日常
「お早う最近おとなしいね甘利君?」
後ろを振り返ると、そこには生徒会長の小鳥遊が居た、はぁとため息をつき
「そうですか?いつも道理ですけど、会長の方こそ暇何ですか?こんな所まで来ていて」
「イヤイヤ、これでも忙しいんだよ?甘利君は特別だからね、先生から直々にお願いされたのだから責任を持ってやらないと、でもそうか何も無いのか…残念んだな…」
残念って何だよと思ったが言い返さずいたら、少し考えて
「今日はこれで帰るよ、それじゃ」
と行ってしまった。相変わらずアイツは苦手だ、腹黒い恵よりもっと黒い気がするんだよな。
「……誰が、腹黒だって椿?」
いきなり話かけられ、びっくり
「急に声をかけるなよ!びっくりするだろ恵!」
「何をそんなにびっくりする事があるの?怪しいな、何かよからぬ事を考えていたんじゃないの?」
恵に詰め寄られ、焦った。相変わらず勘が鋭いなこいつ…
「別に、そんな事考えて無い、ただ会長に会ったんだよ」
「会長に?何か言われた?」
「ああ最近大人しいのは何故ってさ」
「まあ、そうだよね前までは日を置かず問題起こしてたから、それがピタッと止んだら、そりゃ疑うよ」
ウンウンと一人納得している、そんなには問題起こして無いはずと言い返そうとすると
「何だ甘利最近、ケンカしてないのか?」
葉芝がお早うと会話に入ってきた、恵は葉芝を見て嫌そうな顔をし
「いきなり、話に入って来るの止めてくれる?葉芝」
「へー、それはすまん。それで?何でケンカしなくなったんだ?」
懲りた様子もなく聞いてくる。恵が顔を引き攣らせ
「椿だって、もういい加減大人になったんだよね?椿」
「え?ああ、まあな」
「へぇ、大人にねえ、この数日で大人にならないといけない事でも合ったみたいな、言い方だなー」
ギクリと葉芝を見るとニコリと笑い
「まあ、ケンカしなくなったのは良い事だよな」
「そうだよ」
「オレとしちゃ二人が何かをやっていて、ケンカをしている場合じゃないもんでケンカをしなくなったのかなと思ったんだが、そうか大人になったのかー甘利」
こいつは本当何者だろうと思う時がる。恵もそう思っているのか
「葉芝は、考え過ぎだよ将来ハゲないといいね」
恵が珍しくくイヤミを返してるが葉芝も懲りた様子もなく
大丈夫、オレの母方にハゲは居ないからと、自分の席に戻って行った
「アイツ本当に勘が鋭くて嫌になる、椿気をつけてよ」
「オレかよ!」
言い返したその時、クラスの隅でかたまっていた生徒達が一冊の雑誌を見て騒いでいる、恵がツンツンと
「ねぇ、あれってもしかして…」
「!…………」
嫌な予感がした、スタスタと近づき、雑誌を見ようとすると雑誌を開いて見ていたクラスメイトが
「何?もしかして甘利も興味があるのか?」
椿が近づいてきのを怯えていたクラスメイトが、雑誌のそれを見てせいで、嬉しそうに話かけて来た。
「え、ああ気になったもんで…」
「そうか、甘利もこの子気になったんだ?そうだよなーめっちゃ可愛いもんなー」
一気に食いついて来た、皆それぞれ言いたい事で騒いでいたがそんな事全部耳に入って来ない。ボソリと
「これって、人気なのか?」
騒いでいた連中が一斉に見て
「人気処の話じゃ無い!素性が一斉分からない美人って有名なんだよ!あああ、せめて名前だけでも出して欲しい」
聞いていた生徒達が頷いている、茫然んと聞いていていると恵がやって来て肩にポンと置き
「知ってたか?恵!」
目を反らされた、フラフラと自分の席に着いたのを葉芝が不思議そうにみていた。
学校が終わり恵と二人丹下のアパートへ行き勝手に中入った、そしてソファでコーヒーを飲んでいた丹下に「オイ」と言うと、ニコリと「おかえり二人共」とのんびり返された、それに恵まで
「お邪魔します丹下さん」
丹下に、帰り道の途中で買った雑誌を目の前に開いて「これ」と、丹下が「ん?」と覗きこみ
「キレイに撮れているだろ?」
嬉しそうしている、ソファに座り、ガクリとうなだれていると丹下が不思議そうに
「どうしたんだい?椿君何か問題があったのかい」
「どうしたじゃない!これはどうなってるんだ!」
「落ち着いて椿、ハイこれ」
とコーヒーを渡された、どうやらキッチンに行って淹れていたらしい全然気が付かなかった、コーヒーを飲み落ち着くと丹下が思い出したように
「ああ、言ってなかったけ?あの写真、知り合いに見られて、そいつにどうしてもって譲ってくれって頼まれてしまってさあ」
「なるほどね、それがこの雑誌って事なんですね」
「なるほどじゃねえよ!」
「別に、いいじゃないか、名前が出てるとかじゃないんだし、それにモデルの仕事了解したの椿だろ?グダグダ言わない」
「だけど、これは」
モデルの仕事は確かにOKしたが、もっとこう、一部の人間しか見ないと思っていたのに、これは誰でも見られてしまっている、恵がため息をつき
「大丈夫だよ椿、誰もこれが椿本人だって気が付かないよ、ここに居る人がバラさない限り、そうですよね丹下さん?」
「……そうだよ、私も自分が可愛い、バラす事なんて無いから、これからもモデルの仕事をして欲しい」
「悪かった、狼狽えたりして」
それもそうかこの写真に載っているのは、明らかに女性だ、まかり間違って男の自分に疑惑の目が向けられないだろう。窓から外を見、先日の満月の日の事を思い出した、モデルの仕事は色々な事でこの建物でしか撮らない事となった、バレるリスクを少なくと決まって、そしていざ撮ったのは丹下の寝室の窓で撮った写真がこれだ。パラパラと雑誌を捲っていると恵が
「本当モデルの仕事やるって事になって、色々大変だったよね、まず、母さんに丹下さんが会って説得して母さんから春子さんに言って貰ってと丹下さん凄いよ」
それに丹下は苦笑し
「あれは、大変だったよ、恵君のお母さんが中々OKくれなくて、君達の学校の事とか私の仕事の内容とか、二人共大事にされているんだね」
どうやら結構説得が大変だったようで、丹下は思いだしたのかゲンナリしていた、まあオレ一人だったのなら簡単だっただろう、何せオレは放置されているから母さんから勝手にしろと、でも恵は違うしかもそれに条件を付けた、それは恵もモデルの仕事を手伝うとした、本人は寝耳に水だった為、嫌がったがこうなったのには、少なからず恵にも責任があると押しきった、「何でボクまで!」ブツブツ言ってがスタッフとして働いている。何だかんだで責任をかんじているんだろう、
「さて、二人共お腹空いてるだろ?ご飯食べていきなよ、今用意するから」
ソファから立ち上がり丹下が聞いてきた。
「いえ、ボク達これで帰ります」
残念そうにする丹下に恵がこっちを見て
「さ、椿帰るよ」
促され立ち上がった時、恵のスマホが鳴り、恵が丹下にスイマセンと出ると
「何、母さん、えー、分かった」
しばらく待っていると恵が通話が終わったのか
「椿ゴメン今日母さん町内会の集まりで今から行かないとダメだから、ご飯買って食べてだって」
「何だ、別に構わない」
それを聞いていた丹下が
「だったら、家で食べて行きなよ!良いだろう二人共」
恵がそうする?と聞いてきたから頷くと丹下は嬉しそうに「好きに寛いでいていいよ」とキッチンに消えていった。仕方なくソファに座っていたら、お腹が鳴った。恵が呆れた顔をした時、恵から「ごおお」と聞こえた
「…………」
恵の顔が赤い、相当お腹が空いていたんだなこいつと恵の動きを見ていると、急に一点を見て止まっている、恵が見ている物が気になり、横に立ち覗きこむと高そうな箱があった。隠すように置かれている。恵と二人無言でその箱をテーブルに置き
「そういえば、丹下が好きにしていて良いって言ってたよな恵?」
「あれってそう言う事だっけ?でもそうだね、そう言う事だよねきっと!」
見るからに高級な箱を、ゴクリと開けると、袋に包装されたお菓子が入っている、そっと音を立てないように開け食べてみる
「!」
見た目を裏切ら無い美味しさ、チラッと恵をみると感動している、そして目が合うと心の声が聞こえた『どうする、これ以上食べるとまずいよね』だがしかし!丹下は好きに使ってと言ってただろ?と目で訴えると恵は『そうか』と頷き、終始無言で残さず美味しく頂いた。最後の一個を食べていると丹下が
「お待たせ」
とお盆に乗せた料理を持ち、テーブルの惨状にがく然としていた。
「そ、それは……ネットでお取り寄せ半年待ってようやく手に入れたお菓子!」
恵が丹下のお盆をテーブルに置き、肩に手を置き
「丹下さん、こんな所にお菓子置いて置いてはダメですよ?悪くなっているんじゃないかと思いまして、ね椿」
「ああ、丹下が当たったら元もねーから俺達が責任を持って食ってやったんだよ、」
丹下はキッと睨み、目に涙を浮かべながら怒った
「嘘だ!昨日届いたばっかだったのに!私一口も食べて無いのに!酷よ君達!」
「そもそも、こんな分かりやすい所にお菓子を置いて置く丹下さんが悪いんですよ」
「えー反省してないし、悪いの私っておかしくないかい!私の唯一の楽しみのお菓子を」
どうやらお菓子でお酒を飲むのが楽しみだったらしい
「だったら、ボク達に分からないように隠して置かないとイケなかったんですよ丹下さん、今後は気を付けないと見つけたら食べられてしまいますよ?」
恵がニヤリと悪い顔で笑った、それが後にも続くお菓子争奪の戦いの始まりだ。そして暗黙のルールが出来た。見付かったお菓子は食べても良いが、必ず丹下も部屋に居る事。丹下に見付からず探す事。それらは全て封が開いていない事。開いている場合は食べてはいけない。それらルールを守り始まった。
それは長く続く戦いになった。