里見カオル
イライラと久米田が行ったり来たりをさっきからずっと繰り返しているのを見ながら
「二人に連絡とれないんだよね?」
久米田は丹下に向きピタリと止まり難しい顔で
「ええ、さっきから何度も掛けているんですけど…どっちも出ないんですよ、たく!一体何やってるんだか」
約束の時間が過ぎても一向に二人は現れず、それから連絡もなく30分は経っている、流石に探しに行こうかと考えていると遠くの方から声が聞こえた。振り向くと恵が手を振りその後ろには椿も居てホッとした。久米田は二人の元に行き
「一体今まで何してたんだよ!電話にも出ねぇし、何なんだよ!」
一気にまくし立て怒鳴った。それに恵が恐縮し
「すいません!ボクがスマホロッカーに置いて来ちゃって…それで連絡出来なくて本当すいませんでした」
まあまあと丹下が間に入り、久米田の肩に手を置きなだめて
「そうだったんだ。何か事件にあったんじゃないかって心配したけど何も無いならそれで。久米田君は二人の事凄く心配してたから」
「オレは別に、こいつらの心配なんかしてない!」
焦ったように言い訳をしている、恵がイキナリ咳をしこっちを見てる、どうやら遅刻の理由を言えとゆう事だろう、はぁとため息をつき二人に向き
「あのさ…じつは、言わないといけない事がある」
二人がじっとオレをみていたが、ふいに久米田の視線がオレの後ろを見ている。
「オイ、そいつ誰だ?」
それまで黙って見ていた里見が前に出てペコリとお辞儀し
「えっと、私は里見カオルって言う者です美容師やってます」
二人が首をかしげて、改めて里見を訝しげに見ていたが挨拶をされ丹下が慌てて
「それはご丁寧に、私は丹下そしてこちらは久米田といいます、そういえば…椿君の髪キレイに結ってあるのは里見さんのお蔭だったんだね、うん良く似合ってるよ」
どうしたものかと恵を見ると、呆れた顔し違うでしょとオレを見てる。それに久米田が
「イヤ、そうゆう事じゃ無いだろう?なんでこいつが着いて来ているのって事じゃないのか?」
恵が最初からボクが言った方が早かったと
「ちょっと、色々あって椿の髪が酷い有り様になって、それで仕方無く里見さんの美容室で直してもらったんですけど、さっきも言ったようにボク荷物全部ロッカーに預けてて、その中にどうやら財布もしまっちゃったらしくて手持ちのお金が無くて…」
「ああ!それで里見さんもいらしたって事かな二人共?」
「そうなんです、どっちかお金里見さんに払ってくれませんか?」
う~んと丹下が言い、ふと久米田に向いて
「久米田君払って?」
「は?何でオレなんですか!丹下お金持ってるでしょ!」
「持ってはいるけど…細かいの無いんだよ、いいじゃないか払ってよ」
こそっと久米田に耳打ちし何か言ってる、それに久米田は頷き財布を取り出し
「いくら?」
里見は慌てて
「いいえ、お金は要りません」
また久米田が、は?何でここまで来たんだよと呆れている、丹下も
「ここまで送っていただいて、そうもいきません」
「さっき私美容師といいましたけど……今日お店潰れてしまったからもう美容師とは言えませんし…だから」
黙って聞いているとイキナリ声が
「…なあ?いいのか?撮影しなくて時間とか」
久米田が呆れて聞いて来た。その言葉に丹下が慌てて
「それを早く言ってよ!椿君こっちに!」
今までの重かった空気を一気に吹き飛ばし、撮影が始まった。恵はそこら辺にあった椅子を並べて里見と二人座って見ていた。久米田はバタバタと作業したまに恵達に手伝えと怒鳴って手伝わさせていた、何故か里見も手伝っていたのは笑えた。そしてあっという間に時間が過ぎ
「ハイ終了!」
と丹下の声でみんな一斉に
「お疲れー」
と誰ともなく出た、ふーと息をはき回りを見ると、恵がお茶のペットボトルを差し出して、それを飲み
「サンキューあいつは?」
聞くと、あそこと見ると、こっちを見ていた里見が興奮した様子で走ってきて
「初めて撮影って見たけど、凄いね!キレイだ!何かとても幻想的で感動したよ」
そしてその感動を丹下にも伝えに走って行った。大丈夫かあれと、さっき二人が座ってた椅子にドカリと座り
「あいつ何で今度は機材の片付けしてんだよ…どんだけお人好しなんだよ!」
「あれ、本当だ」
丹下の車に久米田と一緒に機材片付けてる、見ていたのに久米田が気付き
「お前らも手伝えよ!」
恵と車まで行き片付けをしてる里見に
「何で里見さんも手伝ってるんですか?」
「え!大変そうだったから…」
それに丹下が里見に
「そうだ、里見さん今から時間いいですか?少しお話があるんですけど」
「私に話ですか?良いですよ」
「良かった、それじゃ私の家までこの子達お願いします」
荷物もあらかた載せ、丹下と久米田は機材と共に俺達は里見の車で送ってもらう事となった。車の中でも里見は興奮気味に
「いつもあんな感じに撮影するの?」
もう面倒臭くなったから相手は恵に任した恵は嫌がることもなく相手をしている
「そうですよ、あんな感じです、キレイでしょ椿?」
ウンウンと喋ってるその声にウトウトして、いつの間にか眠っていた。恵に揺り起こされ目をさますといつの間にかアパートの駐車場だった
「着いたのか」
「そうだよ、ほら降りるよ」
急かされ恵に続き降ると丹下達はすでに車から機材を降ろしている最中、アクビをしながら近づくと丹下が苦笑しながら
「流石に疲れているようだね?眠いなら今日はもう良いよ?後はやっておくから」
「すいません流石にボクもこれ以上はキツいかな」
「良いよ分かった私達がやっておくよ、お休み」
それに頷き、後はヨロシクと階段を上って行った。丹下は車の里見に
「里見さんこっちに車停めてください」
里見が分かりましたと車をとめて出てきた。機材を片していた久米田を呼び
「荷物あらかた片付いたから部屋に行こうか?」
二人に言うと分かりましたと丹下の部屋にとうされた、中に入ると久米田は勝手知ったるで自分の場所のソファに座っている、それに苦笑しながら里見さんもどうぞと
「ありがとうございます」
と言い座った、なんとも対象的な二人だなと台所でコーヒーの用意をし二人に出し
「改めて自己紹介しますね、私は丹下よしきです、さっき見て貰ったどうり写真家やってます。それでこっちが」
と久米田を見るとだらしなく座って居たのを直し
「オレは久米田護だ、デザイナーだ」
それに恐縮したように里見は頭を下げて
「あの、私は里見カオルって言います。一応美容師です」
「さっきも言ったんですがどうゆう事なんですか?」
「ああ、今日店が潰れたんです。まあ珍しくも無い話なんですが」
「すいません、言いにくい事と聞いてしまって」
「そうかぁ?珍しくも無いだろ自分の店潰すヤツなんて」
丹下が久米田をたしなめていると、里見は下を向いて手を組み
「私に店をやる資格が無かったんです…そんなだからスタッフにも迷惑を掛けてしまって…その結果がこれですよ…情けない話です」
「失礼ですが、里見さんの腕悪く無いですよね?何かおかしくないですか?」
椿から聞いた話だと、千切れた髪は酷い有り様だったと、だけど椿の髪はキレイにまとまり分からなかった。それ程の腕を持った人間の店がそう易々と潰れるだろうか?黙っていた里見がポツリポツリと喋り始めた
「……店のスタッフの一人が私のデザインを盗んでそれを今度自分のデザインと言い、私こそが自分のデザインを盗んだと言われ、それを色々吹聴してとうとう常連客まで噂話が行ってしまって…これ以上皆に迷惑かける訳にも行かなくて店を閉める事になったんですよ…まあ珍しくも無い話です」
アハハっとわざと笑って誤魔化しているのが痛々しかった。黙って聞いていた久米田がガバっと立って
「はぁ?あんた悪く無いじゃねぇか!何だそれ!」
それをなだめて、里見に向き
「大変でしたね」
「私はいいんですけど…スタッフの子達が可哀想で…どうにか再就職を手伝いたいんですけど、今の私じゃ…信用がなくて」
本当に心配してるのだろう、黙ってしまった、久米田がチラチラと見て、里見に
「あのさ、さっき言った事悪かった。あんたは悪く無いむしろ被害者だ、本当すいませんでした」
里見は大丈夫ですよと、今日は楽しかったですし良い思い出になったと笑っていたが、それが余計にもの悲しかった、するとイキナリ久米田が
「あの丹下さん…今日撮った写真って証拠以外何か使うんですか?」
「イヤ、特に予定は無いけど、それがどうかした?」
「そうですか…あんた里見って言ったよな?」
「ええ、そうですが?」
不思議そうに久米田を見ていて、ふと何をやろうとしている事に気が付いた。そうかと
「この写真は有る所に出さないといけないんだけど、それには関わった人間の名前も出さないとダメなんだよ、な丹下さん?」
頷いて里見に
「そうなんですよ、それを言う為に里見さんに来て貰ったんです」
久米田がニヤリと里見にわからないように笑い
「別にいいだろ?名前載せても」
里見は少し考えたようにしていが、元来のお人好しなのか
「良いですよ」
とOKを貰った。その後はどうして椿達との経緯を聞いたりと酒を飲みながら聞いた、久米田は里見を気に入ったのか直ぐに打ち解けていた
「お二人どっかで聞いた事があると思ってたら、有名人じゃないですか!直ぐに気が付かなくてすいません!」
「イヤイヤ過去の話ですよ。今があるのはあの子達のお蔭なんですよ、私じゃないんです」
「まあ、オレもあいつ等が居てくれてるお蔭でようやく自分が分かった…もし会って無かったら先なんて無かった」
「そういえば、さっきお金の話の時何話てたんですか?」
久米田がイヤな顔をし
「あん時、丹下さんがここで椿君達のお金を払っておけば、今後も会う機械があるって言うから!なのに!あんたが金は言いとか言いやがるし!」
真剣に聞いていた里見が思い切り吹き出して
「そうだったんですね!アハ!アハハ」
久米田は里見を羽交い締めにしていたが顔は真っ赤になっていた本人は酒のせいにしていたがそれだけでないことは里見も丹下も気が付いていたが久米田がそう言うならそうなんだろうと二人笑った。