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第103話 解説のアマンダさん その2

 当然、いつでも助太刀できるように気を張っていた。

 でもそれは、杞憂に終わる。

 戦闘が始まると、連携をとらせる間もなく一方的にボコっていたのだ。


「凄まじいな……」


 ジローの強さはよく知っているはずなのに、毎回新鮮な驚きがある。

 でもいつまでも見惚れてはいられなかった。

 ボス部屋に向かって階段を駆け上がってくる音が聞こえたのだ。


「おっと」


 アマンダは駆け出す。

 ボス部屋の入り口で、アンリの前に立ちはだかった。


「ぎゃあっ!」


 驚かせてしまったようだ。

 抱えていた遺体袋が宙を舞い、アマンダはそれをキャッチする。


「び、びっくりした……」

「どうしたんだい、そんなに慌てて」

「慌てるに決まってるじゃない! あんな悲鳴が聞こえたら!」


 獣の咆哮は、アンリには悲鳴に聞こえたらしい。


「魔物が現れて、ジローが対応してるところさ」

「だ、だいじょうぶなの?」

「ご覧の通り」


 アマンダは立ち位置を変え、ボス部屋が見えるようにする。

 遺体の山が、アンリの視界に入らないように気をつけつつ。


「……動物虐待で訴えられそう」

「最近は、魔物の権利(モンスターライツ)を訴える団体も増えてきたからね」

「……マジ?」

「マジ」

「うげぇ」


 アンリが心底嫌そうな顔をした。


「お兄ちゃん、目の敵にされちゃうんじゃ……」


 真っ先にジローの心配をするのがアンリらしい。


「だいじょうぶだと思うよ」

「どうして?」

「公言されてるわけじゃないけどね。彼らの中では、ジローはモンスター側って認識っぽい」

「それはそれで……」

「とにかく、ジローが魔物の相手をしてる間に、遺体を運び出しちゃおうって話で」

「そうだった!」


 目的を思い出したらしく、


「これ!」


 と遺体袋を差し出そうとして、自分の手元にないことに気付く。


「あれ?」


 キョロキョロと辺りを見回している。

 アマンダが遺体袋を振って見せると、手品を見せられたみたいに驚いていた。


「じゃあ、早く……」

「待った。その前に春奈に状況を伝えてもらえるかい?」

「春奈に?」

「心配しているだろうから」

「確かに」


 アンリは踵を返した。


「管理局にも報告するように言ってくれ」


 階下から、


「わかった!」


 と返事がある。


(最後のは余計だったかな)


 春奈なら、言われなくてもそれくらいやっていただろう。

 自分の頭で考え、行動できる子だ。

 あの歳であの有能さは、アマンダの目にすら光って見える。

 なにより可愛い。


(アンリも春奈も、本当に素直でいい子だ)


 成人するのが待ち遠しかった。


「さて……」


 アンリが戻ってくる前に、遺体を詰めなければ。


 戦闘は続いている。

 アマンダの危惧は、決して的外れだったわけではない。

 見ていてヒヤリとする場面が何度かあった。


 人型や獣型であれば、名も知らない魔物でも、ある程度予測は立つ。

 でも軟体動物のような無形となると、次の行動が読めなかった。

 いくらジローでも、初見の攻撃にはどうしたって反応が遅れてしまう。


 でもそれは逆にいうと、一度見た攻撃には問題なく対処できるということだ。

 それこそが、ジローの異質さだ。


 みんな強さにばかり注目しているが、アマンダの目から見ると違う。

 そもそもジローは強さに固執していない。

 のんびりキャンプを楽しめるように、環境に適応しているだけだ。

 強さはその副産物にすぎなかった。


 そんなジローが、もし強さだけを追い求めたら——


 別世界の住人にだって、対抗できるのではないか。

 そう考えながらも、それを望んでいない自分がいる。

 ジローには、ジローのままでいてほしい。


 遺体を遺体袋に入れ、入口まで運ぶ。

 そこでアンリに引き渡す。


 本音を言えば、アマンダもジローと同じ思いだった。

 こんな役目を、子供に任せたくはない。

 異形の神がいない今、それこそ管理局に任せたってよかった。


 でもそれは、アンリ自身がよしとしないだろう。

 遺体袋を受け取る所作からだけでも、そのことがわかる。


 戦局が大きく動いた。

 ジローが相手の懐に飛び込んで、強烈な一撃を与えたのだ。

 でも致命傷には至らない。

 武器の性能が、まるで足りていない。


 でもその一撃には、相手の勢いを削ぐだけの威力はあったようだ。

 状況が膠着し、睨み合いになる。

 ジローから仕掛けることもない。

 むしろそれを望んでいるような気さえする。


 逆にアマンダは、警戒心を強めた。

 根拠はなにもない。

 ただの勘だ。


 経験則から、アマンダは自分の勘を信じている。

 そしてまた一つ、信じる根拠が増える。

 魔物がアマンダに攻撃してきたのだ。


(舐められたものだな)


 傍目にだけど、何度も見た攻撃だ。

 事前に察知もしていた。

 ただ一つ、予想外だったのは——


 ジローが射線に割り込んできて、身を挺して自分を守ったことだ。

 きっとそれは褒められるべき行為なのだろう。

 でもアマンダは、それを美談にする気はなかった。


「……ジロー」


 非難を込めて名前を呼ぶと、


「ごめん」


 とすぐに謝罪があった。


「反射的に体が動いちゃった」


 ジローもちゃんとわかっているようだ。

 ならそれ以上は、なにもいうまい。


「やっぱり、私も……」

「いや、いいよ。だいじょうぶだから」


 ジローの中で、なにかしらのスイッチが入ったのがわかる。


(……私が狙われたから、だよね)


 せめて武器を、と言おうとした時に、ジローはその肝心の武器を魔物目掛けて投げてしまった。

 躱した隙をつき、傷口に踵を落とす。

 球体も裏拳でぶっ飛ばしていた。


「……めちゃくちゃだな」


 苦笑が漏れた。

 スイッチが入ったジローに、魔物もようやく危険を認識したようだ。

 獣型に戻った球体に飛び乗り、逃げ出してしまう。


 その背をジローは追おうとして——

 すぐに立ち止まる。

 振り返った時には、いつものジローに戻っていた。

 漫画の視点切り替えの自由さって、本当に素晴らしいなって思います。

 主人公が戦い、周りの人間が解説を加える、なんてことが簡単にできますから。

 でも小説だと簡単に視点を切り替えられないので、戦闘が終わってから時間を巻き戻し、別視点から書くなんて形になってしまいました。


 テンポが悪くなるし、これなら最初からアマンダ視点で戦闘描写した方がよかったのかなぁ……。

 でもジローの内面というかアイデンティティにも触れたかったしなぁ……。


 と悩んでおります。

 とにかく、もっといいやり方があった気がするのですが、正解がなんだったのかよくわかりません。

 もし「こうすればよかったんじゃない?」という考えがあれば、ご教授いただけると助かります。

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