小話 エドワードとサラの結婚式2
前回の続き、ハルトヴィヒ視点です。
結婚式は、厳かな雰囲気の中で執り行われた。
礼拝堂に満ちる神聖な空気の中、花の香りがほんのりと漂い、陽光がステンドグラスを柔らかく照らしている。
祝福に包まれる時間の中で、ハルトヴィヒは隣のエリシアに目を向けた。
「……素敵でした」
感慨深げに呟いたエリシアの瞳は少しだけ潤んでいた。
「次は僕たちの番だ」
「……そうですね」
エリシアの返答には、わずかな間があった。
「照れてる」
「照れてません」
「リーシャはさ、感情が顔に出にくいと思っているだろうけど」
実際、エリシアはそう思っているに違いない。ほんの少し前までは、感情を出さないよう、内に閉じ込めるように生きてきた。
けれど――。
「僕にはすぐ分かるよ。今は頬が染まって照れている」
「どうしてハルト様には分かるのでしょう」
「リーシャを愛しているから」
それが答えだった。
世界で一番大切な人だからこそ、ほんのわずかな変化にもすぐ気づける。
現にエリシアの父親も、エドも、サラも、それから屋敷の使用人たちさえも気づいているのだ。
「また、照れてる」
「ハルト様が恥ずかしげもなくそういう軽口を言うからです」
「本当なんだけどなあ」
軽口のように聞こえてしまうのは承知している。
けれど、ハルトヴィヒにとっては紛れもない本心だった。
その想いを伝えるように、エリシアの頬に手を添える。
「愛してるよ、リーシャ」
「あ…………」
エリシアの瞳がかすかに揺れた。
頬に熱がこもっていくのがわかる。表情のひとつひとつが、何より愛おしくてたまらない。
「愛してる」
「や、あの、その――――」
緊張と恥ずかしさが一気に押し寄せたのだろう。
エリシアはその場でふっと意識を手放し、ハルトヴィヒの肩にもたれるようにして気を失ってしまった。
限界だったらしい。
「あらら」
「……人の結婚式で何やってんだ」
聞こえてきた呆れ声に顔を上げれば、エドワードがサラと並んで立っていた。
「いやあ、友人の幸せに当てられて、つい?」
いつもの調子で返すと、エリシアの眠る様子に気づいた人影が近づいてくる。
「リーシャ!?」
慌てたように駆け寄ってきたのは、エリシアの父――リヴェール伯爵だった。
「お義父さん」
「誰がお義父さんですか! やはり貴方にはリーシャは任せられないかもしれませんね」
「そうですわ、お義父さま」
サラが即座に援護射撃を放つ。
まるで決まりごとのように、わいわいと賑やかな雰囲気が広がっていく。
エリシアが眠ってしまったこの状況下で、味方は少ない。形勢は決して良くない。
それなのに、ハルトヴィヒはこの空気を居心地よく感じていた。
これだけは、完全無欠と言われるハルトヴィヒでも持っていないものだった。
けれどこれからは、エリシアと共に築いていくことになる。
それは二人だけで築くものではない。
彼らとともに――あたたかな未来を、ゆっくりと紡いでいく。
ハルトヴィヒは寄り添うぬくもりを感じながら、幸せを噛み締めたのだった。
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