始まり
小さい頃誰かが言っていた、満月にお願い事をしてはいけないのだと、でも何でだったのか思い出せない、あの時この言葉を思い出していれば、あんな事にならなくて済んだのに…。
目が醒め起き何だか日が高い慌てて目覚まし時計を見ると10時15分で針が止まってる
「うそだろ!何で!」
スマホを見ると幾つかの着信全部同じ人物からだ、一瞬もう休もうかと考えて止めた、休んだら余計面倒か…仕方がない用意し学校に向かった。下駄箱に靴をしまってると後ろから
「おはよう、甘利 椿君今日は大分遅いんだね」
ビクッと振り向くと、会いたく無い人物が其処に居た、生徒会長の小鳥遊 優だ、会長はニッコリと笑っていた。ハァとため息をつき嫌々なのを隠さず
「おはようございます会長。一体どうしたんですか?こんな一年の所に、もう授業始まってますよ、もしかしてサボりとかですか?」
嫌みにも気にした風もなく
「ああ、大丈夫だよ!先生にはキチンと了承してもらっているから心配しなくても」
「大丈夫です。心配なんかしてません、それで?何ですかオレに用なんですよね?」
「そうだった、実は一年の生活指導の東先生から話が合って今後、甘利君の処遇は生徒会に任される事になったんだよ」
「何で!」
「どうやら東先生も大変らしくて、特に甘利君は人間関係とかのせいかな?この前にも他校の生徒とイザコザ起こしたよね?それで先生が言うには生徒の問題は生徒が解決した方がいいと、おっしゃってね」
つまりは逃げたと言う事か、それでよりによって生徒会長か…凄い嫌だ
「良いんですか、会長忙しいのに、こんな事頼まれて」
「君がそれを言うのかい?面白いね!私は大丈夫むしろ楽しみだからね、さてそろそろ授業が終わるよ?それじゃまたね甘利君」
会長は手を振り行ってしまった。やっぱり休めばよかった、今日何回目かのため息をついた、面白いって何だオレだって別に好きでケンカしている訳じゃない!母親譲りなキレイな顔が大嫌いだ、どこに行っても何故女じゃないんだよ勿体無い、といつも同じ事を言われ、母親にさえ女の子が欲しかったと言われショックだったのを覚えている。嫌な事を思いだしてしまった、自分のクラスに着き席に座るなり目の前に腕を組んで睨んで来た田中恵だ、恵は自分の母親の妹の子でいとこに当たる。いとこと言っても小さい頃は、しょちゅう田中家に預けられていてほぼ兄弟の様に育った、クラスから浮いている今でも気にした風もなく普通に接してくる、と言うか実は恵の方が強い、皆には内緒らしい。
「椿、僕の話きてるの!」
「ああ、聞いてる…仕方がないだろ目覚まし時計壊れたんだから遅刻はわざとじゃない」
ぶすっと言い返すと、ぷっと笑い声がし、笑いながら葉芝零が居た。葉芝は先週転校して来たのに、もうクラスに馴染んでいる不思議な奴だ、しかもクラスでも話かけてくるのは恵ぐらいなのに平気に話かけてくる、クラスの奴等から聞いているだろうに変わった奴だ、恵もそう思っているらしく
「あれ、葉芝君居たの?てっきり休みかと」
「ああ、オレ印象薄いんだ。」
恵がニッコリと笑いながら
「ヘェー椿が入って来た時に紛れこむように入って来た様に見えたよ!僕の見間違えかなぁ」
「よく見ているな田中、でも甘利と違ってオレは遅刻してないぞ」
じゃ授業にも出ないで何をしてたんだよと思った。そんな所がこいつは胡散臭い。
「それで?」
いぶかしげに葉芝を見ると、ニヤっと笑いながら
「会長と何があったんだ?」
ギクリと葉芝を見ると、恵も
「何?椿もしかして何かやったの!」
恵が身を乗りでして聞いてき慌てて
「違う!オイ葉芝何で知ってんだよ!会長に会った事」
「いやなに、丁度休憩していた所から見えたんだよ甘利と会長が話てる所それで気になったもんで」
「ヘェー休憩ね」
「椿!会長と何があったの、もしかして…」
「…今後何かあった場合、東じゃなくて生徒会が出てくるって言われただけだよ」
「え?どうゆう事」
「ああ、成る程ねー甘利の今後の処遇は生徒会が持つのか、それで会長自らお出ましだったのか、成る程」
恵も納得したのか一人頷いた、それに何か言おうと口を開きかけた時丁度よくチャイムが鳴り二人は席に戻ってしまった、そりゃケンカはよくはないが自分から吹っ掛けた事なんて一度も無い、ああ!むかつく今日一日ついてない、気晴らしにゲーセンにでもよっていく事にした恵は寄り道せずに帰りなよと言っていたが知らん!ゲームセンターで持金が尽きるまで遊び今日がついていない事を忘れていた、帰り道、目の前を数人の男に囲まれ、そのまま路地裏に連れ込まれた、そこはガラクタやらが置かれている電灯もなく暗い、分かるのはそこが行き止まりぐらいか、ニヤニヤと笑ってる男達の中から一人出て
「久しぶりだな」
「誰だ、お前?」
顔を見ても誰か思い出せない、すると後ろの奴等が「てめぇ」と騒いでるが思い出せない、すると男が
「黙ってろ!甘利お前には、この前世話になったんだが覚てねぇのか」
「……あ、思い出した。先週の弱かった奴か!それで一人で勝てないから人数増やしたのかー大変だな」
「うるせー死ねよ!オイお前等もやれ!」
いままで見ていた男達が一斉に殴り掛かってきた、人数はいたが一人、一人はそこまで強く無く3人倒した当りで逃げていってくれて良かった。はぁとその場に座り込み顔を上げると満月が輝いてる
「あーキレイな月だ」
ふと手に何かが当たった、見ると手のひらサイズの箱があった、手に取って見ていると箱の汚れが気になった、何でそんな事が気になったのか分からないが、その時はキレイにしないといけない気がして、ポケットからハンカチを取りだし一心不乱に磨いた、しばらくすると鏡のような輝きを見せた、満足し箱を見て気づいた、箱だと思ったいたが開けられる所が無い
「箱じゃないのかこれ」
試しに振って見るとカラカラと音がする中に何か入っている、何だろうと触っているとイキナリカチンと音がし蓋が外れた。何がどうなって開いたか分からないが中が気になり覗こんだ時、急に目の前に人が立って、こちらをじっと見ている、びっくりした人が急に現れた事に、そんな気配一斉無かった
「オレに用か?」
男はその問に答えず、感情の無い声で一言
「望みは何?」
「はぁ?」
聞き返しても男からは同じ言葉しか言わない、どうやら望みを言わないと終わりそうに無い、でもいざ望みと言われてもポンと出て来ない、仕方なく男に
「なぁお前の望みは何?」
男は不思議そうな顔をし箱を見て
「自由」
何とも漠然とした望みなんだなと思ったが
「じぁそれで。」
男は明らかにムッとすると
「それは私の望みで君のではない、真剣に考えろ」
そんな事言われてもなぁと考えていると昔母親に言われた言葉を思い出した『何で男なんだろうーあんたが女だったら良かったのに、せっかく可愛く産んだのに』その時のショックは今でもはっきり覚えている
「……オレが女だったら良かったのにか」
ぼそりと口から出た、それに答えたのは目の前の男ではなく恵だった。
「まあ椿が女だったら美人だろうね、それがどうしたの?何の話」
暗がりから恵がこちらに歩いて来た。
「探したよ!心配したよアパートに行っても帰って来ないし、またケンカ?もう帰るよ!さあ立って」
制服のホコリをはらってジロリと睨んで
「いちいち、うるせーよ」
「椿、女に生まれたかったの?」
知らなかったなーと笑いながら言われ、カッと言い返した
「違う!母さんが昔オレに言ったんだよ!女の子が欲しかったって」
「あーそゆう事か、春子さんそんな事言ったのか。でもそれ本気じゃ無いよ」
「何で分かるんだよ!そんな事」
「春子さん母さんに前言ったよ椿が女だったら、
あの子お店手伝うって自分のやりたい事殺そうとする、そんなのダメ、私と同じ道だけは歩いて欲しく無いって母さんに言ってたらしいぞ椿?」
「だったら何でオレにあんな事言ったんだよ」
「春子さんは椿の考えそうな事ぐらい知っているよ母親なんだから」
「だったら余計に女で生まれたかった、そうしたら……」
はぁと恵がため息をつき
「椿がそう思うならそれでもいいと思う、でも覚えていてボクはそんなの些細な事だと思ってる、椿が女でも男でも変わらない、それは皆も思ってる」
ぐっと下を向き恵の顔を見れずにいると、恵が不思議そうに
「所でこの人誰?椿の知り合い?」
そういえば忘れていた、男は相変わらず黙ってこっちを見たまま何か言うでもなく、何となく気恥ずかしい、今までのこのやり取りを見られていたのかと思うと、
「一つ目は承諾した、後2つ」
「ん?椿何の話後2つって?」
仕方なく今までの経緯を教えると、笑いながら
「アハハハ!そうなんだ、良かったじゃん椿、それでどうすんの、後2つ」
そりゃ笑うだろう、こんな茶番にふざけてるしか言い様がないだろう、それにいちいちつき合って望みを考えている自分が恥ずかしい
「もう、いいだろう!帰る」
言うと男に腕を捕まれ
「まだ2つ」
いい加減にして欲しい、キッと睨んで
「だから、後はあんたの望みでいいって」
男は少し考えて、
「それでは、後一つ」
食い下がってきた、それに反応したのは何故か恵だった
「ねぇさっきの女になるって望みって一度変わったら戻らないの?」
「それが望みだから」
「うーん、それだと色々困ると思うんだよね、昨日まで男で今日から女?それは椿、性転換疑われるね?」
なんでか、この茶番に付き合い始めた恵が真剣に考え出した、
「恵、いい加減にしろよ!」
いくら怒っても聞いてない、ふと空を見て
「あ!そうだ満月の日にしよう、それがいいよ椿」
「もう何だよ」
「何って椿の女の化は満月の日限定にしよう!うんうん、それがいい」
一人頷いている、そして男に向かい
「望みの一個目は女性化、二個目は君の自由、三個目は椿の女性化は満月の日限定、これで全部」
男はこっちを黙って見ている、恵が
「ほら、椿ちゃんと彼に言って!ボクじゃダメみたいだから」
仕方なく恵が言った事をもう一度言うと、男はコクンと頷くと何か言った、それは言葉だったのか分からない聞き返そうとした瞬間もの凄い風が吹き目を瞑ってしまって次の時には男は居なくなっていた。
「あれ、あの人は?」
恵が聞いてきたが、首を振って答えた。
「何か不思議な人だったね、何だったんろう」
「もう、いいよ帰ろうぜ」
「でも面白かったぁ」
楽しそうに恵を追い越して
「置いていくぞ恵!」
その不思議な体験を忘れてしまっていた、恵も自分も夢の出来事だと。
読んでいただき有り難うございます。