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 確かにさっきの人は言った。

 ここは俺の世界だと。想像の世界だとそのあとに繋げた。その言葉こそがわからなかった。

 その後、俺はお手伝いの人だと思われる人に連れられて、綺麗な部屋にご招待されてしまった。といっても、「これからの粒さん自身の部屋です。ご自由にお使いください。何かあったら近くの使用人までよろしくお願いします」と言われたまま出て行かれて、規則とか、何をすればいいのかとか、全く持ってわからなかった。

 なのに、そんな状況で方っておかれてどうなるのだと、思いっきり訴えてやりたい気持ちはあるのに、どうしてか、何かが足りない気がしていた。

 部屋の中は真っ白で、基本的に必要な家具はある。来る事がわかっていたのか、ただ綺麗にするのが好きだからなのか、なんなのかはわからないが、きちんとベッドもあった。シーツも綺麗で、シワの一つも無い。

 洗い立てかどうかは解らないが、汚くは無いと言い切れる。けれど、俺は着替えたい。けれど、替えなんてないし。

 そんなことを言いながら、真っ白なクローゼットを何気なくあけると、ずらりとハンガーにかけられた真っ白な服。

 自由に使えといわれたら、これも使っていいものなのだろうかと思い、ゆっくりと一つの服に手をつけた。

 ざっと見たところ、全部同じ服に見える。

 服装的には、凄く教会でのお偉いさんに感じる。凄く上の背広が長くて綺麗に整っている。大体膝裏あたりまであるのに、前のほうは膝上辺り。着心地良くて、スッキリしていそうだが、実際こういう服穿きなれていない。暫くの間は、着ていた服を着ていようと思ったときだった。急に部屋のどこかから、電話の呼び出し音が鳴り響いてきた。

 反射的に肩をビクつかせ、服をつかんだまま固まった。

 鳴り響く方向を探そうと、恐る恐る振り向くが、どこにあるのかがパッと見だけではわからなかった。

 服をクローゼットに戻し、鳴り響く元へと足を勧めると、ベッドの隣にあるシンプルな棚の上に、電話の子機がおかれてあった。ゆっくりと手を伸ばし、通話ボタンを押した。

「……はい」

『一之瀬か?』

 電話の向こうは、先ほどの男性だった。ここの主人見たいなのだが、どうして電話をよこしてきたのだろうか。ヤッパリ何かと説明とかがあるのかと、少し期待していたが、その期待にこたえてくれたらしい。

「はい」

『部屋には着いたみたいだな。クローゼットに服がある。ここにいるときはその服を着るんだ。洗濯はクローゼットの隣にあるカゴに突っ込んで夜にでも廊下に出しておけば、勝手にお手伝いさんが洗濯してくれる。一之瀬の専属お手伝いはそこに連れて行ってくれたやつな』

 専属なんかいるのだ。

 もしかしたら、その人たち、本当は存在するのではなく、この男性の想像上のものだったりしたら……。

「はい」

『後は自由に過ごせ。何か質問は?』

「あの……この屋敷の事なんですが。どうして白ばかりなんですか?」

『落ち着くからだ。他は?』

「この世界があなたたの想像上のものだといっていましたけど……どういうことなんですか?」

『それは後々ゆっくりと順を追って話して行こう。ここにたどり着いたのは一之瀬。お前だけだからな。焦らなくてもいいだろう』

「……ありがとうございます」

 ここにたどり着いたのが俺だけ。ということは、ほとんどの人は、あの本に触れては居ないのだろうか。けれど、図書の係りの人でも、整理をする時に触れているはずだ。

 それに、違う出入り口があってもおかしくは無いような気はしてくる。

 考えながらも、先ほどのクローゼットに足を進めて行った。

 少しこの服を着るのは勇気がいる。凄くコスプレみたいだし、何かの漫画でこんなのがあってもおかしくは無い。ネックレスみたいなもので十字架をつけ、胸の辺りにぶら下げていそうな服だから。

――呪われそー……

 少しだけ苦い顔をしてしまう。

 上着を脱ぎ、サッサといわれたとおり、服を着替えた。


 

 

「なんでサイズが合ってるんだよ……」

 サイズを教えた事もないし、あわせたようなこともしたことがないくせに、知っているというのも結構驚きものだった。

 ただでさえわかんないやつなのに、余計にわからなくなってくる。それに、どうしてか焦る心がいつの間にか消えている。わけもわからない状況に陥っているのに、どうしてここにいるんだとか、どうして夢が覚めないんだとか。

「……夢……だよな?」

 夢としか言いようが無いこの世界に、俺はただ一人連れてこられた。


 

 


 

 


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