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風邪

「ゴホッゴホッ」


数日前から、恵が咳をしている、少しずつ酷くなっているような気がする。そして今日は、ずっと咳をして苦しそうだ。恵の背中を擦り


「大丈夫か恵?…辛そうだけど、熱は?」


「ゴホッ。ありがとう椿、熱は無いんだけど…ゴホッゴホッ咳が止まらないんだ」


擦っていて、少し咳が治まったのか笑い、そっとおでこび手を当てて熱を計ると、確かに熱は無い様だとホッとしていると、恵が


「もう、心配性だな椿は、ボクは大丈夫だよ。それよりあんまり近付かないで、伝染ると大変だから」


と言っていた恵が翌日学校を休んだ。じっと恵の席を見ていると、葉芝が恵の席を見て


「やっぱり、田中は休みか?」


「ああ、昨日の夜に、とうとう熱が出て下がらないんだ…」


葉芝は「そうか、だいぶ咳、辛そうだったもんな」と自分の席に行った。昼休みになると小鳥遊がやって来た。恵の席を見て


「やっぱり、恵君休みなんだね」


おれを見て、一言


「椿君…大丈夫かい?」


無言で睨み返すと、小鳥遊はクスリと笑い「なら大丈夫かな?」とポンと肩を叩いて戻っていった。そう…オレは大丈夫全然寂しくは無い、家ではいつも一人だ…母さんは仕事で、帰って来るのは深夜か朝方だ、それに寂しいと思うほど子供じゃないし、たかだか風邪ごとき直ぐ良くなるに決まってる!そう早く…早く、良くなれ。

それから3日経っても、ちっとも恵の風邪は良くならない…


「椿君、お早う?今日も恵君はダメみたいだね」


小鳥遊はオレの顔を覗き込み心配そうに見ている。いつの間にか教室に来ていて、前の席に座っていた

それに答えられずにいた、恵の家に行っても顔を見れずに…恵の母親の美沙子から風邪が伝染ると、会わせて貰えずにいた。何度か食い下がると


「もう、ダメよ!椿ちゃんに伝染ると、私姉さんに叱られちゃうでしょ!だから大人しくしていてね?もし勝手にしたら…んふ♪お仕置きするわよ、分かった?」


美沙子の言葉にゾッとし何度も頷いた。恵が体を鍛えているのは、美沙子の影響もある…美沙子はハッキリとは言わないが、どうやら空手の有段者じゃないのかと思っている…もし逆らえば…これ以上考えるとこわくなりやめた、でも心配なのは変わらないから学校が終われば直ぐ恵の所に直行した、それには美沙子は何も言わず家に入れてくれて、お茶を入れてしばらくユックリして帰ると繰り返していた。

そんなおれの様子に小鳥遊が急に吹き出した。何だと見ると


「ごめんごめん、実は恵君からメールが来ててね、その内容が、毎日椿君が来て、オチオチ寝ていられないから、どうにかしてくださいって私の方に連絡が来ていたんだよ、恵君も椿君同様心配しているみたいだよ?」


「何で、小鳥遊の所にメールが来て、オレの方には恵はメールしてこないんだよ!」


ムッとして小鳥遊に食って掛かると、小鳥遊は慌てて


「椿君に言っても、聞かないからじゃないのかな?それにあのままじゃ倒れるじゃないかって恵君が、例の日ももうじきだし」


ぐっと詰まり、小鳥遊を睨んだ。


「もういい、オレ帰る。」


と鞄を手に教室室から出て行った。

小鳥遊は図星だったかな?と思っていると、いつの間にか来ていた葉芝が


「少し、過保護なんじゃ無いんですか?田中も会長も?」


小鳥遊はその言葉に笑い、聞いてたのかと


「そうかな?普通じゃないかな、あれぐらい、まあ…恵君は身内だから仕方無いけど、別に私は過保護とは違うかな?」


葉芝が不思議そうに私を凝視し


「違うんですか?」


「そう、私はまだ可愛い方だよ、もっと過保護な人達がいるからね」


葉芝が明らかにビックリした顔し


「田中の外に、甘利を甘やかすヤツが、まだ居るんですか?凄いどんな人間だろう?」


何となく、葉芝の甘利への感想が分かった。小鳥遊は、しまったかなと、葉芝に余計な情報を与えてしまって興味津々だ、不味かったかと椅子から立ち


「さて、もう行かないと、葉芝君それじゃ?」


葉芝はニヤリと


「そうですか、分かりました。さっきの続きは、また後日」


その言葉に、曖昧に誤魔化して教室から出て、ポケットからスマホを取りだし、一応連絡しておくかと、各所にメールを送った。一方葉芝は小鳥遊を見送った直ぐ、人気のない廊下にいた、壁に寄りかかり考える様子で


「やっぱり、何かあるんだな♪」


と一人ごちた。



オレは、行くあてもなく結局…恵の家の前から動けずにいる、家の中に入る事も出来ず、外から恵の部屋を見上げた、今日こそは熱が下がってると期待して行くと美沙子に、困った顔で「ダメ」と帰されて。いつになれば会えるのか焦っていた…恵とは兄弟の様に育った。母親はシングルマザーで仕事で忙しく、一度もオレをかえりみた事は無かった、でもそれは仕方無い事は知っていた。母さんが働いてくれて居るお陰で生活が出来るのだから…文句なんて言えない、でも一人はとても寂しかったが我慢して一人家に居た。それをみかねた恵の両親がしばらくあずかると母さんに申し出た、丁度その時母さんが、自分の店を出して忙しくて、オレまで手が回っていなかった、母さんは直ぐにオレをこれ幸いと田中家に預けた。それは結構長く続き、もしかして、本当にオレは田中家の人間だと思ったぐらいだった、ずっと恵と一緒に居たせいで、恵の事「にいちゃ」と呼んでいた時期があった…小さくため息をつき、帰ろうと踵をかえすと、ドアがカチャリと開いた、ギクリと後ろを向くと、そこに居たのは美沙子ではなく、恵本人だった、パジャマ姿でカーディガンを羽織り、咳をしていた。呆然と見ていると恵が怒った声で


「もう、そこで何をやっているの?そんな寒い所で、風邪をひくよ、おいで!」


出て来ようとした。恵に駆け寄り


「熱は?下がったのか!」


「ゴホッ、うん。少しは下がったよ、でも咳がまだかな、それよりも家の前でストーカー行動は止めてよ、近所に変な噂が立ったら、椿のせいだからね!どうせ母さんが怖くて入って来れなかったんだろう?」


その言葉にビクッとし、恐る恐る様子を伺い


「!別に、そんな訳無いだろ!所で…美沙子さん居るのか?」


「さっき買い物に行ったよ、命拾いしたね?もしバレたら…」


恵はオレを一瞥して、階段を上がっていった。慌てて付いて行くと、恵はベットに横になった、慌てて蒲団をかけ直すと、「ありがとうね」と笑った。そっとおでこに手を当てると、少しまだ熱があった、


「椿?ちゃんと学校に行きなよ?サボりはダメ」


ギクリと見ると、恵は困った顔をしてる、オレはゴホンと咳をして


「大丈夫、小鳥遊にはちゃんと言ってある!」


自信満々に言うと、恵が


「あんまり、迷惑かけるのはどうなの?椿」


プイと顔を仕向け


「風邪なんかで、倒れているヤツに言われたく無い!」


恵がクスリと笑い「そうだね、ごめん」と、そして真剣な顔でポツリと、


「明日…大丈夫?ボクまだ行けそうに無いけど…」


心配そうに、見上げている。


「大丈夫だろ!これと言って撮影があるわけじゃないんだし、それに学校が終わったら直ぐ丹下の所に行くし、あいつらだって居るんだし」


「なら、良いけど、くれぐれも気を付けてよ?まだ学校の恐喝事件も片付いて無いらしいから変な事に巻き込まれないように」


ムッとして、


「早々無いだろう、そんな事より恵は早く風邪直せよ」


と恵を見ると、喋り疲れたのか恵がウトウトしている、ふと枕元を見ると、美沙子が置いていった水分があった、それを恵に飲ますと、そのまま眠ってしまった、しばらく恵の様子を見ていたが、そっと立ち下に降りて行くと、いつ帰ってきていたのか美沙子が台所で料理を作っていた。オレに気づくと、ニッコリと笑い。


「恵ちゃん、寝ちゃった?」


頷くと「そう」と手を止めずに言った。その後ろ姿に「もう、帰る。」と言うと美沙子が振り返り


「もう、遅いわ、泊まって行きなさい」


時計をみると9時過ぎだ。少し悩むと美沙子は


「姉さんには、言ってあるから」


そう言われてしまえば、


「じゃ泊まる、美沙子さん所で父さんは?」


「今日は遅いって言ってたわよ?それより手伝ってちょうだい?椿ちゃん」


「ちゃん付は嫌だって、前も言っただろ?美沙子さん」


「ハイハイ、そうだったわね」


と聞いてくれない、もう何度も言っているのに止める気配がない。恵は、そんなの言うだけ無駄と言うが、いい加減止めて欲しい。ちなみに恵の父親を、父さんと言うのは、小さい頃の名残だ。父さんは小さいオレに何度も「お父さんだよ」と言い聞かせていたせいで、今でも父さんと言っている、一度美沙子同様、名前で呼んだら大泣きされ…流石に収集が付かなくなり「父さん」と元に戻した。いい大人が呼び方一つで泣くとは思って無かった…。美沙子の呼び方は父さんがそう呼んでいるからオレも真似をしたらしいと、そこら辺は小さいくて覚えて無い。恵はちゃんと母さんと呼んでる。

憮然と美沙子の手伝いをして、恵のお粥を作って、それを美沙子が恵に食べさせてきて、二人で遅い晩御飯を食べた、片付けは言いと言われソファでテレビを見ていると、いつの間にかウトウトしていた。遠くで美沙子が何か言ってる


「椿ちゃん、お風呂入りなさい!あれ椿ちゃん?寝ちゃった?もう、仕方無いわね」


聞こえたが、起きようとしたが、今日は疲れた、それにようやく恵の顔も見れて安心したせい、最近夜心配で寝不足が祟ったようだ、プツリと意識が無くなった。美沙子が毛布をかけて「お休みなさい椿ちゃんいい夢を」

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