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第111話 違う、そこじゃない

 夜が明けて、爛々(らんらん)とした朝日が窓から差し込んでくる。

 それなのに、部屋の空気は澱んで重い。


 誰も何も喋らなかった。

 衣擦れの音さえしない。

 みんながみんな、ただただ深く項垂れている。


 あまりの出来事に、頭の処理がまるで追いつかないのだ。

 あのアマンダさんでさえも——


 むしろ一番沈み込んでいるのが、彼女に見えた。

 これまでに積み上げてきたものが、他の誰よりも重い。

 その全てが虚飾かもしれないと、作られたものかもしれないと、そう突きつけられたのだ。


 ダーリンさんは「安心していい」と言っていた。

 でもその言葉を信じるに足るものが何もないのだ。

 ダーリンさんは、肝心なことを何も教えてくれなかった。


 理屈としては、わかる。

 ダンジョンが存在するなら、別の世界が存在したっておかしくない。

 ダンジョンに管理者がいるなら、世界にだって管理者が——創造主がいたっておかしくない。


(インテリジェント・デザイン、とかいうんだっけ……?)


 世界はあまりにも美しすぎる。

 だからきっと、知性ある何者かが設計したに違いない——

 そんな思想だ。


(でもまさか、二人の父親が……)


 いや、それだって決しておかしな話ではないのだ。

 二人の異常な強さ。

 アマンダさんの言葉を借りるなら、先天的に備わっていた力——


(ああ、今からでもスパゲッティ教に入りたい……)


 そうしたら、全部なかったことにならないだろうか。

 そんな現実逃避を、頭の中で延々と繰り返す。


「そんな、まさか、父さんが……」


 お兄さんが、ボソリと呟く。

 そのあまりの痛々しさに、胸が張り裂けそうになった。


 当然だ。

 お兄さんにしてみたら、実の父親なのだ。

 衝撃は私の比ではないだろう。


「アマンダの言う通りだ……。だから……」

「お兄さん……」


 じわりと、目頭が熱くなる。

 その弱々しい背中を、ぎゅっと抱きしめてあげられたら、どんなに——


「だから俺に、ジローラモなんて名前を……」

「…………」


 一瞬の間があってから、


「絶対そこじゃないやろ!!!」


 と大爆発した。

 反射神経も運動神経も凡人の私だが、ツッコミの瞬発力はアマンダさんをも凌ぐ。


「お兄ちゃん! こんな時に何ふざけてんの!」


 アンリもお兄さんに食ってかかった。


「いや、ふざけてるわけじゃ……」

「どう考えてもふざけてるでしょ! そんなどうでもいいこと……」

「どうでもいいってなんだよっ。てかアンリも俺と同じ被害者だろっ」

「ジローラモと一緒にすんな!」

「うわ、ひっでー! 傷ついた! 今までで一番傷ついた! アンリエッタのくせに!」


 兄妹喧嘩が始まる。

 確かにアンリの言い草は酷かったけれど……。

 でもどう考えても悪いのはお兄さんだ。

 ギンなんて、お兄さんの頭に(かじ)り付いていた。


(あ、いいな。私もお兄さん齧りたい)


 ギャーギャー騒いでいるうちに、鬱屈した思いとか全部吹っ飛んでしまう。

 どさくさに紛れてお兄さんを齧るとして、せっかくなら服の上からとかではなく、地肌に行きたい。

 でもお兄さんは長袖を着ていて、露出している部分は限られていた。


 手に噛み付くのはさすがに痛そうだし、袖を捲ったりすると、勢い余ってという大義名分が使えない。

 残るは首筋だけど……。

 それはなんというか、さすがにちょっとエッチすぎる。


 どうしようかとワタワタしていると、アマンダさんの哄笑が響き渡った。

 もう大爆笑だ。

 誤用だったとしても、そうとしか表現できない。

 こっちが不安になるくらい、お腹を抱えて笑い転げていた。


 ようやく笑いが治ってからも、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返していた。

 大きく息を吸い、倍の時間をかけてゆっくりと吐きだす。

 それから、とろんとした目でお兄さんを見て、


「愛してるよ、ジロー」


 と言った。


「君のそういうところが、本当に(いと)おしい」

 この展開を思いついてしまったせいで、当初の予定が大幅に狂いました。

 批判されるし、ブックマークもPVも減る一方だし、評価ポイントは全く伸びないし……。

 正直、普通のダンジョン配信ものにしていた方が、万人ウケしてもっと大勢の人に読んでもらえていたんじゃないかなー、という思いはありつつ。


 でもやっぱりこっちの方が面白いと思うし、なにより私自身がワクワクできるので、これでよかったのかなと。

 半分は強がりですけどね。

 迷いと後悔と不安の中でもがく日々です。


 とはいえ、ここまで来たらもう軌道修正もできませんから。

 責任を持ってこの物語を完結まで書き切りますので、その点だけはご安心ください。


 こういう展開嫌いじゃないよっていう方は、どうか感想を。

 それが一番のモチベーションになりますので。

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― 新着の感想 ―
先が読めない展開が多いので続けてもらえないと毎晩眠れなくなります。どうか……。
自分が面白いと思うものを書くで大丈夫だと思います。 面白いです。
面白いです。
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