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歌劇団の囚人  作者: 青識or惣菊


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3/14

1-3 劇

「さあ!今日も素晴らしい一日の始まりだ!」


声が、思ったよりも遠くまで届いた。

天井の高い劇場に反響し、わずかな遅れを伴って自分の耳に返ってくる。


――大丈夫だ。


胸の奥で、そう思った。


舞台の上の彼は、船大工の青年だった。

朝靄の運河に立ち、まだ眠る街を見渡し、

誰に聞かせるでもなく未来を信じる男。


客席が、静まっている。

咳払いも、衣擦れの音もない。

仮面の貴族も、商人も、舟で来た市民も、

皆が舞台の上に視線を向けていた。


台詞を重ねるたび、

体が少しずつ軽くなっていく。


恐れていたはずの視線は、

今はただの光だった。


次の場面へ移る合図。

仲間の役者と目が合う。

一瞬だけ、微かに笑われた気がした。


鐘楼の場面。

舞台装置の奥に、黒く沈む塔が現れる。


疫病で人が去り、

陰謀で信頼が崩れ、

それでも青年は、最後に一人で塔に残る。


彼は鐘に手をかける。


沈黙。


その一拍の間、

劇場全体が息を止めた。


そして――


彼は、鐘を鳴らした。


舞台上の音と、客席のざわめきが重なり、

それは本物の朝のように響いた。


その瞬間、彼は思った。


――ああ、俺は今、ここに立っている。


平凡だった日々も、

冷えた白パンも、

名もない役も、

全部このためにあったのだと。


幕が下りる。


一拍遅れて、

拍手が起きる。


それは最初、ためらうようで、すぐに波のように広がった。


彼は仲間と手を取り合い深く、深く頭を下げた。


誰かのためではない。

ただ、自分がここまで来たことに対して。


舞台の上で、

彼はもう一度だけ、静かに息を吸った。


明日も素晴らしい日が来ると信じながら…

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