*~第一章~ 朝日
冬の色が少しずつ消えていく3月中旬。今日も鮮やかに朝日が昇り街を照らし出す。しかし住宅街には小鳥のさえずりも聞こえず、音のない寒気のある空気が流れる。普段の生活が普段通り流れていく毎日。今日が昨日の続きなら、明日が今日の続きである。そんなことを思わせるくらい平凡に満ちた私の世界。
毎日同じ時間にアラームがなり、眠気眼でそれを止める。重たい体を気力で持ち上げ"いつも"が始まる。今日が"いつも"と変わることはない。包まって温まったベッドの中でもう一眠りしたい気持ちを抑えてまだ肌寒いはずの空気に肌をさらけ出すが、今日はいつも以上に気温が低いようだ。最近上がってきていた気温に喜んでいたつかの間、また異常気象が始まるようだ。だが、それも私の学生生活に支障をきたす程ではない。それは喜んでいいのか、残念なのか、はたまた考えるところでもないのか。
とりあえず朝は時間がない、多少の気温の変化などに時間をとられている場合ではない。ワンピース風のパジャマから出た足を床につける。床には絨毯が敷かれているからびっくりするほど冷たくもない。きっちり整頓された部屋は中学生の私一人には広すぎるほどで、天井も無駄に高く設計されている。朝日は一級品のカーテンに遮光され、全く部屋を照らさない。部屋にある時計の秒針が怖いくらい響くほど部屋は無音に包まれていて私はそこにつっ立っている。
今日も、"いつも"と変わらない。慣れた孤独に私が一人、たたされることに終わりはない。明日も来年もこの部屋を、家を抜け出しても。私が解放されるのはきっと、私の最期だろう。
とは言ってももう慣れた孤独。ふわふわの温かいスリッパをはいて、鍵もかかっていない部屋を出てこの屋敷の廊下に出る。この屋敷とはつまり私の家。聞いてのとおりの「お金持ち」というところだ。「お金持ち」になったのは私の父の事業が外国で成功したためで、何世代にも渡って歴史を積んできた「お金持ち」ではない。そうは言いながらも見た目はごく一流のお屋敷である。メイドも住み込みではないが雇っているし、この廊下だって隅々輝くほどに清掃されていて、尚且つ私にはよくわからない壷や絵画などが飾られている。
そんな並外れた家庭にも愛着が湧かないのは私が孤独を感じる寂しがり屋だからなのだろうか?いつものように左右に伸びる廊下を左へ行って螺旋階段を降りる。その先には食堂、客間、父のコレクター室などにつながるラウンジがあり、私はいつも通り食堂に向かう。ラウンジにも灯りはついていたが食堂にもついている。いつも通り先客がいるようで2,3cm開いたドアを開けると香ばしいベーコンの香りと温かい空気が漏れてきた。
「おはよう」
テーブルについて先に食事をとっていた女性が私の顔を見て言った。




