副会長
「椿、朝だよ!起きて」
体を揺すられ渋々起き上がると、恵はお風呂に入った後なのか、まだ髪が濡れたままだアクビをかみころしながら伸びをしていた、徐々に目が冴えてきてベットから降り
「もう…朝か…」
髪の毛をタオルで拭きながら
「もうちゃんとして!」
「…所で、もう体の調子は良いのか?」
「全然ボクの事聞いてないね椿、調子はいいよ?元気だよ、それより椿もお風呂入って来てよ?昨日入って無いだろう?」
そう言えば、昨日恵が寝てしまったもんだから、自分もそのままだ、くんくんと嗅ぐと汗臭い。恵に早くと押されるように風呂に行って軽くシャワーで出た。恵は既に制服に着替えて用意がもう出来ていた。やたら今日は焦っているように見えるなと、首を傾げながら丹下の部屋に行くと、案の定ドアを開けたとたん、酒臭い。そして倒れるように3体の酔っ払いが…恵が鼻をつまみながら
「うわ…酒臭い!」
恵はその中から丹下を見つけ近付いた…丹下は辛うじてソファに座っていた、恵が起こそうと揺すっているが起きない、オレは恵の起こし方に痺れを切らしズカズカと近づき、足で丹下を蹴り落としたとたん物凄い音がした。
「ドッスン!」
「え!ちょっと、あぁあ…!椿!」
転がった丹下が、もんどり打って転がっている、恵は慌てたようにオロオロして丹下を覗きこみながら
「大丈夫ですか?…丹下さん?」
しばらくしジット痛みを堪えていたが、起き上がり
「大丈夫…だよ。椿君…もう少し優しく起こしてくれ…うう…タンコブ出来たよ…何年ぶり?タンコブって…」
「そんな事より、飯!腹減った!」
丹下は頭を擦りながら、ぶつぶついいながら台所に消えて行った。恵も手伝うらしくオレに怒りながら一緒に行った。フンとオレはソファに座った、ふいに、転がっている2体も丹下と同じようにすると、二人は丹下同様動けずこっちを睨み
「いってぇだろうがよ…!このやろう」
久米田は二日酔いで口を押さえ、里見は真っ青で酷い有り様だ。
「も…もう朝なんだ…」
しばらくすると、朝御飯を持った恵が「おや?」っと起きた二人を見ながら
「二人を起こしたんだね?」
ニッコリと笑いながら、久米田と里見にお早うと挨拶すると、久米田がオレを指指して
「起こしたなんて、良いものじゃないぞ!こいつはオレ達に蹴り入れたんだぞ!これ見ろよ!」
腕を指して見せている。それを知らんふりをして用意された朝食を食べながら、横目で久米田に
「オレに感謝しろよ、あのままだったらお前ら昼頃まで起きれなかったはずだ。仕事に遅刻しなくてすんだはずだぞ?」
久米田が凄い形相で
「それは!それは…ありがとうな!」
嫌みで返された。恵がいなすように
「まあまあ…起こし方はあれでしたが…ね?今日も仕事でしょ?お酒臭いですよ?特に里見さんお風呂入ったほうがいいですよ…流石にその酒臭さはダメでしょう」
里見が自分の服の匂いをかいで
「やっぱり…臭いかな?丹下さんお風呂貸して貰っても良いですか?」
「いいよ?でも着替えはどうする?」
「大丈夫です、久米田君の所に私の服あるんで、ね?」
朝食を食べていた久米田が頷いてる。それを不思議そうに丹下が
「…あれ?よく来てるの?里見君?」
変な空気になった、こそっと恵を見るとオレと同じ事を思ったのかオレに頷いた、それに目で返し黙って食べた…二人同じぐらいに食べ終わり、すっと立ち部屋から出ようと、慎重に尚且つ静かに!決して丹下に気取られぬように…チラッと様子を伺うと、青い顔をした久米田がいた…あれは二日酔いだけの青さじゃ無いな、そっと静かにドアを閉めるようとすると、丹下の声が
「あれ?私聞いてないな?なあんでかなあ…私の所には来ていないね里見君、…久米田君も水臭いなあ?どうして、呼んでくれないのかなあ…ねぇ?二人供?」
久米田と里見は、責任を押し付け合って見苦し事になっていた、それほど丹下は恐ろしい顔だ。久米田が汗だくで
「えっと…いや…たまたまですよ?な、里見さん?な」
里見がさん付けになってる…人間焦ると、酷い有り様になるんだな…オレも気を付けよ。里見は物凄い頷きで
「ええ、そうです!たまたまです!決して丹下さんが面倒臭いからじゃ!あ!」
里見は口を押さえ、久米田に助けを求めているが、もうそれどころじゃ無くなっている。言っちゃったな…恐る恐る丹下をみると、
「うん?今何て…言った。面倒臭いとか聞こえたよ…もう一度言ってごらん?二人供……」
部屋から殺気が!これ以上はヤバイと慌ててドアを閉めた。何か悲鳴らしきものが聞こえた様な気がしたが、聞かなかった事にした。恵が
「丹下さんの地雷踏んだね、あの二人…」
手を合わせ祈ってる。「ああ」と頷き
「今週一杯、大変だな…あいつら」
「元々は椿が原因だろ?少しは反省しなよ」
「そんなのは、知らん!」と横を向いた、言っていけない事を言ったのは、あいつらなんだし、そもそも丹下は別に心が狭い訳じゃ無い、むしろ広い方だ。やたら人をここに住まわそうとするのだって、寂しいから、一度恵が聞いた事によると、親族は誰も居なく、在るのはこの建物だけ、一度結婚もしたが子供が欲しいと望んだが、自分に欠陥があり無理だったと、本当に欲しい物は手に入らないと。寂しそうに言ったそうだ。恵も何か言う訳でも無く、階段を降りオレも後ろから黙って階段を降りた。その時に小鳥遊の事を思い出した。
「所で、アイツは?まだ寝てんのか?来なかったけど?」
恵が振り向き
「たぶんもう…学校だよ」
ハッとした。だから恵が朝からやたら急かしていたのか…
「オレ達も、急ごう」
うんと頷き、走った。早朝の学校はまだ誰もおらず静かだ、オレ達は教室に向かわず、生徒会室に急いだ。
「バタン!」
ノックもせず入ると、やっぱり二人は居た。副会長はオレ達にビックリした顔をしたが何も言わずにいる。小鳥遊はオレ達に背を向けて様子は分からない、何か言わなければと思うのにこんな時に限って何も出てこない。恵も同じなのか無言だ。誰も何も言わずどれ程経ったのか、小鳥遊がポツリと独り言のように
「どうして…こんな事になってしまったんだろうか…君ともあろうと人が…」
副会長は、下を向いたまま手をぎゅっとし、押し殺した声で
「……聞いて、どうするんですか?」
「何が。…あったのか教えてくれ…」
小鳥遊が顔を上げた。真っ青で昨日から寝てないのだろう酷い有り様だ、それを見た副会長はいきなり笑い出し
「アッハハハハ!なんて顔してるんですか!あの生徒会長とも言われる人が!そうですか?聞きたいですか、良いですよ!簡単な事です、あのクズどもに万引きを見られたんですよ、それから…アイツの言いなりですよ、全く散々でしたよ!」
開き直った様子に小鳥遊は愕然として、何も言えずに机に手を置いて、余程ショックだったのか立っていられずよろめいた、恵が慌てて支え副会長を睨むと、馬鹿にしたように
「あんたが聞きたいってゆうから言ったのに、何だよ、その目はよ?はぁ…でももう良い!アイツ等に脅される事はもう無くなった!」
もう繕う事もせずに、笑っている副会長に
「何で万引きしたんだ?」
「ああ!優等生は疲れるんだよ!お前らと違って、だからたまに、ストレス解消でしてたんだよ、それを奴等に見られて、もー地獄だった」
どうやら、元から既に腐っていたようだ、恵も訝しげに
「ストレス?」
「ええ、あなた方のせいですよ、特に会長。貴方がその馬鹿な一年に構い始めて、いくら私が忠告しても聞いてくれず、そのストレスでこんな事になったんです、あんたのせいだ!」
その言葉にオレと恵が呆然としていると、言われた本人は言い返さず黙って副会長を見ている、オレは余りの言い分に副会長の胸ぐらを掴み、
「何言ってんだよ!お前は?」
殴ろうと腕を上げると、恵がオレの腕を掴み首を振り「ダメ」と、その拍子に副会長が逃げ
「やっぱりか!お前等だって奴等と同じだ!」
「んだと!ストレスで万引きするようなお前と一緒にすんなよ!ああ!」
副会長は「ヒッ!」と怯えながら、
「私は悪くない…悪いのは私じゃ無い…違う!」
恵は、副会長からオレを離しながら、ボクが話すからと
「ちゃんと、証拠があるんですよ?」
「私じゃ無い…私はアイツ等に脅されただけ…」
何を言っても聞いていない、恵は小鳥遊を見ると、大分落ち着いたのか、
「…確かに、今度のこの事件は…私にも責任はあるのは確かだ…だが副会長。君のその稚拙な考えは私の知る所では無い!それは君の本質だ、それを見抜けず副会長に据えてしまった、私の責任は果たそうと思う」
小鳥遊の言葉にようやく、自分のした事が分かってきたのか副会長は、
「私…は…」
小鳥遊はもう言わず副会長に背を向けた。恵が頷き
「もう、これ以上ボク達が貴方に言う事はありません。この先は先生方に弁明するなり、どうするのか自分で考えて下さい」
小鳥遊は恵に
「済まない」
と頭を下げた。副会長は呆然としている。静かだった校内が、いつの間にか人の気配がしだした、どうやら生徒達が登校してくる時刻にいつの間にかなっていた。
「コンコン」とドアがノックされ開いた。そこに居たのは葉芝だった、中で何が合ったのか察したように、ニヤリと
「よう!早いな?副会長を迎えに来たんだが?……さ、副会長様行こうか?皆様お待ちだぜ?」
ちゃかすように言いながら立てない副会長に、葉芝は後ろを向き「オイ」と言うと、見知らぬ生徒がバタバタと入って来て副会長の両側を持ち、連れて行った。葉芝はオレ達に手を振り行ってしまった。静かになった部屋で
「君達には…迷惑をかけてしまって…済まない、折角時間まで貰ったのに…説得すら出来なかった」
「………別に、迷惑だなんて思ってないですよ?な椿?」
明るい声で、どうにか励まそうとしているが、これは無理だろうと恵を見るが、恵も必死に
「大丈夫ですよ、会長?この件のお陰で、ボク達葉芝に焼肉奢って貰えるんですし!」
成る程、可哀想に葉芝あいつ…どんだけ奢らされるはめになるのか、この分じゃ…と思っていると、いつの間にか葉芝がそこに居た。
「オイ田中、オレは、どれだけの人を奢らされるんだよ!」
「ビックリした!何で居るの?」
憮然と言い返すと、
「ああ、アイツ等に任したよ、それにオレは犯人を見つけるだけで、捕まえるのはオレの仕事じゃ無いもんでな…それより焼肉の話…」
嫌そうな葉芝に恵が胸を張って
「決まったよ!焼肉に、それで小鳥遊さんどこか美味しい所、知ってます?」
「え…う~ん。知ってるけど、でもそこ少し高いけど…?」
「高いだと!無理に決まってるだろ!何言ってんだよ!」
葉芝が恵に詰め寄り騒いでいるが。恵は懲りた様子も無く
「え~!何でだよ、良いじゃんか。それに葉芝負けたじゃん!発言する権利あるの?」
「権利って!金出すのオレだぞ!一応言っておくが!オレ学生なんだぞ!」
ガクガクと恵を揺すっている、
「普通のじゃ無いだろ?人気作家だろ?」
「…それは!今は関係ないだろ」
「それこそ、ボクは知らない、約束は約束だ…葉芝君?」
何だろうこの会話は…黙って聞いていると葉芝が諦めたのか小鳥遊に
「分かったよ!会長さっき言っていた店の名前は何て言うんですか?」
小鳥遊はビックリして
「本当にそこにするのかい?葉芝君?」
葉芝は頷き、
「まぁオレも旨い物の方が良いですからね?約束は守るものですから!」
葉芝も小鳥遊に気を使ったのだろう、それに恵が便乗しオレも
「久しぶりの肉だな!開放するときが来たな恵!エンゲル係数あげるときだ!」
恵も、おーと腕を上げると葉芝が慌てた様子で
「やめろ!…何を上げる気だ、二人供…」
その様子に小鳥遊が吹き出した。恵が小鳥遊だけに聞こえるように
「大丈夫ですよ、会長。あの人もきっと…いつか分かってくれますよ?今は、自分のした事が分からなくても…時間が経てばきっと。あれだけ会長が信頼していた人なんだから」
「そうかな…だとしたら良いな、有難う二人供…次いでに葉芝君も」
「オレは次いでですか会長?」
「いや、だって解決したのは、椿君達だからね?その代わりと言ってはだけど、予約は任してくれ!」
「………分かりましたよ!もう!存分に食え!」
やけくそで言い切り。後日本当に皆で行った。有言実行で遠慮なく食いまくった。丹下達は流石に飲む事はしなかったが…最後の支払いの際に葉芝が悲鳴を上げていた、
「ご馳走さまです」
そう言えば余談だが…恵への説明を上手くかわしたと思ってたのに…まぁ実際生徒会のゴタゴタで忘れていると思っていたが、しっかり忘れてなかった恵に説教が待っていた。その内容はここでは伏せる長くなるから…後日久米田と里見から、有り難い言葉を貰った
「いいか?大事な人には包み隠さず、些細な事でも言葉を惜しむな!大事な人ほど良く話をしろ!酷い事になる前に!」
とても、重く心に響いた言葉だ。だがもう少し早く言って欲しかった。正座させられる前に…




