表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたがいるこの世界で  作者: 宮沢弘
第三章: 講義
14/25

3−4: 知能サービス・ユニット

「じゃぁ、イルヴィン、あなたが気にしている知能サービスとサロゲートの話ね」

「あぁ。テリーのものを基にした分類だとこうなるらしい」

 TVにはイルヴィンのウィンドウが前面に現われた。そのウィンドウは上下に分割され、上には「根拠がありそうに見える不可解な話」と示され、下には「現代の怪談」と示されていた。

「『根拠がありそうに見える不可解な話』でいいのかな?」

 イルヴィンがそう言うと、ウィンドウの分割は解かれ、「根拠がありそうに見える不可解な話」と示されたものが残った。そのウィンドウには短いタイトルと、そしてやはり短かい概要が映っていた。

「もうちょっとウィンドウは広い方がいいな」

 テリーの言葉に応え、TVにあるウィンドウは広がり、概要として表示される内容が増えた。

「このタイトルや概要なのかな? これは君たちがつけているのか?」

 イルヴィンはエリーとテリーに目をやった。

「いや、それも知能サービス」

 テリーはピザを取り、TVを眺めながら答えた。

「うーんと。『知能サービス・ユニットは脳』を見せて」

 テリーのウィンドウが前面に現われ、「知能サービス・ユニットは脳」というタイトルと、その内容が表示された。

「そこを基点に、伝播と変異、関連のウェブを見せて」

 新たにウィンドウが開き、「知能サービス・ユニットは脳」を中心に置いた蜘蛛の巣状の映像が現われた。線には太いものもあり、細いものもあった。線の交点には、小さく、あるいは大きくタイトルか、その一部が表示されていた。太い線同士の交点にあるタイトルは、大きく表示されていた。

「さて、『知能サービス・ユニットは脳』だけど、」

 テリーがそう言うと、ウィンドウは先のものに戻った。

「イルヴィンも知っているとおり、ユニットは一辺が10cmの立方体。まぁ、その資料が正しいとしてだけど」

 またウィンドウが開き、立方体が表示された。

「これの容積は、10 x 10 x 10だから1,000ml」

 その計算が立方体の横に表示された。

「知ってのとおり、人間の脳の容積は1,350mlってとこ」

 エリーの言葉を受け、そのウィンドウに脳の絵が現われ、またその下に容積が表示された。

「うん。そうだね。つまり、收まらない。じゃぁ、これと関連しそうな近いものを見てみる」

 テリーがそう言うと、都市伝説のウェブを示すウィンドウが前面に現われた。

「ほら、伝播の過程で、それに気付いた人もいるわけだ。修正か変異が起きてる」

 ウェブ表示上の「脳の分解」というタイトルが大きくなり、明滅した。

「それを表示」

 テリーの言葉を受けて、「脳の分解」の内容がテリーのウィンドウに表示された。

「これは、間を飛ばしてるのかな」

 テリーは表示を読みながら呟いた。

「一気に脳の分解が進んでるけど。頭蓋内が、400部位に分解されているって話になってる」

「400部位って?」

 エリーが訊ねた。

「さっきの脳の図で見るよ」

 先の立方体と脳が描かれたウィンドウが前面に出た。

「片側だけの表示で」

 頭蓋内の、とくに大脳の外側表面と内側表面を示すウィンドウが開いた。

「大脳皮質が52部位だっけ? 基底核が6個? 辺縁系が20個くらいかな。あぁ、22個か」

 テリーの言葉に合わせ、データを示すウィンドウが現われては消えた。

「小脳はどうなんだろうな。52個でいいのかな。間脳が5個」

 テリーは頭蓋内を示すウィンドウをあらためて確認した。

「ここからはどうなんだろうな。仮に、中脳が19個。橋が27個。延髄が28個とするか」

 立方体が示されているウィンドウが前面に戻った。そこにある脳の絵の横には、テリーが言った部位とそこに含まれる数が表示されていた。

「これを合計すると、」

 ウィンドウのそれらのデータの下に「211」と表示された。

「小脳以降は部位の数え方に自信がないし、仮に実際に話のようになっているとしても、そもそも全体としてどう分解されているのかもわからない」

 そこでテリーは缶を傾けた。

「だけど、随分いい推定かもしれないな」

「211だと400の半分程度だが?」

 イルヴィンが訊ねた。

「いや、今のは大雑把には脳の左右の片方の話。だから、数を比べるなら、それの倍」

 テリーはまた一口ピザを食べ、ドリンクでそれを流し込んだ。

「これだけ分解すれば、ユニットに入ることは入るよな。そうすると、内容まではともかく、問題は、分解というアイディアがどこから来たのかだな」

 「脳の分解」を中心に置いた、新しいウェブ表示が前面に現われた。

「これに水槽の中の脳と、脳の分解に関する思考実験も加えてみよう」

 その言葉を受けてウィンドウの内容が変化した。

「あぁ、それだ。『脳細胞を配布』の話を」

 テリーはウィンドウを確認して言った。

「全体があれば、人格は生まれるかもしれない。でも、脳細胞一つだけを、それ以外のシミュレートを行なう機器に接続したらどうなのか。そこに人格は生まれるの? 生まれるとしたら、それは誰の、あるいは何の人格なの? そういう問題ね」

 ウィンドウを眺めながらエリーが言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ