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あなたがいるこの世界で  作者: 宮沢弘
第四章: もしも私が
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4−4: ディスプレイ

 テリーが見ていることはわかっていたが、イルヴィンは壁のディスプレイを見た。10枚の大型ディスプレイが示す状態は、そのすべてがブルー、グリーン、イエローの間を行き来している。まれにオレンジになることもあるが、およそすぐにイエロー以下の状態に戻った。ただ、先程よりイエロー寄りであるように見えた。

 大型ディスプレイから手前のディスプレイに目を移すと、稼働率はやはり90%を超ていたが、正常率が90%を割り込んでいた。

「そろそろ来そうだな」

 そう言うと、左手を振り、テリーに机に戻るよう促した。

 イルヴィンが手前のディスプレイを叩くと、コンソール・ウィンドウは消え、大型ディスプレイが昨日の状態と今の状態を交互に表示に表示した。

 それど同時に、ディスプレイにアラートが表示された。


   WARNING

   YELLOW

    要警告

   ユニット交換実行

   YES/NO


 そのアラート表示はイエローのバックグラウンドに、黒く描かれていた。

「YELLOWか。ユニット交換実行」

 イルヴィンが呟いた。YELLOWであれば、障害の発生はおそらくないはずだった。

「ユニット交換同意」

 机に戻ったテリーが復唱した。それとともに、このセンター内にユニット間配線の変更、会社内にユニット間配線の変更の情報、さらに外部に向けて性能および速度の低下の警告が発信されたはずだった。

 大型ディスプレイにパージ対象のユニットが表示されると、百個ほどのユニットの表示がイエローからオレンジ、そしてまれにレッドに固定された。

 それに続いて、イルヴィンは別の壁にあるもう一枚の大型ディスプレイに、ユニットのパージと交換の映像を映した。16箇所の様子が映し出され、それか数秒ごとに何回か入れ換わり、そしてループした。

 いつもどおり、ユニットを積んだコンテナがレールに走り出し、ユニットの交換を始めた。

 大型ディスプレイに映し出されるユニットの状態表示を二人は見ていた。イエロー、オレンジ、あるいはレッドの表示の上に次々に”A”, ”B”, ”C”と表示され、あるいはさらに”D”, ”E”, ”F”と表示され始めた。”F” にまで至ったユニットの状態は、ブルー、グリーン、あるいはイエローの表示に落ち着いた。

 そうして、2/3ほどのユニットの交換が済んだ頃だった。テリーはおかしな音を聞いた。すぐ横で。イルヴィンが椅子から落ち、横たわっていた。

「イルヴィン! おい!」

 イルヴィンの横に駆け寄り、声をかけた。

「あ…… あ……」

 イルヴィンから返ってくる応えはそれだけだった。

「偶然か? これが偶然か?」

 テリーは救急の要請をしようと、イルヴィンの机の上に手を伸ばし、内線を取った。

「くそ! 俺は手順を知ってるぞ」

 アシスタントが出るまでに苛立たしさが増し、テリーは言った。

「講習を受けていないのに知ってる」

「サービスセンター・アシスタントです。ご用件をどうぞ」

「緊急。サービス監視員、テリー・ジェラルド。監視員のイルヴィン・フェイガンが倒れた。救急を要請する」

 2, 3秒の後、アシスタントが更に訊ねてきた。

「容態をわかる範囲でお願いします」

「意識がない。呼びかけにはかろうじて返事をする。それと、ユニットの交換作業中に倒れた」

「その情報を元に、救急を要請します。しばらく、監視とともに、対象の観察も行なってください。また交代要員の要請も行ないます」

 そこで内線は切れた。

「交代要員なんか要るか!」

 テリーは内線を放り出し、イルヴィンの横に膝をついて言った。

 それでもテリーが大型ディスプレイに目を戻すと、ユニット交換作業は終っており、ユニットの状態はおよそブルー、グリーン、イエローの表示に戻っていた。首を伸ばし、イルヴィンの机にあるディスプレイの表示を見ると、稼働率90%以上、正常率90%程度に回復していた。

「ユニット交換確認。イルヴィン・フェイガンの体調不良により、私、テリー・ジェラルドのみによる確認とする」

 テリーはイルヴィンの横に膝をついたまま言った。

「この既視感は何だ! この知識は、記憶は誰のだ!」

 テリーは床に拳を叩き付けた。


 数分間、テリーは拳を床に叩き付けていた。

 部屋の扉が開き、紺の制服に「HUMANLY INTELLIGENCE」という会社のロゴと、赤十字がプリントされた救命士がやってきた。

 彼らは持って来たストレッチャーにイルヴィンを乗せ、すぐに部屋から出て行こうとした。

「どうなっているんだ!」

 テリーは問い詰めた。

 数秒、救命士はテリーを凝視め、簡単に答えた。

「あなたも今日は帰った方がいい。交代要員はちゃんと来るだろう」

 一人残された部屋で、テリーは立っていた。


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