二日酔いの朝に
「ジリリリ!」
と勢いよく目覚ましが鳴っている、慌てて止めようと探っていると急に音が止まり、「ん?」と目を開けると、目覚まし時計を持った恵が
「おはよう椿」
とアクビをしながら伸びをして、持っていた目覚ましを元の位置に置き、ベットから降りフラフラしながら風呂場に消えていった、どうやら眠気覚ましにシャワーを浴びているのかと考えていると、いつの間にかまたうつらうつらと眠っていた。次の瞬間イキナリ恵の大声で飛び起きた。
「いつまで~寝ているの!起きて椿!」
ガバっと飛び起きて、ベットから落ちそうになってしまった。
「ビックリした!何だよ!」
心臓があり得ないほどドクドクいってるし、飛び起きた拍子で体の筋が変な風に伸びて痛い。体を擦り恵を睨むと
「全く、いつまで寝てるの!早くお風呂入ってきなよ!早くしないと朝ごはんも食いっぱぐれる事になるよ?」
「まだ朝の5時だぜ、いいだろまだ?」
腕組みしたまま恵が見下ろしながら、ため息をついて
「お風呂に入ってご飯食べて、普通に考えれば今の時間は早いだろうけどボク達丹下さんの所にいるんだよボクの家じゃない、それに丹下さん達ボク達と別れて、そのままお開きなんてあるかな?絶対お酒飲んでるよ?それにボク達昨日の事何もまだ話してないんだよ時間なんて!あって無い様なもの!早く!」
言われてみれば最近よく二人飲んでいる事が多い…そうなると車で送らす事も出来ないよなっと慌てて恵を見て
「ヤバイぞ!恵!」
「だから、早くって言ったでしょ!ほら!着替えは用意してあげるから」
押し出されるように急かされシャワーを浴びて出ると、準備万端の恵が待っていた。準備も出来て丹下の部屋のドアを開けると、モアっとお酒の臭いで充満していた。丹下は部屋に一切カギを掛けない一応あるのだけど、かけているところを見たことが無かった、一度何でと聞くとアパートの一階の扉さえ施錠してしまえば危なく無いでしょ?と言われ「イヤイヤもしオレ達が何かするかもしない」と言ったら自信満々に「大丈夫私人を見る目ある」と言われもう言うのをやめた。案の定今日もドアにカギはかかっておらず勝手知ったるで開けると、恵の懸念は当たっていた。恵と二人ソファに目を移すと三人がピクリともせずに死んだように眠っている。恵が三人に近づくと
「うわ!お酒臭い!いつまで飲んでたろう…」
鼻をつまみ顔をしかめている、人が折角早起きしているのに、こいつらは大酒をかっくらって眠っていたのかと…つかつかと眠っている丹下を見つけ横から軽く蹴った、すると思ったより大きな音がして丹下が床に転がった、それにビックリして丹下が目を覚ました、それを横目に今度は久米田も同じように床に転がすと久米田は頭を抱え苦しそうにのたうち
「もう少し、普通に起こせないのかよ!イタタ!」
頭が痛いと騒いでいるのを無視し丹下に一言
「腹へった」
と言うと、丹下は恨めしそうに、さっき眠ったばかりなのにと言いながら台所にご飯の用意をしに行った、そしてまだ眠っている里見も起こそうとすると、今までのたうち回っていた久米田が
「そいつは、起こすな」
久米田を見ると真剣な顔で止められた。それに恵も
「昨日の今日で疲れているだろうから、もう少しユックリ眠らしてあげな」
とどっかから持ってきた毛布を掛けてると久米田が水をくれと一人騒いでるのを無視すると、恵が台所で汲んできたのか水を差し出すと、引ったくるように飲みようやく目が覚めたのか
「あ~昨日は飲み過ぎた、椿てめぇ、よくも変な起こし方しやがって!たんこぶ出来たぞ!絶対!」
頭指さして怒ってるのを完全に無視していると恵が
間に立ちまあまあと久米田をなだめて
「あんな所で寝ていたら風邪ひいちゃいますよ?それより今日も仕事じゃないんですか?顔洗ってきたらサッパリしますよ?」
久米田は恵に言われ渋々洗面所に消えた。多分出来たたんこぶを確認しにいったんだろうと思ってると目の前に恵が立ち
「椿、あれはダメだろ」
いさめられ、プイッと横を向いたまま
「酒臭い」
「……。もう」
とため息をついて、手伝って来ると台所に行ってしまった。一人になり仕方無くソファから台所のテーブルに移動し待ってしばらくしていると朝ご飯を持った恵が
「出来たから、そこ片して」
恵の後ろを丹下がいた、さっきよりマシな顔で
「さて、食べようか」
久米田も戻ってきて丹下にたんこぶを見てもらっていたが丹下がたんこぶに触られて酷い事になっていた。朝ご飯も食べ終わり横目でソファで死んだように眠っている里見を見て
「なぁ?あいつどうすんだよ」
と丹下と久米田を見ると二人は顔を見あせ、丹下が
「この件は任して貰えないかな?」
何か考えがあるんだろうと恵を見るとこっちを見て頷いた。
「それで、昨日何があったんだい?里見君だけの話じゃないだろ?椿君の髪が派手に千切れた事はまだ聞いていない私達」
頷き恵と昨日の事を二人に話した、二人は顔をしかめて
「う~んどうしようか?これは困ったね?」
「どうすんだよ!何でバレてんだよ!恵も居てこれか!」
「まあまあ、久米田君落ち着いて、二人を責めてもどうしょうもない、それに私達が慌てても仕方無い。それに向こうの出方が分からない、むやみやたらにこっちがボロをだせば、もし向こうが半信半疑だった場合こちらの部が悪い、だからこの件は様子をみよう、いいね?二人供?特に椿君、変に弱みを出さないように気をつけて」
「オレかよ!」
と怒鳴ると一様に頷かれ腑に落ちなかった。オレ達は時間もあり学校に、丹下がイチイチアパートの玄関で見送ってくれたが顔色は青かった。丹下は自分の部屋に入るやいなや酒臭さに思わず「うぷ」となって口を押さえ、不味いと窓やらドアを開け換気をした。やれやれと久々にこんなに飲んだなとソファを見ると空き缶やらがあらかた片付いていた。どうたら久米田が見かねてやってくれたようだ、こちらに気づき
「あ、おかえりなさい丹下さん取り合えず風呂入るといいですよ臭いですし」
そうなのか部屋に入った時の酒臭さは自分も匂ってたせいだったのかとクンクンと匂った、確かに酒臭い
「そうみたいだね、ここ任してもいいかな?お風呂入って来るよ」
いいですよと言われお風呂に入った。風呂から出ると片付いていて、眠っていた里見も起きていた。目が合うと、居ずまいを直して
「あの!昨日はお世話になってしまって」
ペコリとお辞儀をし久米田にもお礼を言っている
「里見さん時間大丈夫ですか?」
「大丈夫です、後は片付けだけですし、店の方はスタッフも来ますし」
一瞬苦しそうな顔をしたが次の瞬間元の笑顔に戻っていた、スタッフの事が心配なんだろうと
「大丈夫ですよ里見さん」
思わず口から出ていた。ビックリした顔をした里見が
「なんだろう…丹下さんにそう言われると本当に大丈夫な気がしてきましたよ!有り難うございます」
「だったら、その酒臭いのどうにかしたほうがいいぜ?店に行くんならヤバイぞカオルさん」
臭うかなあと聞かれ久米田と二人頷いた。
「ああ、とっても酒臭い」
三人顔を見合わせ大笑いした。