ファミレスにて
本当は中心である「アクティブアフタースクールレコード」を書き上げてからやっていくべきものですが、本編が進むとどうしてもそれを利用して他に手をつけたくなってしまうわけでして。すみません頑張ります。
本日の授業が全て終わり、慌ただしく部活へ向かう人、帰りに何か食べて行こうと相談をする人、学習塾へと学校を終えても更に勉強に励む人。それぞれが、それぞれの目的へ向かい進んでいく。
早く行かないと。授業が終わり帰る準備をしていると隣から声をかけられた。
「高鳥さん、今日もアルバイト?」
隣から声を掛けるのは白井君。二年生になってから初めて隣の席になった白井君は去年の私の状態を見ているからか、よく話し掛けてくれる。隣の席なのだからこれが普通なのかもしれないけど、私をクラスから孤立させないように気を使って話し掛けてくれているんだと思ってしまう。
ただ白井君は優しくていい人なだけなのに、どうしても卑屈に考えてしまう自分が嫌になる。
「確かクラブは入ってないんだよね?良かったらウチのクラブ見に来ない? 小さいクラブだから時間の拘束もないし、好きな時だけ来ても問題ないし、面白い先輩もいるんだよ」
人数がギリギリだから一人でも入ってもらえると助かるんだな。冗談っぽく本音も話してくれる白井君。私のこと思って誘ってくれているのに、その思いに応えることはできないなんて。
「うん、ごめんね......できるだけ働きたいから。」
いつも素っ気ない返事しかできない私、こんな私を見捨てないでくれてありがとう白井君。
「裕太~」
教室内に響く大きな声で白井君を呼ぶのは、白井君と仲のいい田中君。二人はいつも楽しげに本の話とかをしている。
「先に図書室寄ってっていい? 借りたい本帰ってきてるか見てきたいんだよ」
構わないけど、前に借りたの返したの?なんて普通の会話をしている二人。いいなぁって私はいつも思っている。二人は確か同じクラブに入っていたと思うんだけど何だったかな?
「よし、決まり!さぁ!!いっくぞー」
強引に白井君の背を押していく田中君。田中君に力では勝てない白井君は首だけをこちらに向けて
「高鳥さんまた明日ね」
「裕太は頂いていく、じゃあな~高鳥」
私の返事も待たずに教室を出ていく二人、本当に仲がいいな。羨ましい。
今日の天気は少し曇り空、雨は降らないと思う。お天気お姉さんがそう言っていた気がする。
私の働くファミリーレストランは街の大通り沿いにある大手チェーン店。学校からでも自転車で十分ほど、家からもそう遠くはないので通うにも問題はなく、時間の融通も利いてもらえるとても良いアルバイト先です。
ここの制服は白のブラウスに黒い短めのネクタイ、膝が少し見えるくらいのミディアム丈で黒色のフレアスカートに白黒チェック柄の小振りのエプロン。という出で立ち。少し膝が見えてしまうのが恥ずかしいけどシックなデザインでお気に入りだ。私より背が高く足の長い人は、スカート丈がバッチリ膝上丈になっている。それだけスタイルがいい人は恥ずかしさを微塵も感じさせないのだけど......。気にしてるのは私だけかな?
今日は二階フロアを任された。まだ混んでくる時間帯ではないので客席には誰も座っていない。今のうちにテーブルの備品のチェックをと、各テーブルを回っていると一人の客が二階席へとやって来た。
「いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ」
やってきたお客さんの姿を見て驚いた、とりあえず服装がおかしい。
100円ショップで売っているような白黒ツートンの帽子、よくわからない柄のTシャツに赤いジャージ。という、とてもちぐはぐな服装をしていた。
まぁそんな人だってたまにはいるよ。
お客さんは、すぐには席につかずキョロキョロとしている。席を選んでいるのかと思えば、物珍しく店内を見回しているようだ。
彼は肌の浅黒い外国人の青年でした。ファミレスが初めてなのか? それとも日本に来たこと自体が初めてなのか? なんにせよ不思議な服装もこれで納得した。ぐるぐると見回した後中央窓側の席に収まった彼。座ってまもなくテーブルチャイムが押された。
「ご注文はお決まりですか?」
彼の元へ注文の伺いに行くと、驚きの表情を浮かべている。どうやら彼の肘の下にあるテーブルチャイムが店員を呼び出す為のボタンだとは知らなかったようだ。相手に伝わるかは微妙だけど、一応そのボタンの説明をして立ち去ろうと踵を返すと、スカートを引っ張られ思わず声が出てしまった。振り返るとメニューを指差しながら何かを訴えている。何か質問かな? っと思ったが違うようだ。
「お決まりになりましたか?」
私の伺いに彼はハンバーグのメニューを指差しながら
「all menu」
と指示してきた。
うわぁ、英語だよー。英語は文字として書くならわかるんだけど話すのは自信ないんだけどなぁ。
そのへんも理解してなのか簡単な単語で注文してくれたみたいなんだけど。
――んっ? 全部って? ハンバーグのメニューすべてってこと?!
こんな時は店の接客マニュアルに従ってお客様に尋ねなくてはいけないことがあるんだけど、客として来ている人をとても不快にさせる言葉だから本当は言いたくないんだけどな......。しかも変な身なりの外国人に慣れない英語対応だよ。外国人が英語で怒ってるのとかすっごい怖いし! 私はなるべく失礼にならない様に脳みそフル稼働させて言葉を紡いだ。
「 Excuse me, do you have the money? 」
(申し訳ありませんが、お金は持っていらっしゃいますでしょうか?)
直訳過ぎるかもしれないけど、願わくばニュアンス的に失礼に聞こえないような解釈をしてほしい。
私の言葉に彼は別段怒る様子もなく、何やらお腹辺りをまさぐっていた。私はここで初めて気づいた、彼はTシャツの下に他の服を着ていることに。薄らシルエットが見るだけでどんな服かはわからないが、その中の服から取り出したのは一枚の黒いカードだった。
勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼の懐から出てきたのは.....
「ぶ、ぶ、ぶらっくかーど!!!!」
今のは心の声のつもりだったけど、多分思っいきり口に出てたと思う。
懐から財布もカードケースもなくいきなり裸でカードのみ出てくるなんて! この人は未来からやって来たロボット? 便利なポケットを持っててそこからブラックカードだけ引っ張り出したとでもいうの?!
普通のクレジットカードですら見たことのない貧乏人がそんなもの見せられて正気を保てるわけがなく言われた通りの注文を通してしまった。
――どう考えても危ない人だよ!
分かっていながらどうにもできなかった。本当ならチーフか店長に相談するのがマニュアル通りなんだけど、もう遅い。後はあの人を信じる以外はない。
なんだ、こんな時間に団体でもやって来たか?へらへら訪ねてくる調理担当の大学生。とても言えない。客は一人だけどお金持ちっぽいから大量注文通しちゃいました~、なんて......。こちらの不安で一杯だというのに今日の調理担当は調子が良く注文のハンバーグを次々完成させていく。
出来たハンバーグをテーブルへと運ぶと、彼は無邪気な子供の様に喜びフォークとナイフを使いこなし一口、一口ハンバーグを口に運んでいく。箸は、いらないよね?
三つ目のハンバーグを運んでいった時、何か騒がしいな? と感じ、客席に目をやると彼はテーブルにおらず出入り口の階段付近で黒服サングラスの大男と揉めていた。
――やっぱり危ない人だったかー! ああ、私バイトクビかな......。
ハンバーグの皿を持ったまま硬直していると、もう一人の黒服の大男が私に近づいてきた。
「会計は、どうやればいいですか?」
サングラスで多少顔は隠れているものの、顔立ちで外国人だとわかる大男は私に伝わる範囲の日本語で話しかけてきた。
「えっと、テーブルの上にある紙が伝票になっていますので、それをレジに持って行ってくだされば精算ができます。」
驚きで目を見開いたままだった私、お客さんに対してかなり酷い顔をしていたと思う。
「迷惑をかけました、注文したものは全てお支払いいたしますので。」
そう言うと大男は伝票の紙を取ると私には理解できない言語で彼に一喝して、もう一人と共に彼の腕を掴み下の階へと連れて行った。
お金は払ってもらえたようだけど。彼の居たテーブルには食べかけのハンバーグが残されている、私が持っているものも合わせて一度注文さてれて作ってしまったものは客が一切手をつけてなくても廃棄するのが店の決め事である。
私にはこれが一番辛く、嫌いである。勿論この状況を作った人も嫌いだ。どんな理由があるにせよ、食べ物を粗末にする人は大っ嫌いだ!!
横書きの利点に甘んじてしまい、英語表記を使いました。後でまた使うのでどうしても載せたかったんです。そしてルビ振りに文字制限があることに初めて気づきちょっと強引に日本語略を書きました、今は使わなくてもなんとかなりますが後々これを書かないと問題が生じるのでご勘弁ください。




