表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

剣になれない人剣 1

「いや! 離して!!」

街道の真ん中で人相の悪い男二人と緑髪の女の子がもめていた。

「大事な売りもん逃がすわけないだろうが!」

「お前は売られたんだ。帰るとこもねぇんだよ!」

ガタイのいい男に捕まれ、強引に馬車へと連れ戻されようとする女の子。

その子が土まみれになっている所を見ると、決死の覚悟で馬車から飛び降りたのだろう。


「おい、その子を放せ」

外の世界に来てみたら、いきなり胸糞悪い光景に出会ったもんだ。

「なんだてめぇ? 王子様気取りか?」

「痛い目見たくなけりゃ見て見ぬフリしときな」

二人は小馬鹿にした態度で女の子を馬車へ押し込もうとする。

「お願い! 助けて!!」

悲痛に助けを叫ぶ女の子を助けない人などいるのだろうか?

「わかった、すぐに助けてやる」

腰に携えた鉄製の剣を右手で抜く。

「なんだ? そのなまくらでやるのか小僧? こいつ捕まえとけ」

ガタイのいい男が女の子をもう一人に渡し、腰から短剣を取り出した。


「今更泣き言吐いてもしょうがねぇからな!」

言い終わりと同時に短剣を突き出す男。

その鈍い突きを半身捻って回避し、そのまま袈裟に剣を叩き付ける。

稽古用にできた鉄製の剣には刃がなかった。

斬ることが出来ないため、叩き付ける形になった。

その打撃を受けた男は後ろ向きへ倒れ、身もだえた。

刃があれば胴体を真っ二つにできる程の速度で叩き付けたのだから、肋骨を砕くのは易い話だった。

「次はお前か?」

「く、くそぅ! そんな装化できねぇ人剣(とけん)なんかくれてやるよ!」

そういって女の子を手放し、ガタイのいい男を馬車に乗せ逃げていった。




「あの……ありがとうございます」

涙を浮かべ、深々と礼をする女の子。

「いいってことよ! そんじゃ気をつけろよ!」

初めてした人助けは気分がいい。

浮かれた気持ちで先を行こうとした時、

「私も連れて行って下さい……」

両手で服を掴み、女の子は小さく震えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ