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人によっては蛇足
救いが欲しい人には必須
幕が下りた。
息はもう絶え絶えでこれ以上どうやったらいいか分からない。
演技だとしても実の彼女を殺すのは気が引けるな…
さぁ…
観客の反応はどうなるだろうか…
最初にこの演劇を俺が演じる事になるとは思いもしなかった。
全てにおいて平凡な主人公を演じる平凡な俺が才能あふれる彼女を殺すのだ。
多分…
もしかしたら…
この演劇は俺が一歩間違えたら起きたかもしれない一つの物語なのかもしれない。
幕の向こうで、拍手が波のように膨らんでいく。
それを背中で受けながら、俺はしばらく動けずにいた。
衣装の重さが、急に現実のものとして肩にのしかかる。
——これは歌劇だ。
何度も、頭の中で言い聞かせる。
彼女は生きている。
今も、どこかで息を整え、
次の合図を待っている。
それでも、
胸の奥に残った感触だけは、
役のものか、自分のものか、もう区別がつかない。
「……もしも、だ」
心の中で、そう呟く。
もしも、
努力を積み重ねることしかできなかった俺が、
才能にすべてを奪われたと感じたまま、
誰にも救われなかったなら。
この物語は、
舞台の上だけで終わっただろうか。
「——お疲れ」
不意に、彼女の声がする。
振り向くと、
ヒロインの衣装のまま、
でももう役の顔ではない彼女が立っていた。
「大丈夫?」
その一言で、
張り詰めていたものが、すっとほどける。
「ああ……」
それだけ答えるのが、精一杯だった。
彼女は微笑む。
それは、劇中で何度も見た笑顔とは違う、
舞台裏の、確かな現実の表情だ。
「すごかったよ」
その言葉に、
俺は初めて、この歌劇の意味を理解する。
「もしも」を舞台に閉じ込めるための歌劇だ。
拍手は、まだ続いている。
「行こう」
彼女が手を差し出す。
俺は、その手を取る。
今度は、役ではない。
幕の外へ。
光の中へ。
歌劇は終わった。
そして、俺たちは——
幕の外にいる観客たちのカーテンコールを受けた。
「皆さん本当にありがとうございました!
これにて歌劇団の囚人の初公演を終わりたいと思います!」
これにて歌劇団の囚人は終わりです!
2週間という短い期間でしたがご愛読ありがとうございました!
次に書くとするならこの二人の恋愛ストーリーにしようかなと思っています。
短い間ですが皆さんありがとうございました。
ではまたいつかどこかで会えるその日までさようなら!
後良ければ私の代表作である未来の日本 異世界に転移するもよければ読んでみてくださいね!




