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二十七
妻は噎び泣き乍ら私の遺品を片付けていた。そのときに偶然、血痰の付着した原稿を目にした。そこには歪で薄い文字で、短い文が余所余所しく綴られていた。
――貴方にはいろいろ迷惑をかけました。こんなろくでなしな男をどうか許して下さい――。
読み取るのに困難しているようであったが、私のその言葉を妻はきちんと理解してくれた。彼女は泣いた。
私が安楽死を専業とする医師になったきっかけ。それは昔、私が強引に行った情死で、死なせてしまった彼女への償い。妻はそれを聴いたときに呆れたのだと想っていた。私が妻としか経験が無いといったものだから。だが、今考えてみれば、そうではなかったみたいだ。
私は何処かから妻を見詰め、そう想っていた。




