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相談

 

 高校二年生になりそうな、一之瀬粒いちのせ りゅう。血液型はかなりの大雑把で悩み事が少ないと思われていたO型。誕生日は1月11日。星座は忘れた。とりあえず、今の高校には、のんびりと平和に、何事も平凡に生きています。特技は、相談を相槌を打ちながらも答えてやることです。しかもこれ。結構相手には助けられているといわれています。

 もし今、知らない人に自己紹介をすれといわれたら、俺はそう綺麗に答えてやることは出来る。こんな言葉。いつ考えたのかと考えてみても、いつもこれが頭に回っていて、いつの間にかこんな言葉が出来ていた。ただそれだけだった。

 しかも、良くこれを思い出すのは、友達のやつらの相談事を聞いているときだったはずだ。ということは、さいごの一文「特技」というものは、本当のことだ。

 元々は、恋愛相談が多かったのにもかかわらず、友情関係についても良く話される。のが、友達だけだったら、いつでも来い!!というかんじなのだが、残念ながら、そうも上手くは行かなかった。というのもおかしな話では無いかなとは思う。

 たまに来る人で考えさせてもらえば、隣のクラスの、話したことも無いやつだったり、違う学年だったり。それとか、友達の従兄弟の弟で、中学三年生で、受験について困っている。という事も相談に乗せられていることもあった。

――いやいや。受験の事なら兄貴に聞けよ。

 内心そんな事をチクチク言いながらも、少し困っていますのような顔をして、黙々と話くらいは聞いてやった。

 相槌も打ったし、愛想笑いもした。

 けれど、受験のときのことなんか忘れているし、そんなにお前のことしらねぇよと怒鳴りつけたかったが、話し終わった後「どうすればいいでしょうか?」なんて聞かれてみろ。「知るか」なんて答えにくいじゃないか。

 俺にだって感情はある。

「進むべきは自分の心だ。自分がいいと思って決めたところに余り文句を言わないようなところを選べ。回りに流されるのではなく、自分が行きたい道を探せ」

 イラついてしまっていた所為か、そんなかっこいいのかかっこ悪いのか、適当なのか。そんな言葉を返してしまったではないか。それを言ったのが良かったのか悪かったのか……。

 相談役として、今まで何度も受けられていた。

 

 

 そしてそんな今も例外ではなく、きかされている。

 大体の話は、右から左状態だから、相談している方の人は、真剣に聞いてくれているような表情だなと思わせるような瞳を見せるが、本当のところじっと見つめているだけで、全く持って考えなんかない。

「で…………その友達がなんて思ってるか解らなくて……本人に詮索するわけにもいかないし……」

「なら無理に自分を作る必要なんかないさ。相手と少し距離をとるか、余りしつこく話を自分からかけようとしないほうがいい。いつも自然と隣にいる子ならば、そんな自分から話しかけなくても、向こうから少しは話しかけてくると思いますよ?」

 今日の相談者は、三年生の女子からだ。

 三年の事情なんて特に知らないから、どれだけ話を聞かされていて、どんな状況なのか。それで何より、進路を本気で考えなければならなくて、皆して慌てふためく状況だ。なにせ、まだ俺は高二になっていない。なりそうだということだけで、まだ二月上旬。

 いつもこういう感情的な相談をされているとき。聞いたときだけは、本当に思うことが一つだけはっきりあるのだ。恋愛でも関係する。


――感情なんてなくなってしまえばいいのに。

 

 笑うこともなければ、一人で居る人にとって、自分が笑われてるなんて思わなくて済む。余り一人で居ると、自分のことを笑われているのだろうかとか、いろいろ不安になってくる。

 泣くことがなければ、周りの人たちだって、困る事も、どうすればいいのかとも思う必要はなくなる。泣いたら泣いたで、下手してしまえば気遣ってくれることもなく、遠目で見つめられてしまうだけになるかもしれない。

 悲しむ事がなくなれば、人を哀れみ、シュンとした気持ちにならなくてすむ。それに泣くのと一緒で、周りも気遣おうとされてしまう。心も痛いし、回りも気にする。

 怒ることがなければ、周りを不愉快にさせることも無いし、お互い嫌な思いをしなくてもすむ。

 表情を消すという事は、いつも無表情で、ただ毎日平凡で、ただ毎日が同じ生活のようなものだ。耐え切れる人も居れば、耐え切れない人も居るだろう。

 そう考えると、自分には何が足りないのかと考えると、柔らかい表情がない。そう思えてしまう。

 何事も、相槌や、作ったような苦笑や笑顔をもらす必要もない。

 ただ本当に必要な言葉だけ交わし、後は自分の生活を、ただボンヤリと時間に身を投げてしまえば良いだけの話しだ。

 特に最近の話しなんて、企業的に言わせて貰えば、自分たちが上に上にと、頑張ってしまうから、変に争いが起きたり、犯罪が起きたりしてしまうのだ。消費税なんて上げなくていい。上げるくらいだったら、議員の年収だかなんだかを減らせば充分では無いか。そう文句をつくひとだっている。

 そんな感情さえ消えてしまえば。

 そんな内閣とか、王とか、天皇とか。そんなもの作らなければ。

 すべての表情や、感情を投げ捨ててやれば、衝突することも無いし、争う必要もなくなってくる。最近相談を受けていて良く思うのだ。

 友達同士気を使うから疲れたり、もういやだというきもちになってしまう。けれど、感情がなければ、ただの表面的な付き合いでしかなくなってしまうんだと最近思ってきた。恋愛に関してだってそうだ。「好き」という感情がなくなれば、「愛して」という欲求もなければ、「愛したい」という気持ちもなくなってしまうのだ。

 もし、感情のない世界に入れるものならば、今の生活をすべて捨ててしまえれる気がする。

 

 

 

 けれど、不思議な事がおきるのは、今日の相談が終わった後だった。

 大体相談は、誰も来ない図書室で行われるため、相談者が出て行った後は、図書室の本を適当に開いたり閉じたりと、無意味な時間を過ごしていた。そして、今日もその無駄な時間が出来て、たまたま目に付いた本を手にとって見た。

 手にとって見たその本は、凄く周りの本とはちがく、雰囲気が違う。

 肌触りは、少しざらざらしているが、日で色あせた感じも無いし、まだ新品そのもののような感じだった。けれど、それなのに何か懐かしくて、心がこめられているような本のような感じがする。本当に「ような」の嵐だ。

 ゆっくりとその少し太めの表紙を開いてみると、まだ新しい匂いがやってきた。

 が、新しいのはそれだけではなかった。

「はい?」

 表紙をめくったそのすぐは、真っ白にしか見えなかった。が、最初はそんなものなのかなと思い、次のページを開いても、真っ白なまま。空白な日記と同じようなものだった。

 漫画でよくこんなのがあるよなとか思いながらも、さすがにそこまで現実離れはしないと思って、ペラペラと好奇心という珍しいものに襲われて、次々とめくっていくと、何も書いていないはずなのに、凄く何か書かれているような気がするのだ。

 何か感情があり、それを必死にこっち側に伝えようと思っていたのだ。

 不思議で、表紙の名前を見たとき、その本の名前は「Country of expressionless」。

「……カントリー……オブ?……エクスプレッ……シオ……ンレス………?」

 英語の苦手な俺は、素直にあったままの英語を読み、再び開いていたすると、真っ白だった本のなかが、急に何かを書くかのように、だんだんと黒いペンでいろいろと描かれていく。

 驚きの所為で、ピタリと固まったからだ。思考も止まり、言葉すらも出てこなかった。

 すべて書き終えると、次のページと勝手にめくれて閉まった。 

 漸く動いた俺の手が、ソッとその描かれている文字にフッと触れた。

 すると、そんな現実はありえないと思っていたその現実が着たかのように、その本は光出してだんだんと引きずられていくような気がしてきた……。

 

 

 

 

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