変化
……かゆい?体がムズムズする、何だろう、この変な感じは一体…それを見かねた恵が
「何なの椿?今日は落ち着きが無い一体どうしたの?」
分からないと首を振ると、訝しげな顔をされたがどう説明をすればいいのか困っていると葉芝が心配そうに
「もう今日は帰った方がいいんじゃないか?このまま居ても授業集中出来ないだろ?それに俺達も気になって仕方ない」
それもそうかと恵にまで言われ仕方なくカバンを持ち外に出たが別に体調が悪いわけじゃ無いしこのまま家に帰っても特にやることも無いそれに体のムズ痒い感じは消えて無い、どうするかと考えて結局いつものゲームセンターで時間を潰すか。ふいに時間が気になた、ポケットからスマホを取出し時間を確認しようと見ると19時いつの間にか結構時間が経ってびっくりした、流石に帰るかなと外に出ると辺りは暗く電灯の灯りがついていた。やれやれと腕を上げて伸びをした、その時体のムズムズが治まっている事に気がつき、何だったんだろうと思っていると、ふいに視界に数人の男達に囲まれている、中年の男が居たどうやら絡まれているのか男はそのまま路地裏に連れ込まれていった、それに慌てついて行くと暗くて良く見えない空を見ると雲がかかっているせいか仕方ないと一歩前に出ると
「なあ、俺達お金無くて困ってんだよ、だからお金くんねー?」
壁を背に男は困っ顔をし、ふいにこっちを見た。目が合った次の瞬間男が驚いた顔をしている、カツアゲをしていた一人の男が後ろを振り返り仲間内にオイと、すると全員振り返り急にニヤニヤと笑いながらこっちに来た、流石にヤバそうだ、
「なあ、俺達とこれから遊ぼうぜ?金なら直ぐ用意するからよ、いいだろ」
何言ってるんだ?コイツらいつもだったら因縁吹っ掛けて来るのに今日に限って何考えてんだ?それに何触って来やがると手を払いのけると
「いい気になんなよ!女のくせに!」
意味が分からない事を言い出した、一触即発な空気を壊すように、さっきまで絡まれていた男がスマホを片手に
「えーはい、そうです今丁度カツアゲされているんです助けて下さい、男達の特長ですか?ハイハイ、あー制服です、え?学校ですか?ちょっと待ってください」
と椿の前に来て男達を見た。男達は慌てて顔を見合わせ
「やべぇよ」
走って行ってしまった、男はスマホをしまってニコリと笑い
「大丈夫通報は嘘だから、いやー助けてくれて有り難う君が来てくれて本当良かった」
何か軽い男だな別に自分が居なくても大丈夫ったんじゃないかとさえ思ってしまった、それに何か嬉しそうなのも気になる、まあいいかとこのまま帰ろうとすると、焦った声で
「待って、待ってよ?体大丈夫?」
言っている意味が分からない、ん?体に物凄い違和感を感じる…恐る恐る下をみると…!何かある…小さいながら胸が膨らんでいる……一気にこの前の記憶が出て、震える手でスマホを取出し恵を呼び出しした、中々電話出ない恵にイライラしながら
「あれーどうしたの?椿からなんて珍しい、それで今日ご飯どうする?」
「そんな事はいい!それより早く来い!ゲーセン出ての路地裏に居るから」
「えー何だよ、あれ?椿声おかしいよ?」
「いいから、早く来い大変なんだよ」
「もー分かったから怒鳴らないでよ!今近くに居るからもうちょっとで着くから落ち着きなよ直ぐ着くから」
イライラと待っていると、ゆっくりと歩いて来る恵に駆け寄り
「何歩いて来てんだよ!」
「ハイハイ、ゴメンそれで一体何?……!あれ?椿だよね、それは何…胸?」
「オレに決まってるだろ!あーもー!満月あれ!本物だった!どうすんだよ!恵」
「……本物?」
嘘だろと、二人顔を見合わせパニック、その様子に横から声が
「あのーいいかな?」
恵がハッと見ると
「え!この人誰?椿…もしかして…」
「ん、こいつは…誰だっけ、そんなんどうでもいいよ」
コホンと恵が咳し、ごまかす
「えーと、どちらさまでしょうか?」
男はニコリと笑いながら椿と恵二人を見て
「カツアゲされてた所を、そこの君に助けて貰った者ですが」
男が近づいて来た。それに顔を見られないように、そむけながら恵の腕を掴みながら、「行こう」と恵も頭を下げ行こうとすると
「え!ちょっと待ってくれ、お礼したいんだけど」
「いらん」
素っ気なく返すと男は勝手に喋り出した。
「さっき、とても不思議な事を見たんだよ?最初見た時は男だったのに、次の瞬間には女性になってたんだけど、これはどういう事なんだろう?」
恵がこっちを、何とも言えない顔で見ている、チラッと男を一瞥し
「目が悪いんじゃないか?オレは元々こうだ、おっさん」
「おっさんは酷くないかな、まだ30代前半なんだよこれでも、それにその制服確か男子校だよね?」
はぁと恵がため息をつき制服を引っ張った、それを見ていた男がニコリと笑い
「こんな所で立ち話も何だし、良かったら場所を変えようか、近くに私の家があるんだ、いいかな?」
頷き、案内されたのは大丈夫かって程のボロアパートだった、建物としては4階建てで一階はテナントが昔は入ってたんだろう、でも今は何も入って無いと言うか人の気配が一斎無い…
「すっごいボロいな」
「椿、失礼だよ!どうもすいません」
「ああ、良いんだよ本当の事だしね、それに住んでるのも私一人だけなんだよ」
「ボロいからか」
「アハハ、違うよここは元々私のじいさんの物だったんだけど、それを私が相続したんだよ、さあ私の
部屋は4階だ階段はこっち」
「……もしかしてエレベーターとか無いのか?」
そうなんだ、と明るく言われ恵を見るとゲンナリしていた、中に入って気づいたが中はキレイになっていた、ようやく4階にたどり着くとドアが2つだけ
「私の部屋はこっちだよ、アッチの部屋は使って無いんだよ、さあどうぞ?」
部屋に通されて、その広さにびっくりしていると
「二つの部屋をぶち抜いて一つの部屋にしたんだ」
窓際のソファに通され、座っているとコーヒーをだされ男も正面に座り、頭を下げ
「改めて、助けてくれて有り難う、君が居なかったら私は今ごろ大変な事になっていたよ」
「もう、それはいい」
「おっと、自己紹介がまだだったね、私の名前は丹下よしき、写真家をやってます、それで君達の名前も良かったら教えてくれないかい?」
恵を見ると、諦めたようにこっちを見て頷き
「ボクは田中恵、そしてこっちが甘利椿といいます」
丹下は頷き
「で、ここからが本題なんだけど椿君、君最初見た時男だったけど、本来はどっちなの?」
「ああ!そうですよね、椿って名前じゃ分からないですよね!椿はれっきとした男ですよ、でもそうか全部見てたんですね」
「やっぱり男の方が本当の姿なんだね、それにしてもこんな事が本当にあるなんてびっくりだよ」
マジマジと見られ、カッと丹下の胸ぐらを掴み
「忘れろ!記憶から抹消しろ」
「椿止めなよ!そんな事したって何も解決しないだろ、座って!すいません丹下さん」
「イヤイヤ良いんだよ、もし良かったら経緯を聞いてもいいかな?私に出来る事があるなら何でも言ってくれて構わない」
「何でだ?」
「まあ、助けて貰った事でもあるし、私にも下心があるんだよ」
じっと黙っていた恵が丹下を見て
「それは何ですか?って聞いた方が良いですか?」
丹下は目を細め嬉しそうに
「やっぱり恵君は勘が鋭いね、やっぱり分かったか、そう私の仕事を手伝って欲しいんだ」
「なんだそれ?嫌だ」
「……だそうです丹下さん」
「うーん、それは追々考えるとして」
「オイ、オレは手伝わないぞ!人の話を聞け!」
「それより、大事な事は今後どうするかって事だろ?椿、満月の日に変化するのは分かっているけど、それを皆に上手く隠す術を考えないとダメだろ場所とか」
「?家から出なかったいいんじゃないのか?」
「それで春子さんにバレて心配されてもいいのならボクはいいよ?」
ウっと詰まると、恵がちゃんと考えなよと呆れた顔をしている、だがこんな事になった責任は恵にもあるはずだ!睨むとソッポ向きやがった!すると丹下が
「だったら、ここはどうかな?ここなら君達の知り合いにバレる事は無いと思うよ?だってこのアパートは私の持ち物他人が入って来る事は余程ないよ?決して悪い話じゃ無いだろ」
「恵!この話乗ろう!いいだろ」
「…それで?丹下さんの狙いはモデルだけど、いいんだね椿?ボクは椿がいいのならいいよ」
恵は呆れた様にこっちを見て
「そうだ!隣の部屋を自由に使っていいよ?むしろあげるよ」
ん?何か言いくるめられているような…もしかしてヤバイのか?恵を見ても知らん顔だ、オイオイと引っ張るとチラッとこっちを見た
「椿、モデル料はちゃんと貰いなよ」
と訳が分からない事を言い出した。それに丹下が
「大丈夫!ちゃんと出すから心配しないでいいよ」
「……!」