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撮影

地下の駐車場に車を停めて降り、辺りを見渡して


「何だ、撮影に使うスタジオって言うから、もっと大きくて凄い建物って思っていたけど、結構地味なんだな」


建物は一見普通でスタジオが在るなんて思わないぐらい地道だ、こうゆうものなのかとガッカリしていると、久米田が車から荷物を出しながら呆れたように


「こんなもんだろ?どんなのを思ってたんだよ?」


丹下が苦笑して


「椿君が思っているような、世界じゃないよ?結構地味だよ、ねぇ二人供?」


久米田と里見がそうだと頷いた、恵も笑いながら


「残念だったね?」


「うるせーな!あるだろ!そうゆうイメージが!」


口に出して言ったのを後悔した、久米田達がニヤニヤと笑らわれた次の瞬間ピタリと黙った。一体どうしたと思ったら、どうやら久米田達はオレの後ろを見てる、何だと思っていると声がした。


「やあ、ようこそ来てくれて嬉しいよ!」


振り向くと、そこには複数の人がこっちを見ている、どうやらオレ達が来るのを待っていたようだ、その中から一人の男が出て来た、男は集団の中で一際目立っていた、両手を広げ動作がやたら大袈裟な男だ…その動きに引いていると、男が真っ直ぐオレに歩いて来る…するとオレの前に丹下と久米田と里見3人がオレを隠すように前に立ち辺りの様子を伺うように


「結構居るな?丹下さんこれって…」


久米田が小さい声で言うと、丹下もオレ達にしか聞こえない様に


「一応、遠慮してくれって言ったはずなんだが?まぁ…いつもの半分の人数ではあるが…でも多いかな?」


「そうですね、撮影クルーが少し少ない感じがするって程度ですね…はぁ」


里見もスタッフを見て言うと、暑苦しい男がニッコリと


「さぁ!丹下そんな所で内緒話してないで、我々に紹介してくれないかい?」


わざと大きな声で言うと、後ろにいたスタッフ達がザワザワと


「本当に居たんだな!」


「どこのモデル事務所なんだろう?」


「綺麗だな…」


好き勝手に喋っている、こんなに人が必要なのかと思っていると恵が


「椿、あんまりキョロキョロしないでよ」


恵にたしなめられ、そう言えば体が弱い設定なのを思い出して恵の背中にかくれると恵がため息混じりに


「本当に…大人しくしててよ椿?」


「分かってる…大丈夫だ」


言い返していると、男が丹下を押し退け目の前に、思わず後ずさるとニッコリと


「そんなに恐がらないで欲しいな?」


子供に言い聞かすような言い方にイラっとした、何だこいつはと思っていると丹下が男に、


「今日は宜しくお願いします。足立さん」


無理やりオレと男の間に入り挨拶をした、とっさに恵がオレの服を掴み後ろに引っ張られて、思わずたたらを踏んでよろけてしまい恵に寄りかかってしまった。どうやら出過ぎるなと言いたいんだろうけど急にひっぱるなよと睨むと、恵は素知らぬ顔をしやがった、そんな様子に気がつかなかった男は丹下に


「オイオイ、挨拶ぐらいさせてくれてもいいだろう?丹下」


男は苦笑いをしながら言うと、丹下がニッコリと


「いえいえ、この子は体が弱いのに加えまして、実は凄い人見知りなんですよ、ここに来てくれたのだって凄い説得したんですよ私達が?やりたくないって大変だったんですから、本当困りますよ先生が台無しにされてしまうなんて?」


黙って聞いていたが、それはオレの事か?恵を見ると、肩が震えていた…どうやら必死に笑いをこらえている。それでも丹下の言葉に足立とやらは焦ったのか


「それは困る!」


その言葉に丹下が手を叩き。


「だったら早く始めましょう!」


スタッフ達が一斉に、バタバタと作業を再開する、オレ達も撮影するスタジオに行く事に、そうして里見にメイクと髪をセットしてもらい用意してカメラの前に、これでもかっと好奇の目で見られ気まずい。恵を見ると目で『我慢して!』と、分かってるよと目で送ると、いつの間にか足立が


「大丈夫かな?安心して…君はニッコリと笑っててくれれば撮影は直ぐ終わるから。そう言えば…名前何て言うのかな?おっと、これは私の名刺だよ?」


咄嗟に名刺を渡され思わず受け取ってしまって、狼狽えていると恵がオレの手から名刺を奪って


「これは、どうもすみません。この名刺はボクが預かりますね?」


恵は名刺をポケットにしまってしまった、足立は苦笑いをし


「おや、それは過保護なんじゃないかな?ところで君は一体何者かな?さっきからこの子の側にいるけど?」


「ボクですか、ボクは彼女の世話人です」


何だよ、それは…オレは一体何者なんだよ!と思っていると、案の定足立は吹き出して笑ってる、そりゃそうだろう…


「今どき世話人って!ああ、そう言えば彼女体が弱いんだったね…それにしても君達いつの時代の人なんだい?」


一通り笑うと落ち着いたのか、うんと咳をして


「おもしろいよ君達、それで?名前は何て言うのかな?私の名前は名刺にも書いてあるが、改めて自己紹介させてもらうよ、私の名前は足立満と言うんだ宜しく…で君達の番だよ?」


その言い返しに、こっちも嫌だと言えず、恵が渋々と


「ボクは田中恵と言います、そしてこっちは…つ、」


「つ?」


ゴホンと咳をして


「月子!です…それ以上は秘密です」


オレ達、丹下と久米田と里見は、開いた口が塞がらなかった…月子ってて、それはオレが満月に変わるから?それとも椿の「つ」と言ってしまったから…そうなのか?恵に目をやると!そこには何故か満足げな顔をした恵が居た。そうだった恵はネーミングセンス最悪だった…オレはガックリと肩を落としたが、足立は違った喜色満面の顔で


「そう、月子って言うんだね?そっかぁ月子ちゃんかぁ!」


早速定着してしまった!丹下達に助けを求めたが、首を横に振っている!もっとシッカリ決めておけば良かった…もう遅い。恵はニッコリとオレに


「さぁ!月子?」


「………月子、です」


久米田がボソッと「だっせ」と聞こえないように言ってると思っているようだけど…聞こえてんぞ…


「さて、名前も分かった所で撮影を始めようか!」


足立の声でスタッフ達が動き、スムーズに撮影が進み出した。ライトの前で


「好きに動いて構わないが、視線はこっちを見ていて」


好きに動けって言われても…と恵を見ると心配そうに見ている。丹下達も同様に同じ顔だ、なんだか笑えてきた。ホッとした、不安なのは自分だけじゃないんだと安心した。丹下達を安心させようと手を振った、大丈夫だと、するとスタジオにいたスタッフ達がざわついた。なんだろうと思ったが足立の


「カット」


と言う声がして撮影が終了した、とたん大きな拍手がスタジオ全体に響き渡った、しばらくは鳴りやまずビックリした、撮影とはこうゆう終わり方なのかと、でも直ぐに違うと分かった。スタッフが一斉に我先にオレの所にやって来て感想を言って来る


「凄く良かったです、良かったらこれボクの名刺です」


「だったら、私のも…」


次々にやって来てくる、それを丹下達が押し退けて


「ハイハイそこまで!彼女…月子は疲れてますんでそこまでにして下さい!」


スタッフ達のブーイングをいなしている、それを見ていると恵がいつの間にか横にいて、オレに


「さっき何考えてたの?」


「ん?さっき?ああ別に大した事じゃないけど、おかしかったか?」


「…いいや?そんな事はないけど…ふうん?まあいいけど、さっきのは良かったよ?綺麗だったよ椿」


その言葉に思わず顔が…あまり恵が褒めるなんて嬉しいけど、さっきのを思うと少し複雑だ…と思っていると恵に手を引かれ、慌てて聞く


「恵どこ行くんだよ?」


「ああ、メイク落とすんだよ」


「このまま帰んないのか?家でも良くないのか?落とすぐらい…」


「それでも良いけど、絶対に葉芝が何かしら絡んでくるけどいいの?」


それは…嫌だ。仕方無くメイクを落とす為に控え室に入ると、何故かスタジオに居たはずの足立がいた。足立は椅子に座り悠然と


「おかえりー!さっきは大変だったね?済まなかった」


スタッフ達の事を言ってるんだろう…恵が咄嗟にオレを隠すように前に入り


「何でいるんですか?ここはボク達の控え室の筈ですよね?」


「そんなに怒らないでよ、あんまり話ができなかったから、聞きたい事があって待たせてもらったんだよ?」


「それで…話とは?」


「うーん、前から思っていたけど月子ちゃん君本当に実在感が無いね、君を目の前にしてもそう思ってしまう…何だろう綺麗過ぎるせいかな、月子と言う人間は果たして居るのかな?…どう思うかな?君は一体何者なんだろうね?」


「…………」


一瞬ギクリとしたが、素知らぬ顔で恵は


「大丈夫ですか?何を言ってるのか分かりませんよ?」


「そうだよね…私も自分が何を言いたいのか良く分からないけど!もっと君の事が知りたいと思ったよ今回の事で…こんなに厳重に守らないといけない事とは何だろうね?……また今度ね?」


足立は言うだけ言うと笑って後ろ手を振りながら行ってしまった、オレ達は黙たまま見合って


「要注意だな…あの人」


頷き、メイクを落として帰り仕度も早々に車に乗った、しばらくして丹下達も乗った。やけに疲れていた聞くとオレ達がいなくなった後も酷かったらしい!丹下達はスタッフ達に囲まれ


「丹下さんのアシンスタントになれば、月子に会えるって事ですか?だったら」


と一人が言えば他のスタッフもと収集が大変だったと、丹下だけではなく、久米田と里見も同様な目に会っていたようだ。恵が感心したようにオレに


「凄いカリスマ性だね?」


「あんなのは、もうやんねー疲れた」


「……それもそうだね、もう無い事を祈るよ…」


「まぁ、早々無いだろうこんな事は…それにあんなに体が弱いって触れ回ったんだし」


「そうだよ!もういいよね…あんなのは勘弁してして欲しいよ」


里見の言葉に丹下が苦笑し


「それじゃ、帰ろうか?」


その言葉に、朝ご飯を食べたきりだったのを思いだしたとたん急に腹が鳴った、腹に手をあて


「なぁ?…腹減った。あそこ何も食うもんないんだもんな」


「そんな事考えてたの?ボクなんて今日の事で、気が気じゃなかったのに…全く」


「仕方無いだろ!成長期なんだから!」


「まあまあ、落ち着いて恵君?ね。今日は椿君良くやってくれたんだしね?」


丹下に言われ恵が渋々頷き、アパートに帰ると小鳥遊と葉芝が待っていた。皆で食事をして、そうして足立との事を皆に相談して出た答えは、しばらくは様子を見る事となった、それはそうだろう…こっちが変に動いては本末転倒だろうと…

そうして後日、丹下からあの日に録った写真を見て

葉芝は


「良いじゃないか?綺麗に録れてるし」


小鳥遊達も頷いていた、オレは首をかしげ


「普通だな…」


オレの言葉に恵も頷いた久米田達もそう思っていたようだったが何か言うでもなかったが顔は雄弁だった…丹下が言うには足立はとてもご満悦だったと、実際スポンサーからの評価も高かったらしいと、出来たポスターは貼ると盗難され注目を集めたらしいと、色々なメディアに取り上げられていたと恵が言ってたが「そうなんだ」と言う程度でそのまま忘れた。

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