第5章: 使者の訪問
村が徐々に復興していく中、俺、タケルとリリィは共に力を合わせ、日々の作業に励んでいた。俺たちの絆は深まり、村人たちも少しずつ元気を取り戻していた。しかし、心の奥にはまだ魔物の襲撃の恐れが残っていた。
ある日の午後、俺は村の広場で木材を運んでいると、ふと遠くから何かの気配を感じた。振り返り、目を凝らすと、見慣れない影が近づいてくるのが見えた。
「誰だろう…?」俺は不安を感じながらも、その影に近づいて行った。すると、影の正体が明らかになった。それは、エルフの村の隣に位置する国の使者だった。
使者は、優雅な衣装を纏い、堂々とした姿勢で俺の前に立った。「私はアリス、隣国の使者です。あなたたちの村が魔物に襲われたと聞き、国王の命令で参りました。」
俺は驚き、そして警戒心を抱いた。「国王の命令ですか?何か特別な理由があるんですか?」
アリスは真剣な表情で頷いた。「はい。国王は、魔物の襲撃が隣国にも影響を及ぼすことを憂慮しています。そして、あなたが国に行くようにとの命令を受けました。」
その言葉に俺は戸惑った。「俺が国に行くのか?それは…村の復興にはどう影響するんでしょうか?」
「国王は、あなたの経験や知識を重視しています。魔物の脅威を取り除くために、あなたの協力が不可欠だと考えています。」アリスは説明した。「もちろん、村の安全を守るための支援も行います。」
リリィは心配そうに俺を見つめた。「タケル、大丈夫なの?私たちが国に行ったら、村はどうなるの?」
「リリィ、心配しないで。俺が国で何か手がかりを掴めば、必ず戻れる。お前のことも忘れないし、一緒に行けないのは残念だけど、俺は必ず帰る。」俺は彼女を励ました。
アリスはその様子を見て微笑んだ。「あなたたちの絆は本当に素晴らしいですね。お互いを思いやる姿勢が伝わってきます。」
その後、アリスはさらに質問した。「ところで、リリィさんは貴殿の奥方なのですか?」
その質問に、俺は驚き、リリィを見つめた。彼女は頬を赤らめ、少し照れた様子で俺を見返している。
「えっと…まだそういう関係ではないですが、彼女は大切な仲間です。」俺は正直に答えた。
「そうですか。あなたたちの関係が今後どうなるのか、とても楽しみです。」アリスは微笑んだ。「国に行く際、リリィさんも一緒に来られたら良いのですが、どう思いますか?」
その瞬間、リリィは決意を込めて言った。「私も一緒に行きます!」
俺は驚いたが、彼女の目には強い意志が宿っていた。「リリィ、でも村のことが…」
「大丈夫です!私もタケルの側にいたい。どんな困難があっても、一緒に乗り越えたい。」リリィはしっかりとした声で答えた。
アリスは微笑みながら頷いた。「素晴らしい決意です。では、準備を整えて、国に向かいましょう。」
俺はリリィの手を握り、彼女の強い意志に感謝した。「ありがとう、リリィ。君が一緒にいてくれるなら、心強いよ。」
こうして、俺たちは国王の命令に従い、エルフの村を離れることになった。村人たちは俺たちを送り出すために集まり、感謝の言葉をかけた。
「必ず戻ってきてください!」村人の一人が叫んだ。
俺は頷き、彼らの期待に応えるべく国へ向かう決意を固めた。俺の心には、村を守るための使命が宿っていた。
数日後、俺はアリスと共にリリィを連れて隣国へ向かう旅に出発した。俺の冒険は新たなステージへと進むことになったが、リリィのことが頭から離れなかった。