10日も掛からない。途中に街もあるため楽しい旅だった。

 モンスターもオサムやクイード達の騎乗するナイトメアを恐れて出て来ない。


 王都に全員が付いたときには屋敷等の建物や城も完璧に出来上がっていた。

 オサムは城に入ると懐かしく感じた。これも以前の記憶が関係しているのだろう。


 オサムは少しでも胸に引っかかる人物を片っ端から集めた。ビーツやクライアンも呼んでいた。


 ただ、妃の居ない王なので各国から姫君を紹介されるのが疎ましかった。

 オサムは形だけ、という理由をつけてリムルを強引に公爵にして妃にした。

 リムルは嫌がっては居なかったが身分違いということで遠慮していたためだ。


 伯爵や同盟国であるグリーシア帝国、ライツェン王国の手助けで行政等の組織は作り上げた。

 攻め込んでくる国はまず無いのでオサムは城でゆったりと過ごした。

 グリーシアの騎士や剣士は半分程度本国に戻ったが、引き続き残る騎士や剣士も大勢いる。

 戦に備えることもないので警察機構を作りそこに騎士や兵士を配属した。

 総人口500万人に対して5万人の警備兵数なので犯罪率はみるみる低下していった。


 牢を作ると経費がかさむため、懲罰は罰金と流刑のみにした。

 丁度グレイス王国の南に脱出不可能な島があるのでそこを使うことにした。

 完全なジャングルのため、最初だけオサム自身が人の住める島へ少し開発した。

 流刑者を運ぶにはグレートドラゴンが必要だが、騎士レベル95以上でないと扱えない。

 オサム自身が運ぶことにした。


 

 その内にオサムは鉄が不足しだしたため、作ることにした。

 グリーシア帝国の向こう、砂漠や森林地帯で鉱山を探して廻った。

 砂漠に大規模な鉄鉱石鉱山と石炭鉱山を見つけたためその周辺の都市国家を全て従えた。

 東の端のシャングール帝国の領土までオサムの支配が及ぶことになった。


 また、森林地帯でも有望な資源が見つかるので目印として周囲1キロ程の木を斬り倒した。

 その場所に石材を運び、都市を作るまでの間放置した。まだ移民させられるほどグレイスの人口は多くない。


 その間に高炉や転炉を図面どおりに作り用意は出来た。

 後はコークスと鉄鉱石があれば量産できる。



 その用意をしていたときだった。東のシャングール帝国が軍を動かした。

 国境近くの都市には用心させていたが、突然国境を越え数十万人の軍が進軍してきているらしい。


 オサムはすぐにグレートドラゴンで向かった。

 確かに数十万人の軍が城塞都市に近づいてきている。


 オサムはその軍の先頭にグレートドラゴンで降り立ち

 「既に我が領土に侵入しているが、引き返してもらいたい」

 「そうでなければ全員を殺さざるをえないが、どうする!」そう叫んだが敵は進軍を止めない。


 『嫌だけど仕方ないか』と考えてグレートドラゴンで焼き払っていった。

 一部ドラゴンのブレスが効かない者が居たが、それはオサムが自ら斬った。


 そしてオサムはシャングールの帝都にドラゴンで降り立った。

 暫くすると2000人程度の兵を引き連れて将軍らしき人物が出てきた。


 「用件は何だ?」と訊いてきたが

 「我が領土に侵入した目的は?」と問い返した


 「領土の拡大だが?何が悪い?皇帝陛下の勅命だ」と言ってきた。

 「皇帝?では皇帝を出せ!」オサムは言い返した。


 「お前のような者が陛下に会えるか!」そう言われたのでドラゴンに乗り櫓などを焼いて破壊した。

 そしてまた降り「このままこの国を焼き尽くしてもいいが?」ただの脅しだが効果はあるだろう。


 「少し待て」と言い、皇帝を強引に引きずり出してきた。


 「何をする!ロウ!」と言われながらだが、そのロウと言う将軍は何も言わずオサムの前に皇帝を連れてきた。

 取り乱し慌てふためく皇帝にはグリーシア皇帝のような威厳は全く無い。

 「どうする?」オサムが言うと

 「何をだ!?」と皇帝が言うので

 オサムは「俺にこの国を譲るか死ぬかだが?民と一緒に灰になるか?」と言うと

 皇帝は「お前のような者にこの帝国を渡せるか!民とともに滅んでやるわ!」と答えた。


 オサムの怒りが一気に吹き出し、そのまま皇帝を真っ二つにして石作りの舗装が割れ、その剣撃は200メートル先まで破壊した。

 「民とともに死ぬだと?お前に皇帝の資格はない!」


 その様子を見ていたロウと言う者に向かって「次はお前だ、どうする?」と訊くと


 後ろの兵に向かって「この国を譲り渡す!皇帝に連なる者すべて斬ってこい!」

 そう命令を下した。恐らくロウの私兵か皇帝よりよほど慕われているのだろう。


 数百の老若男女が引きずり出されてきた。

 「そこまでするのか?」オサムは少々気分が悪かった。


 「ここまでせねばこの国は滅びる、一部の者達が国に寄生しているのでな、いい機会だ」

 「これで、この国は救われるかも知れぬ、お前次第だが」ロウは現在の帝国を危惧していたようだ。


 「お前の名は?俺はアキバ・オサム・グレイスだ」と言うと

 「私はロウ・ウェン、この国の宰相であり大将軍でもある。いや、だった、か。この国はもう終わっていた」

 憎々しげに並べられた遺体を見て「奴らが国を食い物にしていた、民は疲れきっている」


 オサムは「そうか、では今年は無税その後の税は2割とせよ。当面の国費は我が国から出す、安心せよ」

 「1年で銀貨何枚必要になる?」ロウに訊いた

 「銀貨ならば3000万枚程度ですが」そう答えてロウは黙ってしまった。

 そんな大金をポンと用意できるわけがない。


 「わかった、では3億枚持ってこよう、一度戻るがすぐに来る。」

 オサムは続けて

 「皇帝に媚びて財を成したものや、何もせぬ貴族の財産を没収する。1ヶ月後までにこの場に集めよ。

  断るものが居るならば全財産を没収して砂漠に放り出せ。では一旦帰る」

 オサムは飛び立っていった。

 ロウは提示された金額とオサムの考えに唖然としていた。


 2日後オサムが姿を現した。ロウを呼ぶとすぐに出てきた。

 「銀貨を持ってきた、蔵に案内しろ。」そう言って蔵に着くと

 「国庫はこれだけか?」見たところ数万枚の銀貨しか無かった。

 「約束の3億枚持ってきた」とオサムは数ある蔵をことごとく銀貨で埋めていった」

 貴族の領地全てを皇帝直轄の領地にして税を下げても5年は持つはずだ。


 「それでロウよ、後宮はあるのか?あるのであれば女は家に返して後宮を壊せ、俺には用が無いものだ。」

 オサムはリムルという妃が居るため必要がなかった。

 「他にも奢侈な行事はできるだけ控えて国の再建に努力しろ。」

 「最後だが、この国を乱す者達は居るか?旧皇帝に忠誠を誓った軍や外敵などだが」

 オサムが言うとロウは説明しだした。


 「北方の敵とその防衛のための軍だな?今から片付けてくる」

 オサムはそう言い、北方の騎馬民族を全滅させ、旧皇帝派の軍を取り除いた。

 

 オサムが「約束通り金も与えた、敵も潰してきた、俺を皇帝にしろ、今すぐにだ」

 そう言うとロウが儀式を始めた。簡単な儀式だがオサムはシャングールの皇帝になった。

 そして国名もグレイス帝国と改めた。

 王国と砂漠地帯、それにシャングールをオサムは得た。


 例の商人や貴族の件も全員銀貨1000枚だけ渡し、城下に住まわせるよう言い付けた。

 必要ならば相談しに来い、とペガサスの笛も渡した。


 「暫くこの国を頼む、」

 そう言い残して去っていった。

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