表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/171

第100話 オカルト系の魔物

 人型が本体なのは間違いない。

 相手の立ち回りを見ていればわかる。

 攻撃は球体に任せ、人型は常に俺から距離を取っていた。


(まず球体を破壊するか……)


 俺は刀を一瞥(いちべつ)する。


(……先に壊れるのはこっちだな)


 アマンダから武器を借りようか。

 でもそうなると、アマンダが無防備になってしまう。

 ダンジョンの外から武器を持ってきてもらうことも考えたけれど……。

 それで遺体の回収が遅れては、本末転倒だ。


(やっぱ本体を叩くべきだな)


 武器の消耗を防ぐために、攻撃はなるべく避けるようにしていた。

 それをあえて、受け流す頻度を増やす。

 それもギリギリで。

 攻撃がかすり、血も流れた。


 俺は焦り、慌てて背後に飛び退いた。

 ——ように見せかける。


 相手は知性のある魔物だ。

 その隙を見逃すわけもなく、左右の球体がぎゅっと縮む。

 着地点を狙い、神速の槍を放ってくる。


 だが——

 俺は空中ですでに体勢を整えていた。

 獣のような前傾姿勢になり、着地と同時に飛ぶように駆け出す。


 半分、博打だった。

 致命傷だけは追わないように、頭を守りながら、二本の槍にまっすぐ突っ込んでいった。


 賭けは——

 俺の勝ちだった。


 二本の槍は、肩と太ももにかすっただけだ。

 致命傷どころか、俺を止めることすらできない。


 俺は人型の懐に入りこむ。

 球体は伸び切り、迎撃するゆとりはない。

 人型が蹴りを繰り出してきたが——


「遅い!」


 俺は人型を袈裟斬りにする。

 だけど……。

 その一撃もまた、致命傷には至らなかった。


 左肩に食い込んだ刀は、人間でいう鎖骨のあたりで詰まってしまう。

 それ以上、切り裂くことはできず、人型を地面に叩きつけることになった。


 すぐに追撃しようとしたが、それより早く球体が攻撃してきた。

 予想していたよりも反撃が早い。

 どうやら槍を引っ込めてからではなく、引っ込めながら攻撃してきたようだ。


 まるで腕を引っ張ると足が縮むタイプのヌイグルミみたいになっていた。

 かなり焦っているようだ。


 威力は大したことなさそうだが、無理をして痛み分けになっても、こちらに利がない。

 俺は飛び退き、距離をとった。


 ガバッと立ち上がった人型が、顔を凶悪に歪める。

 痛みからか、あるいは怒りからか。


 傷口からは、赤黒い炎が燃え上がっていた。

 血は一滴も垂れない。

 珍しいタイプだ。

 異形の神ですら、血を流したのだから。


(別世界じゃ、オカルト系の存在なのかな……)


 どんな逸話があるんだろうと、ちょっと気になった。


 倒すことはできなかったけれど、リスクを負った甲斐はあった。

 睨み合いの膠着状態になったのだ。

 ジリジリと移動し、お互いに間合いを測り合う。


 それでいい。

 時間さえ稼げれば。

 そう思った矢先に……。


 球体が、ぎゅっと身を縮める。

 亀裂が塞がり、赤黒い灯りが見えなくなる。


(なんで……)


 意図が読めず、俺は困惑した。

 隙を見せたわけでもないのに、今更そんな単純な攻撃を……。


 睨み合いに焦れたのだろうか?

 それならまた、懐に入り込むだけだ。


 一度やったことだ。

 今度はリスクを負うことなく実行できるはずだ。

 そして同じ太刀筋で、あの傷口に追撃を加えれば、今度こそ……。


 ——いや、違う。


 直前で相手の意図を察し、俺は駆け出す。

 神速の槍は、あらぬ方に放たれた。


 その先には、遺体を運搬するアマンダが——


 その線上に体を割り込ませ、槍を防いだ。

 ギリギリだった。

 刀は折れ、脇腹を抉られてしまう。 


 最初から、これを狙っていたのだ。

 間合いをとるフリをして、アマンダを射程圏内に収めて——


(……さっき罠にかけた、意趣返しのつもりか)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ